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公安警察により横浜ランドマークタワーの爆破テロの冤罪を着せられたパルタ人移民ティランが、とうとう警察庁長官への復讐鬼と化した。
何故警察庁長官のスケジュールが入手できたのか、桜祐警部にも疑問はあったが、今はティランがこれ以上罪を重ねるのを防がねばならない。
今やじりじりと小野田公現警察庁長官に歩み寄るティランは、手に銃を持っている。
桜祐はティランの銃の銃身をぐいと掴み、説得を試みた。
「ティランさん、これ以上罪を重ねちゃいけない!」
「でも! こいつのせいでプロタが! 僕の恋人が自殺したんだ!」
警察庁、警視庁庁舎から警察官がわらわらと出てくるが、遠巻きに見るばかり。
「だとしたら、あなたの恋人が余計に悲しむ! 僕は公安警察として、あなたを殺さなければならない! 警察は今度こそあなたの背後関係を洗うだろう! そうしたらご遺族にも迷惑がかかる!」
警視庁庁舎から出てきた警戒員が銃を構え、投降を促す。
「銃を置け!」
ティランはうなだれ、銃を投げ捨てた。
「引き離せ! 長官はご無事か!?」
「私は大丈夫だがね」
「なぜこんなことを、ティランさん」
「野村議員に言われたんだ、小野田長官のスケジュールを教え、武器を準備するから襲えって」
「なに!?」
すべては、民自党幹事長野村一郎による陰謀であった!
野村は、グローバル人材活用法案を潰した警察を恨んでいた。よって移民に警察庁長官を襲わせたのだ。
公安冤罪で恋人を失ったティランのことは、世間が同情するだろう。
桜祐は、取り押さえられ、手錠を嵌められるティランを横目に、夕焼け空を見上げた。
虚しくなった。
* *
警察庁警備局警備企画課企画第一係長桜祐警部は、警視庁公安部公安総務課の千代田春警部を連れ立ち、再び横浜の地を訪れていた。
デートのやり直しだ。
肉の串焼きの屋台の前で立ち止まると、日本人の親子連れとパルタ人の親子連れが同時に並ぼうとするのが見えた。
そして彼らは順番を譲り合い、根負けしたパルタ人の親子連れが先に並ぶ。
子供どうしでもきちんとお礼を言っていた。
「やっぱり子供の素直さを見ると心が洗われますね」
キャリア警察官僚とはいえ年次は千代田春警部を下回る桜祐警部が言う。
「日本人もパルタ人も、共存していけたらいいのにね」
千代田春も同調した。
彼らの見上げる先には、横浜ランドマークタワー。
公安が壊した横浜ランドマークタワーの改築部分では、さまざまな国籍の作業員が汗水を流し、仕事に打ち込んでいた。