沢山の人々に祝福されて、今日私は王太子妃となる。
ヴィオラは横目でテオドールを見た。正装に着替え堂々と振る舞う姿からは、普段の彼は連想出来ない。
「ヴィオラ、どうかした?」
テオドールが、心配そうにこちらを覗き見てくる。
「いいえ」
ヴィオラは、はにかんだ様に笑って見せた。その瞬間、純白のドレスがふわりと揺れる。
ミシェルや、デラにも見せたかったな。
きっと、笑顔で喜んでくれる。あぁ、でもミシェルは心配症だから、複雑な顔をするかも知れない。
ヴィオラはテオドールを見て思う。始めはミシェルと似てると思ったが、一緒に過ごす内にまるで似てないと思うようになった。
なんで、あの時ミシェルとテオドールを間違えそうになったのか分からないくらいに。
もしかしたら、ミシェルが引き合わせてくれたのかも……なんて思うと可笑しくなる。
ミシェルがいなくなってから、目まぐるしい程にヴィオラの世界は変わった。
あの部屋にいた自分が、今の自分を見たらなんて言うだろうか。
「ヴィオラ」
「え……きゃっ」
テオドールに、突如持ち上げられお姫様抱っこをされる。
「テオドール様っ⁉︎」
「今日だけだから、ね?」
屈託のない笑顔で言われたら、何も言えない。ヴィオラは、大人しくテオドールに抱っこされた。そのまま彼は、人々の中を歩いて行く。
沢山の人々が2人を祝福している。
「君をこうして、抱き抱えられて僕は幸せだよ。だってこの瞬間は、君を独り占め出来るんだから。でも、今日からこの特権は僕だけのものだよ」
後にテオドールが、国王に就任してからも、王妃であるヴィオラを抱き抱えている所を臣下達は見たとか見ないとか。
お終い
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