コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!
第1話
登場人物
グルッペン:WrWrd軍総統
トントン:書記長
コネシマ:特攻隊長
ゾム:暗殺者
ひとらんらん:一般兵、農業担当
オスマン:外交官
本文
グルッペン「今日も平和な軍内部だ。全く、我々には暇な時間というものが似合わん」
総統室に響く、いつもの総統の声。グルッペンは大量の書類を前に、満足げに笑っている。その隣で、書記長であるトントンが鋭い眼光で書類を捌いていた。
トントン「……まあ、平和なのは一部だけでしょうね。外交方面は相変わらずきな臭いですよ、グルッペン。」
トントンがバインダーを叩く。その話題に、室内にいたオスマンが、飲んでいたお茶のカップをわずかに強く握りしめた。
オスマン「……トントン、僕の外交で何か問題があったメウ? ちゃんと収めてきたはずなんだけど。」
その声はいつもより、ほんの少しだけ高く、どこか焦りを帯びていた。
グルッペン「いや、オスマンの仕事に落ち度はない。問題は、オスマンが交渉をまとめたW国の動きだ。」
グルッペンは壁に掛けられた世界地図の、W国の領土を指差した。
グルッペン「最近、W国が妙に大人しい。我が軍からすれば警戒すべき事態だ。静かすぎる。まるで、大きな作戦を隠しているかのようにな。」
その言葉を聞いた瞬間、隣に座っていたひとらんらんの肩が、ピクリと震えた。彼はいつも通り、黙々と部屋の隅で武器の手入れをしている。
コネシマ「ハッ、隠し事やと? 隠し事なんて、いつかバレるに決まっとるやろ。俺が全部ぶち壊してやるわ!」
特攻隊長であるコネシマの、豪快で能天気な笑い声が響く。
ゾム「コネシマうるさい。けど、グルッペンの言う通り。妙な静けさだ。……まるで、内部に侵入されているみたいで、ゾクゾクする」
暗殺者であるゾムが、冷たい笑みを浮かべながらそう口にした。ゾムの視線は、一瞬、手入れをするひとらんらんと、カップを持つオスマンの間を彷徨った。
ひとらんらん「……まさか、そんな大それたことがあるわけないでしょ。ただの、彼らの外交方針の転換だよ」
オスマン「そうだメウ。グルッペン、あまり疑心暗鬼になりすぎるのは良くないメウ。僕たちがいるんだから」
二人は笑顔を見せたが、その笑顔はいつもの朗らかなものではなかった。どこか、作り物のように見えた。
トントンは二人の顔を交互に見る。彼らの間に流れる、一瞬の不自然な沈黙と協調に、トントンは違和感を覚えた。
トントン「……そうですね。警戒は怠りませんが、ひとまずこの件は保留で。それよりコネシマ、先日の報告書—」
トントンが話題を変えたことで、部屋の空気は元に戻ったかに見えた。
しかし、その夜。
トントンが深夜の巡回で総統室の裏を通りかかったとき、机の上にひとらんらんが忘れていったらしい、一冊のノートを発見する。
トントンがそれを手に取り、中身をパラパラとめくる。その中の数ページに、トントンには全く読めない、暗号のような文字がびっしりと書き込まれていた。それは、彼が今まで見てきたどの国の言語とも異なっていた。
トントンはノートを閉じた。
トントン「……ひとらんらん。お前、一体何を隠している?」
その夜、WrWrd軍の穏やかな日常に、最初の小さなひび割れが生じた。