TellerNovel

テラーノベル

アプリでサクサク楽しめる

テラーノベル(Teller Novel)

タイトル、作家名、タグで検索

ストーリーを書く

シェアするシェアする
報告する

そして翌日。


――なぜ? どうして俺の部屋に集まるの?


今、俺の部屋には王族が10名、そしてメイドさんがおよそ30名集結している。


護衛の騎士さんも4名、申し訳程度にいらっしゃってますが……、


男女の比率がおかしな事になっている。


とにかくギューギューなのです。


やめてよ、本当に考えようよ。


これでは収集がつきそうにない為、とっととデレクへ転移する。


(は――――い、着きましたよぉ。散って散って!)


もう、暑苦しいったらありゃしない。


………………


と思ってた時期が俺にもありました――――っ。


ポヨヨン、バインバイン、ミーンミーンなんですよぉー。


ここはパーラダイス! はいもう一度、 パーラダイス!!


露天風呂が大変なことになっております。


もうね、女の人大杉だって。


仕方がないので男湯 (内湯) も女性陣に開放しました――――っ。


そして数少ない男性陣はというと、


露天風呂の端の一角を何とか確保。ひそひそと話をしながら周りを眺めていた。


「しかし、ここは凄いねぇ。外の雄大な自然を見ながらの入浴とは格別だよ」


「いや……、確かに。そして、こちらの方も絶景ではないかね。かね」


アランさんもカイゼル王もそれぞれ温泉を満喫しておいでのようだ。


「この施設がダンジョンの前にあるのも良いね。ダンジョンでの疲れを癒すには持ってこいだよ」


とアランさん。 続けて、


「もしかしてだけど、他のダンジョンの近くにもここのように温泉施設を作くったりできるのかい?」


「こればかりは掘ってみないことには何とも言えないですね。ただ、可能性はあると思いますけど」


そのように返答するとアランさんは腕を組んで考えだした。


「しかし、お主もおばば様に気に入られて大変よのう。お陰でこちらは大助かりなんだが」


カイゼル王はしみじみこぼしていた。


まあ、おばば様もあの性格だからね。いろいろと突っ込んでくるんだろね。


「なんとか頑張ります!」


そう答えておいた。






俺たち男性陣はいったんお風呂からあがり、休憩室にて美味しい甘味を堪能していた。


二人して凄い喰いつきぶりである。


男性でも好きな人は本当に好きだからなぁ。(甘味の話です)


シュガードーナツ・プリン・クレープも何種類か。


そして、只今研究中のアイスクリームだ。


これには二人も大絶賛! カップを手に大騒ぎしている。


まぁ秋口でもまだ暑いし、温泉あがりでもあるからね。


あっと、そろそろ不味いんじゃないかな……。


騒ぎを聞きつけてメイド隊が集まりだしたよ。


「あらぁ~、男性だけで楽しそうですわね~。それになにか美味しそうな物をコソコソ食べてるみたいですけど~。わたくしも呼んで頂きたかったですわぁ~」


と王妃様、見事なジト目攻撃です。


「い、いや、コソコソなどしておらんぞ。セシリア達にも知らせねばと今話していたところだ。なあアラン」


アランさんは『えっ、ここで振るの』といった顔だ。


「は、はい。こんなに美味しい物があるのなら、キシ○ア様……あ、いえ、セシリア様にお伝えせねばと申し合わせておったところです」


そうして、みんなで顔を見合わせてコクコクと頷く。


「あらそうなの? ごめんなさいね~。じゃあ、もうここには用はないのでしょう。またゆっくり温泉を楽しんでいらしてぇ」


男性陣はそそくさと撤収していく。 すると後ろから、


ゲンは残っててねぇ~」


「…………」


その言葉にカイゼル王とアランさんは、


【健闘を祈る】的にサッと右手を上げると速やかに退出されていった。


………………


それからしばらく、俺は湯舟に戻ることができなかった。






そして次の日。


『ダンジョン・デレク』の扱いについて協議が始まった。


転移陣を何処に設置するのか。


ダンジョン前の広いスペースをどう活用していくか。


近くの町まで街道を通すだとか、現地にも冒険者ギルドがあった方が……。


などなど多岐にわたっている。


事を起こすというのは、すごく大変な事だが、


『これがなれば王国の未来は明るい』


みなさんやる気満々の様子だ。


俺はオブザーバー的な立ち位置なので王城に戻ってさえいれば特に会議に出る必要はないそうだ。


なので薬草採取に出かけたり温泉に行ったりと、お城での悠々自適な生活をおくっていた。









……あれから20日程がたち、周りはすっかり秋めいてきた。


日本にいれば、さんまでも焼いて食べようかって感じだな。


転移陣の話はだいたい固まってきたようだ。


使用する転移陣は全部で4組。



・冒険者。 これは王都の東にある冒険者ギルド内に、行き用と帰り用の2つを設置する。


・馬車用。 貴族街にほど近い大きめの広場を使用。馬車寄せなどの他にかなりのスペースを必要とするようだ。


・一般用。 これも馬車用の近くに設置する予定だ。一般人用とはいえ通行料は結構高額となる。使用は貴族関係者や大商人といった富裕層が中心となるだろう。


・王族用。 さすがに王城には設置しなかったが誰かさんの熱い希望により、どこそかの離れの近くに決定していた。



なお物流トラブルを避けるため、マジックバッグの持ち込みは一切出来なくなっている。


その代案として、冒険者にはダンジョン内でのみ使えるマジックバッグを貸し出すようにした。


これらを考慮して『デレクの冒険者ギルド』はダンジョン入口の階段前に建てられる事となった。


そして今日はアランさんと共にデレクを訪れていた。


ダンジョン前に王国の要望に沿った町づくりを進めていくためだ。


まず基本となる道路を通し、町門・衛兵の詰め所・商店・宿屋・大きめの共同浴場など。


民家の方は大半を長屋形式とした。冒険者用だな。


とはいっても壁は厚くプライベートは守られる。水道・トイレつき。


トイレは水洗で、生活排水などは地下を通して処理をおこなうようにした。デレクが。


教会もしっかり建てた。


礼拝堂にはユカリーナ様の像を安置する。


これは俺が幾日も頑張って創作したもので、すばらしい出来栄えとなっている。


そしてもっとも重要なのが近隣の町に向かう街道の整備である。


現在は街道が存在しない為、ダンジョンはあるものの今まで放置されてきたのだ。


まだ山の反対側 (王都側) であれば是が非でも何とかしていたのだろうが、場所も悪かったな。


この広大な樹海も……。


王国側としては最寄りのモレスビーの町まで街道を通したいそうだ。


樹海さえ抜ければ何の問題もないはず。


ディレクの力が及ぶ限り道幅5mの街道を通していき、以前からある細い道につなげた。


もちろん途中にある熊人族の集落も経由させている。






ようやく町の外郭と中心になる建物ができてきた。


ここまでで、およそ300人規模というところか。


将来的には4000人規模にまで持っていくのだという。


とはいえ、たった1日足らずでここまでやってのけたのだ。


当然のことながらアランさんは絶句している。


「す、すごい! 凄すぎる。まあ、そこの温泉施設をどうやって建てたのか不思議には思っていたけれど」


「出来るのはダンジョンの周りだけですけどね」


「それなら、ミスリルや各ポーションなどの迷宮産の物資を定期的に卸してはもらえないだろうか」


「残念ながらそれは出来ないみたいです。あれはあくまでも命を賭けた対価なのです」


そんな要望を出してきたアランさんに俺はキッパリと答えていた。


実際のところはもちろん可能だが、


『過ぎたるは何とやら』で碌なことないと思う。


人間の欲というのは際限がないからね。


(さて、今日はここまでのようだな)


それじゃあテストも兼ねて王族専用の転移陣で帰ってみますかね。


デレク側の転移陣は最初に作った温泉施設の玄関に設置してある。


ここは、とうとう王族専用の保養施設になってしまったようだ。


まぁね、俺たちはそのまんま使えるからいいけど……。


場所も良い所に建ってるから認識阻害の結界もそのままにしておきますかね。


騎士や警備の衛兵で物々しくなるのは嫌だし。






城へもどる途中もアランさんといろいろと話をしているのだが、


町を管理していく上での人員確保もなかなか難しいようだ。


まあ、言うなればここはどちらに転ぶか分からないような未開の地だからねぇ。


敬遠する者も多いのだろう。


一度、この町を目にすれば考え方も変わるとは思うんだけどね。


それならと、


「役人とかは別にして、町の警備などは地元の熊人族を使うという手もありますよ」


そのように勧めてみると。


おおっ、なかなか良い反応が返ってきた。


明日にでもその熊人族の集落に行ってみようということになった。


なんでも、天候にしても樹海の魔獣や獣についても、現地を知る人間というのは貴重なのだそうだ。


なるほどねぇ、言われてみれば確かにそうだな。


………………


そして次の日。


こちらのメンバーは4人と1匹。


俺とナツは冒険者装備。子供たちは普段着の上からローブを羽織っている。


メアリーは今日、アランさんの奥方であるアストレアさんとお買い物に行くらしい。


やっと子供らしい事ができるようになったのだ。目一杯甘えて楽しんできてほしいな。


王国側からはアランさんと従者が一人、プレートアーマーを着た護衛の騎士が二名同行している。


おいおい、そんな数で大丈夫なの?


仮にも大公だよね。


まぁ大名行列よろしく、ぞろぞろ連れて来られても困るけど。


それに約束したとはいえ、本人が行く必要もないのでは? と思ってしまう。


若いから自分で動きたいのは分かるし、今回の『ダンジョン・デレクの件』は王国にとっても重要なんだろうけど。


ナツたちが住んでいた熊人族の集落は120人程が生活しているという。


それでは、さっそく向かってみますかね。

この作品はいかがでしたか?

24

コメント

0

👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!

チャット小説はテラーノベルアプリをインストール
テラーノベルのスクリーンショット
テラーノベル

電車の中でも寝る前のベッドの中でもサクサク快適に。
もっと読みたい!がどんどんみつかる。
「読んで」「書いて」毎日が楽しくなる小説アプリをダウンロードしよう。

Apple StoreGoogle Play Store
本棚

ホーム

本棚

検索

ストーリーを書く
本棚

通知

本棚

本棚