テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
星キラリ

2,012
ムメイ
661
まなこ〜友
476
65
『わぁ~、お久しぶり。連絡ありがとう。
お陰様で仕事は順調。ほんとに良い職場を紹介してくれてありがとう。
感謝してま~す。
そうそう、そうなのよね~。
仕事も2年目で少し余裕も出て来たけど、良い男性が見つからなくて~。
年も年だし、焦るわぁ~』
女34才、二度の悲しい大失恋を経験している年増女よぉ~。
自虐的に脳内で叫んではいるけれど、不思議と学生時代から知っている
永堀さんには、取り繕わず正直な気持ちを晒せた。
訊いてくるからには、気に掛けてくれているのかも知れぬと──
まっ、そんなことはないかと思いつつ、ほんのちょっぴり彼女の問いかけに
私は期待してしまった。
就職先を紹介してくれた時のような展開が──
僥倖が──
今一度ありはしないかと。
『山倉さんならさ、綺麗だし見た目も気持ちもまだまだ20代だから相手さえ見つかれば
結婚が決まるのは早いと思うのよ。それでね、もしよければ……だけども、紹介したい
婚活サイトがあるの。
Pink Keyと言うサイトでね、近々婚活パーティーがあるから誰か婚活考えてる身近な同僚とか
誘って参加してみたらと思って……』
『わぉ、ありがとう。私もぼちぼち結婚相談所か、そういった婚活アプリ
とかで婚活始めようかなって思ってたとこ。Pink Keyってサイトも前に
一度目にしてたことはあるんだけど、なんだか経験がない分敷居が高くて……』
『そこね、ほんとにたまたまなんだけど私の知人も系列っていうか、グループの
1つとして運営していて、妙齢の女性がいたら声掛けといてって昨年辺りから頼
まれてたの。成婚数も多くて信頼のおけるサイトだからお勧め。
誰か身近に誘える女性いない? 30才目前の女子』
『そうだね、3人ほどいるけど誘いやすいのは28才の橋本蓉子って人かなぁ~。
あとの2人は結婚よりもこのまま仕事に生きるのよぉ~感が半端ないから、誘いにくいかも。
でも、28才の橋本さんと34才の私で参加したら、無茶苦茶不利なような気が……』
『そうだね、確かに6才の差は大きいものね。
でもさあぁ……何事もやってみないとわからないってこともあるんじゃない?
そこでお相手が見つからなかったときは、あとでちゃんとフォローするから、その彼女と
一緒に参加してみれば?』
私の耳はしっかりと聞き逃さずに永堀さんの言葉を拾っていた。
『お相手が見つからなかったときは、あとでちゃんとフォローするから』
私には、2度チャンスがあるってことよね。
『ここは、彼女の顔を立てて橋本さんを誘って婚活パーティーに参加してみるかっ』
……なんちゃって、こちらから願ってもない話を、婚活など関係ない彼女から振ってもらい、
逆に感謝しないといけないのにね、私ったら。
あぁ、なんという私の言い草よ。
でも──
ほんとに──
彼女からのアクションに乗れば、幸せ行きのチケットが手に入るような気が
した。
だって、確かに──
彼女と再会を機に、自分の運勢は上昇気流に乗っているから。
―――――――――――――――――――――――
✔美並は文世と再会後、結婚していることは知らされていたけれど、新しい
姓がどんな苗字になったのか聞かされておらず、またそれをいいことに敢え
て自分から文世に改めて訊くこともせず、学生時代の延長線上で旧姓の永堀
という名字で呼んでいる。
コメント
1件
うわ、美並さんの心境すごくリアルに伝わってきた……。二度の大失恋を経た34歳が「年増女」と自虐しつつも、永堀さんからの「フォローする」という一言に密かに期待してしまう感じ、刺さるな。就職先を紹介してもらった僥倖がまた起きるんじゃないかって淡い期待を抱くところ、すごく人間らしい。それであとがきの設定——文世が結婚してるのに旧姓で呼び続けてる「知らないふり」の構造も、読者としては気になって仕方ない。この選択が今後どう転ぶのか、引き続き追いたくなるエピソードだったよ。