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【登場人物紹介】
fu(主人): 誰もが恐れる冷酷な若き当主。親が勝手に決めた政略結婚の婚約者に悩まされている。rmへの狂おしいほどの愛を募らせているが、まだ想いを伝えていない。何よりもrmの命を守るため、最速で屋敷へ連れ帰り過保護に看病する。
rm(身代わり): 超天然な少年。セシリアが放った悪意のナイフに心を破壊され、いつもの笑顔が完全に消えてしまう。付き合っていない恥ずかしさと「盾」としての現実に絶望し、想いを声に出せない。fuの部屋のベッドで無事に意識を取り戻すが、自分のせいでkzとsyuが悲劇に巻き込まれたことに胸を痛める。
syu(側近): お調子者エリート。車いすのkzを片時も離さず溺愛するが、kzの危機には一切の慈悲を捨てた「本物の狂気」を見せる最強の攻め。rmの救出を優先したことで、泣き叫ぶkzに「大嫌い」と拒絶され、そのまま嵐の闇へ見失ってしまう。その後、狂ったように探し回るが『3日間』全く見つからない絶望の底に突き落とされる。
kz(側近): 国中から大人気の冷酷メガネ美男子。体は完治しておらず車いす生活だった。。激しいトラウマに直面すると幼児退行してしまうが、syuの愛に支えられ、圧倒的な冷徹さで敵を論破する。syuに手を離されたショックで幼児退行したまま失踪し、3日間、高熱と激痛に耐えながら孤独に彷徨い続ける。
セシリア(fuの元婚約者): 高慢で残忍な隣国の公爵令嬢。fuの婚約者(建前)を名乗り、夜会の裏でrmやkzの精神の深淵を徹底的に踏みにじる。
Aボタン(医師): fuお抱えの天才医師。冷徹で淡々としているが、腕は確か。3日間の彷徨により、心停止寸前の【瀕死状態】でお屋敷へ連れ戻されたkzの凄惨な容態を厳しく診断する。
【これまでのあらすじ】
華やかな夜会の裏で、セシリアの残忍な言葉に傷つき逃げ出したrm。
fu様は3時間に及ぶ尋問会議の末に居場所を突き止め、一番に救出する。
しかし、内緒で車いすを抜け出し、よろよろと歩いてrmを探しに来ていたkzは、激しい過呼吸のなか「2時間」も嵐に晒され、トラウマを思い出してしまう。
遅れて駆けつけたsyuは、命の危機に瀕したrmを救うために一瞬だけkzから手を離してしまい、それを見たkzはトラウマが決壊。
「しゅうなんて大嫌いだ!」と泣き叫びながら嵐の闇へと走り去ってしまった。
syuは胸を引き裂かれるような激しい後悔の涙を流しながらも、職務のために一度rmを連れて屋敷へと撤退し、そこから『3日間』不眠不休でkzを探し回る。
そして、心停止寸前の【瀕死状態】に陥っていたkzをスラムの奥でついに発見し、天才医師・Aボタンによる「生存確率数パーセント」という冷徹な診断のもと、過酷な緊急手術が開始されたのだった。
Aボタンによる数時間におよぶ大手術が終わり、看病部屋にはふたたび、静かな医療器具の音だけが規則正しく鳴り響いていた。
セシリアの一族が引き起こした妨害工作の残党はfuの手によってすべて処理されたが、この部屋の空気だけは、未だ凍りついたままである。
syu「……kz、聞こえる? 俺だよ。……3日間も、一人にして本当にごめん……っ」
ベッドの横に座り込み、kzの包帯に巻かれた細い右手を両手でぎゅっと握りしめ、ガサガサに枯れた声で語りかけるsyu。
天才医師・Aボタンの処置によって心臓はかろうじて動き続けているものの、kzの意識は現実に戻ってくる気配を見せず、深い昏睡状態のままだった。
Aボタン「強心剤と抗生物質の投与は終えた。だが言ったはずだ、syu。この男は今、過去の精神的トラウマによって自ら現実を拒絶している。生きる意志を呼び戻さなければ、今夜が山だ」
部屋の隅で静かに書類を整理しながら、冷徹な声で事実を告げるAボタン。
syu「分かってる……っ、分かってるよ。……kz、お前が『大嫌い』って言ったって、俺のことが憎くてもいい。だから……お願いだから俺を置いていかないで。よしよし、怖かったね。暗いのも寒いのも、俺が全部消してあげるから。ほら、……俺の呼吸に合わせて……。大丈夫だよ、kz」
syuは涙をポロポロとこぼしながら、幼児退行してパニックのまま意識を失った恋人の髪を優しく撫ぜ、まるで小さな赤ん坊をあやすように優しく何度も何度も語りかける。
いつもなら「触るな不敬だ」と怒るはずの冷酷な恋人が、ただ青白く透き通る顔のまま眠り続けている絶望に、syuの胸は張り裂けそうだった。
syuが不眠不休で名前を呼び続け、夜が明けて朝の光が窓から差し込み始めた頃、ようやくkzの意識が戻りかけた。
kz「……っ……、……ぁ……あ、っ……! げほっ、ごほっ……っ」
パチリと、何日も閉ざされていたkzの長い睫毛が揺れ、その瞳が現実の光を捉えた。
しかし、意識が覚醒した瞬間、彼の体を襲ったのは安怠ではなく、凄まじいパニックだった。
眼鏡を失い、ぼやける視界の中で最初に見えたのは、3日前に自分を凄まじい怒号で怒鳴りつけた、顔をぐしゃぐしゃに汚したsyuの姿だった。
kz「ひっ……! あ、あ……っ、ごめんなさい……っ!!」
kzは弾かれたようにベッドのシーツに背中を擦り付け、小さな子供のように身体をガタガタと激しく強張らせた。
脳裏にフラッシュバックしているのは、自分を「気味の悪い不良品」と怒鳴り散らして冷たい雨の中に捨てた実の家族の顔、そして3日前、裏路地で自分に激しい怒りをぶつけてきたsyuの恐ろしい咆哮だった。
現実と悪夢の区別がまだついていない。
syu「kz……!? 違う、俺だよ、syuだよ! 怖がらせてごめん……っ!!」
syuが慌てて手を伸ばし、その肩をそっと包み込おうとする。しかし、その大きな手が近づいた瞬間、kzは恐怖のあまり目から大粒の涙をポロポロと溢れ出させ、枕に顔を押し付けて激しく泣きじゃくり始めた。
kz「やだ……っ、たたかないで、おいてかないでよぉ……っ! 僕、良い子にするから……お熱が出て、よろよろ歩いちゃってごめんなさい……っ、だから怒らないで!!」
大人の冷酷な口調は戻らなかった。幼児退行した状態のまま、ベッドの上でsyuの存在に激しく怯え、声を枯らしてわんわんと泣き叫ぶkz。
自分を怒鳴ったsyuが怖くてたまらない。
細い腕で必死に頭を覆い隠し、小さな子供が親の折檻を恐れるように、過呼吸になりかけながらシーツを涙で濡らし続ける。
syu「kz、違うんだ……っ! お前を叩いたり、捨てたりするわけないだろ……っ!! 怒ってごめん、全部俺が悪かったから……っ!!」
怯えきった瞳で自分を拒絶し、泣き叫ぶkzの姿に、syuは張り裂けそうな後悔の涙を流した。
暴れるkzの細い手首を優しく無力化し、ベッドごと包み込むように、その冷え切った身体を折れそうなほど強く、必死にその腕の中に抱きしめ直す。
syu「大嫌いでいい、俺のことが怖くてもいい……! でもお願いだから、俺の傍にいて、俺から離れないでくれ、」
kz「……っ!!」
お調子者のプライドも全て捨て去り、syuは激しい自責の念に駆られながら、髪を撫で回し、二度と離さないという強い力で、泣きじゃくるkzの小さな背中を優しくトントンとあやすように叩き続けるのだった。
【同じ頃、お屋敷のfuの自室。】
壁の向こうの警告音が静まり、kzの悲痛な泣き声と、それを必死に宥めるsyuの叫びが聞こえた瞬間、rmの目から堰を切ったように涙が溢れ出した。
rm「……っ、よ、かったぁ……っ、kzさん、意識が戻ったんですね……っ。でも、すごく泣いてる……っ」
ベッドの上でボロボロと嬉し涙を流するrm。その小さな肩を、fuは後ろからガシッと力強く抱きしめた。
fu「あぁ、あいつらの心配はもう要らん。Aボタンがついている。……それよりもrm、お前は一晩中、あいつらの心配ばかりして……私の前で、どれだけ自分を蔑ろにすれば気が済むんだ」
低く、熱を帯びたfuの声が、rmの耳元で響く。
rm「fu様……っ」
不意にベッドの上で押し倒されるように視線が重なり、fuの大きな体温が目の前に迫る。もどかしい両片想いの距離感。
けれど、お隣の瀕死の危機を見て、大切な人を失う恐怖が限界に達していたのはrmも同じだった。
rm(私、笑えなくなっちゃったって思ったけど……でも、fu様を失うくらいなら、身代わりなんて建前、もうどうでもいい……っ!)
rm「……fu様,私、声は出ないけど……でも、fu様が、大好きです……っ!!」
恥ずかしさと愛おしさが爆発したrmは、ついに言葉にならない代わりに、fuの首に細い腕をぎゅっと回し、自分から強くしがみついた。
fu「……rmっ……! お前、その可愛い反応が何を意味するか、分かっているな。……もう、絶対に手放してやらんぞ」
今この瞬間、今までもどかしかった距離感が完全にゼロになる。
fuは理性を完全大破させ、顔を真っ刻に染めながら、rmの身体を絶対に離さないという確かな力強さで、激しく愛おしそうに抱きしめ直すのだった。
【数日後の朝・お屋敷の看病部屋・ベッドの中】
あれから数日、天才医師・Aボタンの執念の治療と、お調子者の仮面を捨てて一晩中泣きながら抱きしめ続けたsyuの過保護な看病によって、kzの瀕死の容態は奇跡的に安定へと向かっていた。
kz「……ん……ぅ……」
お布団の中で小さく身を縮めていたkzが、ゆっくりと目を覚ます。
眼鏡のない、まだ少し熱で潤んだ瞳が、自分の右手を痛いくらいにギュッと握りしめたまま、ベッドの縁に頭を預けてすとんと眠りこけている大きな影を捉えた。
kz「……syu……?」
ガサガサに枯れた声で、小さくその名前を呟く。
肉体の痛みはまだ完治にはほど遠く。
けれど、数日前あんなに怖くてたまらなかったsyuの怒号への恐怖や、実の家族に捨てられた悪夢の闇は、今自分の手を握る男の、涙の痕だらけの寝顔とあたたかい体温によって、綺麗さっぱり消し去られていることに気づいた。
syu「……ん、あ! kz……っ!? 目、覚めた……っ!?」
kzの微かな指の動きに、パチッと跳ねるように目を覚ましたsyu。
目の前で自分を見つめるkzの瞳に恐怖の光がないのを見た瞬間、その乾いた瞳からふたたび大粒の涙がポロポロと溢れ出した。
syu「ごめん、本当にごめんね、kz……っ。もう怒鳴ったりしない、お前を置いてどこにも行かないから……っ! 俺のこと、もう嫌い……?」
ベッドごと壊れ物を扱うように優しく、だけど離さないという強い力でkzをギュッと抱きしめ、子供のように泣きじゃくる。
kz「……っ! 声が大きいですよ、syu。……主様のお屋敷で、そんなみっともない声を上げて泣くな……っ」
子供のようなのうわ言は、完全に終わっていた。
いつもの冷静で冷酷なトーンを装いながらも、最愛の男に手を握りしめられ、恥ずかしそうに顔を真っ赤にするツンデレ彼女がそこにいた。
kz「……嫌いなわけ、ないでしょう。……体も心も、まだ完治には遠いのだ。お前が責任を持って……一生、私の傍であやし続けろと言っているのです……っ」
ツンとした態度のまま、syuのシャツの袖を細い指先でぎゅーっと、千切れんばかりの力で握り返す、最高に愛おしい限界デレなkzだった。
【同じ日の昼下がり】
看病部屋のドアがカチャリと静かに開いた。
fu「……失礼するぞ。kz、体調はどうだ……って、貴様らは朝から一体何をやっているんだ」
お隣の部屋の看病がひと段落したのを察し、rmを伴って見舞いに訪れた当主・fuが、部屋に入るなり呆れたように額を押さえて絶句する。
syu「あ! fu様、rmくんおはよーございまーす! 見てくださいよ、ウチのkz様、子供っぽいの終わったんですけど、まだ体が完治してないのをいいことに、俺の腕の中から一歩も出てくれないんですよ〜! 超可愛くないですか!?」
ベッドの上で後ろからkzの細い腰をガシッと両腕でホールドし、頬をすりすらせながら大ノロケする。
kz「……っ! 不敬だぞ、syu、主様の前だ……っ! ……fu様、見苦しい姿をお見せして申し訳ありません。まだ動けぬのをいいことに、この男が『俺のぬくもりがないとkzがまた悪夢を見る〜』などと、不条理な屁理屈を捏ねて離さないのです……」
眼鏡の奥の瞳を真っ赤に染めながら、syuの胸元にコテッと頭を預けて完全にホールドされているkz。
rm「わぁ、kzさん、いつもの格好いいお声に戻って良かったです! はい、これ、城下町でfu様が全種類買い占めてくれたリンゴ飴です! お見舞いに持ってきました!」
ピカピカの天然笑顔を取り戻したrmが、お盆に載せたキラキラのリンゴ飴を嬉しそうに差し出す。
syu「おっ、リンゴ飴じゃん! ありがとーrmくん! っていうかfu様、全種類買い占めって相変わらず過保護だな〜! ほら、rmくん、恋を自覚して恥ずかしくて声出なくなっちゃってるじゃん。fu様もさっさと自分の部屋でrmくんの手をギュッと握って、正式に付き合っちゃってくださいよ〜!」
ベッドの上からニヤニヤと主を盛大に煽るお調子者エリート。
fu「貴様……っ!! 減給だけでは足りんぞ……っ!」
rm「……っ……」
syuの言葉を聞いた瞬間、rmの頭の中で、嵐の夜にベッドの上で覆いかぶさるように見つめられたfuの熱い瞳がフラッシュバックする。
恥ずかしさと愛おしさで胸がいっぱいになり、喉が閉まって声が出ないrmは、ただカッと顔を真っ赤に染めて、fuの服の裾を細い指先でぎゅーっと強く握りしめ、fuの大きな体の後ろに隠れようとする。
fu「……っ! rm、お前、そんな可愛い顔で私の後ろに隠れるな、私の理性が……」
kz「……はぁ。不器用な主従ですね。……syu、私にもリンゴ飴を一口くれ。甘いものが食べたい」
ツンとした冷酷顔のまま、syuに『あーん』をおねだりするkz。
fu「行くぞ、rm! こいつらのノロケの邪魔だ!!」
顔を真っ赤にしたまま、fuはrmの細い手首を優しく、だけど絶対に手放さないという確かな力強さで引き寄せ、笑顔のrmを連れて足早に部屋を後にするのだった。
【数分後・fuの自室・ベッドの上】
ドアが静かに閉まる音がカチャリと響いた。
fu「……全く、あいつらは。主人の前であれほど堂々と密着しおって……」
部屋に戻るなり、恥ずかしさを隠すように早口で毒突くfu。
しかし、ベッドの上で向かい合ったfuの瞳は、酷く真剣で、熱い光を宿してrmだけを見つめていた。
rm「……っ……」
両片想いの何とも言えないもどかしい距離感。
料理のときのように手が触れ合うだけでも緊張していたのに、今はfuの大きな体温を全身で受け止めたいと、胸のトクトクが止まらない
fu「……rm。あいつらの言う通り、私は酷く不器用だ。……だが、あいつらが命を懸けてお互いを愛しているように、私は私のすべてを懸けて、お前という一人の男をこの部屋で一生守り続けてやる。お前が恥ずかしがって、声が出なくても私は構わない。お前が私の服を掴んでくれるなら、私はそれだけで、どこまでも強くなれる。だから、何も怖がるな、rm」
fuはrmの前に一歩近づき、繋げない手をポケットに仕舞いながら、rmの赤くなった額に、慈しむようにそっと自分の額を重ねる。
rm「……っ……」
言葉は出ない。
伝える勇気はまだ足りない。
けれど、rmはコクコクと小さく首を振って、fuの胸に自分からギュッと深く顔を埋めた。
そして、fuの服の裾を細い指先でぎゅーっと、千切れんばかりの力で強く、強く握りしめる。
fu「本当に、お前というやつは。言葉がないなら、その赤い顔のままでいい。私は、お前のすべてを包み込んでやる」
fuはrmの小さな身体を優しく、だけど絶対に手放さない力強さで抱きしめ直す。
未交際ならではの、手を繋ぐことすらぎこちない二人の、熱くて初心な両片想いの体温だけが、静かな主の部屋の中で、いつまでも愛おしそうに重なり合っているのだった。
次回♡=600
mona
953
#短編集
Miyu🌈🩵🦄3
198
緑星ふうま
567
#rmfu
mona
1,957
コメント
1件
わあ、第14話読み終わりました……!kzの意識が戻ってからの幼児退行シーン、本当に胸が痛かったです。でもsyuが「大嫌いでいい」って泣きながら抱きしめ直すところで、もう涙が止まらなかった……。そしてfuとrmの両片想いがついに動き出したのも熱い!rmが声が出ないのに自分から抱きつく勇気、すごく伝わってきました。看病部屋のノロケ合戦にfuが慌てて逃げ出すラストも可愛くて、シリアスと甘さのバランスが絶妙でした。次回も楽しみにしてます!