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睡蓮
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#異能力バトル
名無の男2
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水瀬葵
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「うおおおおぉぅおっ!?」
「ちょちょちょちょとととどどこ触ってんのよ!?」
「しっかたねぇだろが馬乗るなんて初めてなんだくぁらぁあぁっあっ!! もっと揺れねえように運転できねーのかよ!?」
村からヴィクトーリアへは歩いていけるような距離ではないらしく、移動用に馬を借りることになった、までは良かったのだが。
当然、オレには乗馬の経験なんてないワケで。 アーシアの後ろに二人乗りしても怖いもんは怖いワケで。
オマケに、尻の下で馬の骨がそれぞれ前後左右に自在に動き回り、振動と痛みが超連続することに耐性があるワケがないのだ。
「あっばばばっばばば!?」
「急ぐんでしょっ! もう少しで岩場は越えるから口閉じてて! 舌噛むわよっ!」
アーシアの胴に掴まって暫く揺られていると、平原に出た頃になってやっと跳ね上がりが軽減された。
近道をするために道にもならない道を走らせていたからか、馬の挙動にも少なからず疲労を感じる。ここからは穏やかめな進路を取らざるを得ないだろう。
というか、急いでいるとは言えオレとしてもその方が有り難い……。揺れが強すぎて腰が限界だったからな。
馬の野性的な香りと共に過ぎていく景色の中、平原の奥に複数の塔と十字の石柱が並ぶ土地が続いていることに気がついた。
「こうして見てるとよ、ここって本当に異世界なんだなって感じるよ。 現実じゃこんな景色、海外の観光地とか世界遺産くらいでしか見れないぜ?」
「……この一帯は昔、最終聖雪戦争で焦土となったとされてる拝雪教徒の聖地なの。 寵愛の女神マリア様の宮殿を守る親衛隊の聖雪軍と魔王軍師団が衝突して、多くの戦士がこの地に没した。 それからこの場所は、勇猛たる戦没者たちの集合墓地として聖地に指定されることになった。 でもね、ここ数年はある特別な死者のための墓地としても利用されているの。 ……あの十字架は、寵愛の女神マリア様の導きを受けた『転生者』たちの慰霊碑なのよ。 私たちの世界に落ちてきた『転生者』たちは、魔王征伐に失敗するとああして埋葬される。 次の『転生者』が流れ星となって現れることを祈って……」
「待て、ってことはあの十字架って全部、死んじまった『転生者』なのかよ!?」
十字架はここから視認できるだけでも二、三十は突き立てられている。
あれが本当に全て、過去にこの異世界にやってきた『転生者』の墓なら……、マリアは一体どれだけの人間を異世界送りにしてきたって言うんだ?
「…………沖縄で聞いた連続失踪事件って、まさか」
” 最近は失踪事件もありますからね〜、
おっそろしい時代ですよホント! “
” あれ、ご存知でない?
SNSでオフ会に参加することになった
若者が次々に失踪してるって噂を?
もう20人近くが消息を絶たれてるんですってよ “
修学旅行の宿泊先だったホテル横のプライベートビーチで、放送部の河津一花が話していた連続失踪事件。
もしあの事件にマリアが関係しているとしたら……、失踪者はただ行方不明となったのではなく、異世界に送り込まれていた可能性がある。
「マリア……、何がしてえんだお前は……?」
「なんとなく雰囲気は感じてたけど、キラはマリア様のことをあまり良く思っていないみたいね、どうして?」
「……あいつは、オレのいた元の世界じゃ危険な奴だったんだよ。 妹を人質に、オレのことを……」
「待って待ってちょっと待って? マリア様は別世界にもいらっしゃるの!? それにその言い方じゃあまるで、女神じゃなくて普通の人間みたい……」
こっちの世界に送られてきたオレが魔法だのドラゴンだのに驚かされ続けたように、アーシアにとってはオレの元いた世界の話が驚きの連続だったらしく、ヴィクトーリアの城下町に着くまで、疲労の割に話題には事欠くことはなかった。
馬から降り、迷路のような露店市をフードを被り人混みを掻き分けて進んでいく。
香辛料の香りと聞き慣れない言語が飛び交う中、住宅街を越え、最短ルートで向かったのは南の城門だった。
閉ざされた門に近づくオレ達の前に、槍を片手に持った二人の兵士が行く手を阻む。
その後ろにも複数人の衛兵が門を警備していて、まるで国境沿いのような緊張感が一帯に広まっていた。
「止まれ。 ヴィクトーリアは現在、他国からの密偵対策で厳戒態勢を取っている。 ここは公爵以上の階級者しか通すことはできない。 身分を示す証の品を提示されよ」
「……私がいなくなったことを民に知らせないために、城を閉鎖して情報流出を止めたのね。 兵士には箝口令まで敷いて。 そうよね、王族の行方不明なんて国民からの信頼に関わることだもの。 全て隠してしまえば不安は広まらず、それどころか私の調印なしで政策を進められる分、エドは逆に自由になってしまった……。 兄のやりそうなことだというのに、想像できていなかったわ。 これで少しは状況が揺るげばいいと思っていたけど、家出は失策ね……」
「どうして失踪の件を知っている!? 何者だ、頭巾を上げて顔を見せよ!」
言われた通りにフードを取ると、アーシアの顔を見た衛兵は顔を真っ青にして、大急ぎで門を開く号令を出した。
「さあ、行きましょう。 私から離れないで」
―――――――――――――――――――――
「そろそろアイツ、あっちで揉まれてる頃だろうなぁ」
ピコピコと8bit風のBGMが流れるゲーム機を片手に、ジョン・ドゥはいつものダイナーで大盛りのポテトを口に放り込んでいた。
「言っちゃえばあの異世界は敗者復活ステージみてぇなもんだ。 現実でおっ死んじまった奴があっちで困難を乗り越えて、その報酬に残機取り戻して帰ってくるための場所。 異世界転生ってのは、そーゆー意味だ。 にしてもよぉ、どうして異世界ってのは死んだヤツしか行けねえみたいな風潮が出来ちまったのかね? トラックにハネられたりとか、背中押されて電車に轢かれたりとかよ。 最近は異世界召喚っつーカテゴリも出来たらしいけどさ。 オレにはあんま異世界モノの良さは分かんねえな。 幻想は画面の中だから熱中できるんだぜ?」
「……ジョン、ケチャップとって」
「ん、おいよっ」
「さんきゅ」
せっかくのテーブル席なのにあえてジョン・ドゥの横に座り、巨大な四段バーガーの中腹にケチャップをかけて更なるジャンキーを追い求めるシュレーディンガーは、ソースだらけの口を紙で拭き取って、
「……ジョン、聞いてもい?」
「おう、何だぁ? オレが答えられることならなーんだって答えてやる。 明日の天気からあの子のパンツの色、宇宙船に使われてるネジの数まで! そう、何だってな」
「ジョンはわたしに、隠し事とかしてないよね?」
ハンバーガーを食べる手を止めて、ジョンの横顔を見てそう伺った。
すると、ジョン・ドゥは視線の揺らぎも、口角も、顔色一つ変えずに、「当然だろ」と回答した。
「してないしてない! シュレちゃんに隠し事なんてしねーって。まず、何を隠さなきゃなんねーことがあるって言うんだ? オレとシュレちゃんは一心同体。 一蓮托生! 信用しろよ、ほら」
差し出されたミルクシェイクのストローにノータイムで吸い付くシュレーディンガーだったが、彼女は心の底から安心していた。
ジョン・ドゥが嘘つきだと知っているシュレーディンガーにとって、彼の「隠し事なんてしていない」という発言は「隠し事をしている」という意味に脳内変換されるからだ。
普通の人間関係なら、それは不安の種となるだろうが、この二人にとっては違う。
とある奇妙な利害関係から成っている仮面の関係にとって、それはシュレーディンガーにとって幸福の確約だった。
「……ふふ」
シュレーディンガーは、シェイクを飲み込む音に混じえて小さく笑っていた。
コメント
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あああ第116話読み終わった……!😭💕 転生者たちの墓地が平原に広がってる光景、めっちゃ重くてエモかった……。マリアがただの女神じゃないっぽい伏線もヤバいし、キラの過去がチラ見えしたのも気になる〜! そして最後のジョンとシュレーディンガーの会話がもうね……嘘を幸福の確約にしてる二人の関係性、切なくて好きすぎるよ……! 次の展開が待ちきれない!✨