テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!
祭囃子のように響く歓声や音楽。
にぎやかな校舎のざわめきから少し離れた屋上に、らんは書類の束を胸に抱えながら小さく息を吐いた。
🌸「ふぅ……やっぱり本番は忙しいなぁ、、」
ドアを閉めてから数秒後。
📢「 … 会長」
低めの声に振り返ると、息を整えたいるまがそこにいた。
🌸「いるま? どうしたの?」
📢「さっき廊下で見かけて……疲れてるように見えたから、」
言いながら、彼はペットボトルを差し出した。
📢「売店で余ってたやつ。……冷えてます」
🌸「わぁ、ありがと … !」
らんは受け取って笑い、キャップを開ける。
ごくりと一口飲んで、安堵の息をついた。
🌸「……ほんと、気がきくよね。いるまが後輩でよかった」
その一言に、いるまの心臓が大きく跳ねる。
📢(後輩……か。やっぱり、そうなんだよな)
俯きかけた視線を、必死に持ち上げる。
📢「会長こそ……無理しすぎっすよ。全部背負わなくていいのに」
らんは目を瞬かせ、それから小さく微笑んだ。
🌸「……そう言ってくれるの、いるまくらいだよ」
夕陽が差し込む屋上。
賑やかな声は遠くで響いているのに、この場所だけ時間が少し緩やかに流れているようだった。
夕陽が校舎の屋上をオレンジに染める。
祭りの喧騒は下の校庭で続いているけれど、ここだけは静かで、空気がゆっくりと流れていた。
らんがペットボトルを持ったまま少し俯いていると、いるまはそのすぐ隣に立ち、深く息を吐いた。
いつもは冷静で、必要以上に感情を表に出さない彼の表情が、今だけは違って見える。
📢「会長……あの、ちょっといいですか
……今じゃないと言えない気がして」
いるまは、そう切り出した。
自分でも驚くほど、声は落ち着いていた。
📢「文化祭で、会長があちこち走り回ってるの見てて……
たぶん今を逃したら、また後回しにするって思ったんです」
らんの視線を真正面から受け止める。
逃げない、と決めた目。
📢「正直、俺要領いいほうじゃないし、
会長みたいに前に立って引っ張れるタイプでもないです」
一度、息を吸う。
📢「それでも……会長が困ってるときとか、無理して笑ってるときとか、気づいたら目で追ってて。
あ、これ好きなんだなって、だいぶ前に分かりました」
言葉は飾らない。
でも、途切れない。
📢「 … 会長のことが好きです。
特別なことはできないかもしれないけど、そばにいるのは、俺がいいです」
言い切ったあと、ほんの少しだけ肩が揺れた。
らんは黙ったまま、彼を見つめている。
沈黙が落ちる。
でも、それは拒むための間じゃなかった。
らんが、静かに口を開いた。
🌸 「……えっと……」
言葉を探すみたいに、一度だけ視線を落とす。
すぐには続かない。
屋上を抜ける風の音が、やけに大きく聞こえた。
🌸「……正直、今すぐどうこうって、ちゃんと考えられてなくて」
そう前置きしてから、顔を上げる。
🌸「でも……嫌じゃない。というか……嬉しい、かな」
らんは小さく息を吐いた。
🌸「今、文化祭で頭いっぱいでさ。余裕なくて、ごめんね」
一拍。
🌸「それでも……一緒にいたいって言われたのは、素直にうれしかった」
そう言って、少しだけ笑った。
綾🎼🌸@みのりす
811
いるまは何も言わず、ただ頷く。
らんはその様子を見て、少しだけ言葉を選ぶように間を置いた。
🌸「一緒にいられる時間も、そこまで多くないと思うし……
正直、余裕ない日も多いと思う」
視線を逸らさず、続ける。
🌸「それでも、いい?」
問いかけは短かった。
いるまは、迷わなかった。
📢「それでもいいです」
即答だった。
📢「忙しくても、会えなくても。
ちゃんとしたことできなくても」
一度だけ息を吸う。
📢「俺は……会長がいいから」
声は低く、でも揺れない。
らんは一瞬だけ目を伏せて、それから小さく笑った。
🌸「……そっか」
らんは、それだけ言って小さく息を吐いた。
それから、少しだけ間を置く。
🌸「じゃあ……これから、よろしくね、ニコッ」
言い切りだった。
逃げも、照れ隠しもない。
いるまは一瞬だけ驚いた顔をしてから、すぐに頷く。
📢「はい」
短くて、はっきりした返事。
らんはそれを聞いて、ほんの少しだけ表情を緩めた。
手を伸ばして、いるまの袖を軽く掴む。
🌸「戻ろ。
そろそろ、いないと怒られそう、笑」
📢「っすね、 笑」
並んで歩き出す。
距離は近いのに、触れすぎない。
屋上のドアを開けると、また文化祭の音が一気に流れ込んできた。
それでも、二人の間の空気だけは、さっきより柔らかかった。