今日の朝ごはんは、食パンと牛乳とスクランブルエッグとキュウリ(輪切り)とキャベツの千切りとミニトマトのサラダとタコさんウインナーだった。
朝は軽めがいいと言うが、彼女らは摂取《せっしゅ》したもの全てをエネルギーに変換《へんかん》できるらしいので、食べる量が多いとそれだけ充電できるらしい。(最近分かった)
つまり、彼女らはモンスターチルドレンになったと同時に、お手洗いに行かなくてよくなったのである。ただし、体の中がどうなっているのかは彼女たちですら分からないらしい。(ウ○トラビーストの『ア○ジキング』と『食没』が合わさったもののようだ)
そんなこんなで、いつものように朝食を済ませた俺たちは、次の目的地をどこにするのかというテーマで会議を開いた。
「なあ、ミノリ。次はどこに行けばいいんだ?」
俺は、ちゃぶ台の上に地図を広げながら、そう言った。
すると、ミノリ(吸血鬼)は人差し指で次の目的地を示した。
「次の目的地は『深緑《しんりょく》に染まりし火山』っていうところよ」
なるほど。日本だと滋賀《しが》県《けん》から島根県《しまねけん》の中心あたりまで行くのか……って、結構、距離があるな……。
ミサキ(巨大な亀型モンスターの外装)でも丸三日はかかりそうだ。
うーん、食糧《しょくりょう》がそこまで保《も》つかどうかも危ういな。
さて、どうしようかな……。
その時、俺の頭の上に乗っているチエミ(体長十五センチほどの妖精)がこんなことを言った。
「なら、この近くにある神社に行って、お参りをしましょう」
「……あのな、チエミ。困ったときは神頼みって言うけど、実際に叶えてもらうには色々手順が必要なんだぞ? だから、もう少しマシな案を……」
その時、ミノリ(吸血鬼)がこう言った。
「チエミ! あんた、朝から冴《さ》えてるわね!」
そのあと、マナミ(茶髪ショートの獣人《ネコ》)がこう言った。
「ナ、ナイスアイデアです!」
その後、シオリ(白髪ロングの獣人《ネコ》)がこう言った。
「ナオ兄、今回のチエミはすごいよ。褒《ほ》めてあげて」
そのあと、ツキネ(変身型スライム)がこう言った。
「今回のチエミさんは、なかなか冴えていますねー」
その後、コユリ(本物の天使)がこう言った。
「ホント、どこかの吸血鬼《バカ》とは大違いですね」
そのあと、カオリ(ゾンビ)がこう言った。
「なあ、マスター。今回はチエミの案に乗ってやろうぜ」
その後、シズク(ドッペルゲンガー)がこう言った。
「妖精さんの考えは正しいから、従うべきだよ!」
な、なんだ、こいつら。口を揃《そろ》えて神社に行ったほうがいいって。
というか、この世界に神社ってあるのか? 俺はチエミにそのことについて訊《き》いてみることにした。
「なあ、チエミ。この世界に神社は存在するのか?」
チエミは、俺の頭から離れると、地図に向かって風の魔法を使った。
すると、小さな竜巻《たつまき》が|徐々《じょじょ》に地図を囲んでいった。
「『|風の噂《ルーマー》』」
チエミがそう言った直後、地図の至る所で緑色の点が出現した。
「おっ、これはいったい」
すかさず、チエミ(体長十五センチほどの妖精)が説明を始める。
「これは、この世界の神社の分布《ぶんぷ》です。まあ、この地図には他の大陸が載《の》っていないので、この島国にあるものしか分かりませんけどね」
「……なるほど。それでどうしてこんなにあるんだ?」
「それはですね。この世界はあちらの世界、つまりナオトさんのいた世界と兄弟のような関係なので、使う使わないに関わらず、あちこちにこうしたわけの分からないものが存在するんです」
「……あのなー、神社は意味もなく、そこにあるわけじゃないぞ?」
「その通りです。ですが、この世界での神社は単に何かを祀《まつ》るだけでなく、この世界の神様から祝福を受ける場所なんですよ」
「……祝福を受ける場所?」
「はい。もっと分かりやすく言うと、この世界の神様にお願い事をしたら高確率で、それが叶います」
「……マジかよ」
「はい。大抵《たいてい》の願いなら叶います」
俺はその時、勢いよく立ち上がり『喜びの舞』を踊り始めそうになった。
危ない、危ない。俺としたことが危うくみんなに恥ずかしいところを見られるところだった。
俺は大きく咳払いをしてから、話を再開した。
「それで? 一人につき、叶えられる願いの数はいくつなんだ?」
「それは当然、一人一つまでです。リニューアルしたから三つまで叶えてやろうということにはなりません」
「……そうか。なら、今から決めようか。えーっと、この近くで一番近い神社は……おっ、湖の近くにあるじゃないか。これなら、ここから徒歩《とほ》で行けそうだな」
俺がこの近くで発見した神社の場所をみんなに伝えようとすると、そこには先ほどまでいたはずのメンバーはおらず、部屋の隅(すみ)っこに座って円陣を組んでいた。
何してんだ? あいつら。まあ、いいか。俺は気にせず、話を進めた。
「えーっと、じゃあ、どうしようか?」
「そうですね。とりあえず、ちゃぶ台の下からこちらを見ているルルさんに訊《き》いてみましょうか」
「え? ちゃぶ台の下?」
俺がちゃぶ台の下に目をやると、こちらをじーっと見つめる目玉が二つあった。その目玉の持ち主は白魔女のルルであった。
「……お前……何してるんだ?」
「私を無視して会議をするのは反則だよー」
「お前、いつから、そこに居《い》たんだ?」
「ナオトが座った時からだよー」
「全然、気がつかなかったぞ。お前は忍者か?」
「違うよー。白魔女だよー」
「分かったから、とりあえず出てきてくれ。あと、できれば棒読みもやめてくれ」
「それは無理な相談だねー」
ルルはそう言いながら、あぐらをかいて座るとできる逆三角形の空間に腰《こし》を下ろした。
「おい、なんでそこに座るんだ? 床に座れよ」
「私の特等席だからダメー」
「おい、いつから俺はお前の特等席になったんだ?」
「今さっきからだよー」
「そうか。じゃあ、もう好きにしてくれ」
「やったー」
チエミ(体長十五センチほどの妖精)が羨《うらや》ましそうな目で俺を見つめていたが、俺は咳払いをして話を戻した。
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