時は今、高校二年生。
あれから一週間、彼は、めっちゃくちゃ纏わりついてきた。
うざい、うざすぎる。そう、最初に感じた印象を、再認識させつづけるように。めっちゃ、めっちゃ絡んできた。
(うぜぇ……)
今までの、どんな私の記憶でも、どんな私でも、お気に入りだった屋上。
その屋上で、こっそり昼休みに弁当を食べていても、すーぐ来るし。
まるで、どこにいるか分かっているかのように、しばらくすると姿を現すのだ。
「ででーん! どーもー、春野ケイでーす! みんなのアイドル、そして君だけのプリンス、春野ケイのお出ましだぜ〜!?」
…………うぜぇ。
ほんっと、うぜぇ。
「ケイくん、うざいよ」
「えっ、まじっすか……、オレ落ち込みモードに突入まっしぐら〜……、がーん……」
…………うぜぇ。
この子はなにかと、私の記憶の中にはない、知らない行動をする。
そもそも、あの時見た『キオク』は、頭痛もなく、なにもなく。ただ、ただ温かい映像を、場面場面で見せるような、優しいもので。
そんなのを、断片的に見たものだから、彼がこれからする行動なんて、分かるはず無くて。彼自身もひたすらよく分からないやつ。
私の、今の『高木柊』の運命に紛れ込んできた、特殊な因果を持つ存在。そんなイメージを、彼に抱いていた。
だから、私が心の中で、彼に付けているあだ名は因果くん。
因果くんは、「かなしみ〜……」なんて落ち込んだ顔をしながら、ほんとは落ち込みなんて知らなそうな、嘘っぱちの雰囲気を纏っている。
ほんっと、うざいなぁ……。
「……ふふ」
「……? センパイ、オレなんか変な事しました?」
めざとく、私の変化を目につけてくる因果くんに、私は「いや……」と呟き、そのあとにこう続けた。
「因果く……じゃなくてケイくんが今まで触れ合ったことのない人だから、さ」
「……ふーにゅ、そうすかねー? オレみてーなうざいやついっぱいいると思いますけど」
うざいって自覚あったんだ。それならもう少し、アピール控えめにしてほしいけれども。
「そうだ、センパイ。今度カフェいきません? 女子はあーゆーとこ好きでしょ?」
カフェ? 勝手にオシャレが好きな、そこら辺の女子と一緒にしないでほしいけど。……でも。
人に関わって、私の人生が、こんなに変わらないのは初めてだし、たまにはいいかも。
「……じゃあ、いいよ。いこっか、カフェ」
「じゃあ、てなんすかじゃあって! センパイ、口数がめっちゃ少ないっすよねー。オレにもっと心開いてくれてもいいんすよー? 心を開いてプリーズ♡」
そんな事をいって、ズキュンっ、と胸の当たりに両手でハートを作る、因果くん。
うぜぇキモいしつこいの、三拍子を具現化したような彼だが。そんな彼に付き合うのも、悪くはないかもなんて、ちょっぴり思ったり。
「あれれ~? センパイなんでちょっとニタニタ笑ってるんです〜? いやだー、キモ〜い」
お前が言うな! この変態うざ人間!
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