この作品はいかがでしたか?
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「あ、あの…」
「なんだ」
「名前、教えてくれないか…? 恩人の名前はちゃんと知っておきたいんだ」
そう聞いてみる。無難な質問…だよな?
合っててほしいけど、どうか違っていてくれ。そんなあべこべなことを願う自分がいた。そんな俺を不思議そうに見てから、少年が口を開いた。
「トラファルガー・ロー」
…………DESUYONE~~~!!!!!
知ってましたよ! ええ! そんなお可愛いお帽子かぶっていらっしゃるのなんてあなたくらいですものね!!! 顔とか幼いトラファルガー・ローのまんまだもん!! ローの幼少期はあんまり知らねえけど、漫画でちらっと見たもん! お前の過去ちょっとだけ知ってるもん!!!
「…いい名前だな。俺はジェイデンだ」
内心の動揺を悟られないようにしながら、俺は自分の名前を言った。俺の言葉を聞いて、ローは少しだけ目を細めた。あれ? なんか俺変なこと言った?
そう思っていると、ローが首を軽く傾げながら口を開く。
「お前、東の海で失踪した第二王子か?」
ローの言葉に、俺の心臓が跳ね上がった。なんでバレた? 俺の顔はあまり公には出ていないし、姓だって言ってない。なのにどうして……。まさか、カマをかけてるのか!? いやだとしても聞き方が具体的すぎる。やばいぞ、これどう答えればいいんだ!? 焦るな、落ち着け、冷静になれ。そうだ、こういう時は落ち着いて……。
って無理だよ!!!! だって相手はあのトラファルガー・ローなんだぜ!!? 下手な芝居は見抜かれる。ここは正直に行くしかないか!?
「……そんなに百面相してると〝はいそうです〟って自白してるのと同じだと思うが?」
「…………え、えへへ…」
俺は諦めた。もうこうなったら開き直ろう。俺は姿勢を正し、まっすぐとローを見つめた。
俺がレドリック王国の第二王子であること。城の生活に嫌気が差して単身で海に出たこと。それから東の海から北の海に来て、エドモンドという男に世話になっていること。全てを話した。
「……俺を政府にでも突き出すか?」
「誰が。自分から面倒ごとに首を突っ込む気はねえ」
「そうか……」
「ああ」
「なんか、重ね重ね悪いな。迷惑かけて……」
「別に」
ぶっきらぼうにそう言いながら、ローはまたカルテに何かを書き込み始めるのだった。
「お前、住んでるとこは?」
「あー、森ん中の、ちょっと複雑なとこに住んでる」
「複雑?」
「そこに行くまでがちょっと迷路染みてるっつーか、まあ、行けばわかると思うんだけど。というかなんで住んでるとこ聞いたんだ?」
「エドモンドって奴に世話になってるんだろ。お前が街でブッ倒れて心配でもしてるんじゃねえのか?」
「……してるかもしれねぇ」
稽古はスパルタだけどあの人自体は優しいしな。心配してるだろう。
俺はベッドから降りようとする。
「早く帰らねぇと」
「1人で帰る気か? また倒れるぞ」
「でも…俺この島にエドモンド以外の知り合いいねぇし」
と言って立ち上がると、一瞬立ち眩みに襲われた。がしっとローに腕を掴まれる。
「あ、ありがと…」
「……俺が支える」
「えっ!? わ、悪いよ」
「病人を1人で歩かせるわけにもいかねえだろ。シャチ! ペンギン!」
「「アイアイ!」」
ローが呼ぶと、2人が現れた。
キャスケット帽子とペンギン帽子……は、はわわ……ハートの海賊団の初期メンツ……べ、ベポはどこだろう。もこふわに会いてぇ……。
「コイツが持ってた紙袋持ってついて来てくれ」
「「アイアイ!!」」
2人は元気よく返事をすると、俺の荷物を持ってくれた。
そしてそのまま俺はローに支えられながら森の中にあるエドモンドの家へと帰ることになる。
「やけに遅いなと思ったら……えっと、友達連れてきた……ってわけじゃない、よな?」
俺の姿を見て、エドモンドは驚いているようだった。そりゃそうだ。今まで友達のとの字もなかった奴が同世代の奴を3人も引き連れてるんだからな。 俺は改めてロー、シャチ、ペンギンの3人のことをエドモンドに紹介した。それから事情を説明し、今一度ローに礼を言った。エドモンドも感謝していた。
「まあ、その様子だと大丈夫みたいだな」
「うん。ごめん、心配かけちまって……」
「いや、いいさ。無事ならそれで」
「なあロー、この街にはどれくらいいる予定だ?」
「あと数日だ」
「じゃあ、明日お礼の意味も含めて俺とちょっと出かけてくれないか? ちょうど行きたいところがあるんだよ。それに案内するぜ」
「……わかった」
ローは短くそう言うと、シャチとペンギンと一緒に来た道を戻っていった。俺はそれを見送りながら、家に入り、エドモンドが入れてくれたお茶を飲んだ。俺が過度な稽古でブッ倒れたということもあり、しばらくは軽い筋トレだけにとどめておくことになった。ローにも忠告されたことだしな。
「さっきのボウズ、ローだったか? お前と同じくらいなのに医学知識があってすげぇな」
「俺もびっくりしたよ」
夕食の席で、エドモンドがそう言った。俺も本当に驚いた。二重の意味で。
にしても、トラファルガー・ローってあんなに親切にしてくれるキャラだっただろうか? もっとこう、なんというか……。クールで、仲間以外には残忍な感じだと思ってたんだが……。
まあ、原作よりかなり若いし、子供だってことを加味すればこんなもんなのかなぁ。なんて思いながら俺は自分の部屋のベッドに入った。
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