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「いつも応援してます!!大好きです!!!」


「ありがとう〜♡」



いつもの私の決まり文句である。

私はアイドルだ。日々いろいろなオタクたちに構っている。底辺アイドルだから今日も20人くらいしか来てないけど。


おっさんばかりの中に1人だけ、若い男がいる。メガネで、髪もボサボサで、典型的なオタク。極めつけは、チェックのシャツ。漫画の中の世界にしか存在しないんだと思ってた。本当にいるんだね、チェックシャツのオタクって。


みんな、私が有名なアイドルになれるように頑張るって言ってくれる。なれるのかなあ、そんなの。



オタクはキモイおっさんばかりだけど、その一言一言は辛い練習ばかりの日々に意外と効く。誰かに応援されること、好いてもらえることは結構嬉しい。

今日もあの若いメガネの男がオドオドしながら目の前に来た。



「今日も可愛かったです…大好きです…」


「いつもありがと〜!お兄さん何歳なの?」


「え、あ、19…」


「え〜!私のひとつ上じゃん!!」


「えへ…」



もっと上に見えたけど、ひとつしか変わらないんだ。ふーん。今日は一人ひとりの顔をよく見ようと思って握手会に望んだけど、あの人は結構美形っぽかった。メガネもボサボサな髪もどうにかしたらいいのに。



「こんにちは…」


「あ!!えーと、何さん?こんなに来てくれるのにお名前聞いたこと無かったね、ごめんなさい!」


「サトウです…」


「サトウさんね!今日もありがとう!!また来てくれる?」


「もちろんです…」


「ていうか、今日メガネしてないんだ!いいと思う!!」


「コンタクトにしまして…少しでもかっこよくなりたいと思って…」


「へ〜!!めっちゃいいと思う!頑張ってください!!じゃあまたね!!ありがとう!!」



コンタクト、結構いいじゃん。私の目に狂いはなかった!普通に顔整ってたし。どんだけメガネの度強いんだよ。



「こんにちは…お久しぶりです」


「わ〜サトウさん!!久々だ〜!あれ?マッシュにした?」


「あ…はい…髪型かっこよくしてもらいたくて、おまかせにしたらこうなりました…」


「そうなんだ〜!!サトウさんパーマとか良さそうだけどね」


「そうですか?今度やってみます」


「うん!楽しみにしてる!いちばんに見せに来てね!」


「はい…」


「じゃあ今日もありがとう!またね!」



どんどんかっこよくなっていくじゃん、髪も綺麗になって。チェックシャツも着るのやめてるし、服のセンス上がってない?

なんで?私のため?垢抜けてくのを見るのってこんなに楽しいんだ。



私にも大きめの仕事が舞い込んでくるようになって、ファンも増えてきた。でもやっぱり初期からいてくれる方は特別で、来てくれると嬉しい。



「リサちゃん!パーマかけてきたよ…!」


「サトウさん!!え〜かっこいいです!!」


「ありがとう。リサちゃんも今日も可愛いな」


「ありがとう!大好きだよー!ていうかなんかサトウさん明るくなってない??」


「垢抜けられるように頑張ったら友達増えたんだ」


「そうなんだ!!よかったね!!」


「うん。君のおかげだよ」


「嬉しい!!またきてね!じゃあね!!」



どんどんかっこよくなってくじゃん…それどころか普通にタイプなんだけど。私のためで私のおかげでって嬉しい。



それからもサトウさんはたくさん来てくれて、その度にかっこよくなっていった。性格も明るくはなったけど、初期の頃からの優しい感じは残ってる。


私も徐々に人気が出てきて、オタク個人と好きに話せる時間は減ってきた。私は一人ひとりを大事にしたいし、初期の頃からの人はもっと。

だけどそうはいかないし、私のめざしてたアイドルはこれだから。



「リサちゃん」


「サトウさん!また来てくれたんだね、いつもありがとう!初期の頃から本当にお世話になってます」


「古参で嬉しいよ」


「サトウさんがいなかったら私ここまで頑張れてなかったよ」


「そんな、大袈裟だよ」


「ごめんもう時間だね。ありがとう、また来てね!大好きだよ!!」



私の言葉は、紛れもない本心だった。

いつしか私は、サトウさんの顔が見たくてアイドルを頑張っていたんだ。



「あ、サトウさん!!え?ユキちゃん?なんで一緒に??」


ユキちゃんは私のオタクで、最近よく来てくれるようになった子だ。素朴で、でも可愛くて純粋で、すぐ覚えた子。


「リサちゃん、久しぶり。君に感謝したいことがあるんだ」


「え?なに?感謝?」


「ユキと付き合うことになったんだ。君も知ってると思うけどユキも君のオタクで、それで知り合って…」


「え?」


「君の歌に勇気を貰って想いを伝えたんだ。出会いもこうなれたのも全部リサちゃんのおかげ。ありがとう。あんなにモサかった僕がこうやって垢抜けて恋愛まで出来てるのもリサちゃんのおかげだよ。」


「そうなんだ…へー、よかったじゃん、お幸せに!今まで通り私にばっかりお金注ぎ込まないでよ〜?ユキちゃんに使うんだぞ!」


「いいんです!!だって私たちどっちもリサちゃんのことが大好きだから」


「ちょっとユキ!はは…これからもリサちゃん大好きだからね。一生応援するよ」


「うんありがとー!私も大好きだよ!!」




なんで?なんで?

サトウさんが大好きなのは私でしょ??どうして?

ユキなんかより先に大好きって言われてたのは私なのに。なんで?

大好きって、言ったのに。








はあ、今ごろ嫉妬に狂っているだろうか、僕のリサ。

どんどんかっこよくなる僕のこと、好きにならないわけが無いだろうな。最近の握手会の時の僕を見る目、あれは完全に僕のことが好きだ。

僕にはリサがいるのに、本気で付き合うなんてことするわけないだろ。

僕もリサが大好きだ。だから、君の嫉妬してる顔が、絶望してるその顔が、見たかったんだよ。

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