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宅飲みが始まって数時間。
空になった缶と、少しの気怠さが部屋に満ちていた。 いつもなら穏やかに話を回している福良さんだったが、今日は珍しくペースが早い。
fkr「ねぇ、見て言ちゃん。これ、すごいんだよ」
とろんとろんの瞳をした福良さんが、座椅子に深く沈み込みながら、言さんの袖を引いた。
手元には、おつまみのチーズを並べて作った、いびつな五角形。
gon「……五角形、ですか?」
fkr「違うよ。僕の計算によると、これ、お皿の余白との比率が完璧なんだよ。すごいでしょ?」
ふにゃふにゃの笑顔で「えっへん」と胸を張る。普段の知的な姿はどこへやら、今の彼は褒めてほしくてたまらない子供のようだった。
言さんは吹き出しそうになるのを堪え、その柔らかそうな髪を撫でた。
gon「はいはい、すごいですよ福良さん。天才ですね」
「でしょー?」と上機嫌に目を細め、言さんの手に自分から頭を擦り寄せてくる福良さん。
だが、その無防備さが、言の中にある「何か」をじわじわと刺激し始めていた。
やがて、福良さんは言さんの膝にコテリと頭を預け、満足げな寝息を立て始めた。
gon「……あ、寝ちゃった」
部屋には時計の音だけが響く。
言さんは毛布を掛けてあげようとしたが、その時、福良さんが寝言を漏らした。
fkr「……ん、……すご、でしょ……言ちゃん……」
無意識に言のシャツをギュッと掴む指先。
お酒のせいで赤くなった頬と、少しだけ開いた唇。
その瞬間、言さんの理性がみしりと音を立てて軋んだ。
gon「……はぁ。……無理だ、これ」
言さんは、被っていた「可愛い後輩」の仮面を剥ぎ取った。 膝の上で丸まる福良さんの、無防備な首筋から鎖骨へと視線を滑らせる。
gon(……そんな格好で、よく僕の隣で寝られますね)
寝ているのをいいことに、言さんはその火照った頬にゆっくりと指先を滑らせた。
本当は、さっきの「すごいすごい」なんて、ただのあしらいじゃない。
あなたの全部を独り占めしたくて、どうしようもなかったのに。
指先が耳たぶに触れ、そのまま項へと深く入り込む。
今、この人を起こして、その潤んだ瞳に自分だけを映させたら。最年少という立場を投げ捨てて、強引に奪ってしまったら。
暗闇の中、言さんの瞳には、飢えた獣のような鋭く熱い光が宿っていた。
gon「……覚えておいてくださいよ、福良さん」
低く、押し殺した声。 結局、最後の一線を超える代わりに、言さんは福良さんの額に、皮膚が沈み込むほど深く、静かな熱を刻みつけるように口付けた。
gon「……明日、どんな顔してあなたに会えばいいんですか」
言さんは、まだ自分のシャツを掴んでいる福良さんの手を、そっと握りしめる。 理性を繋ぎ止めるための爪が、自分の手のひらに深く食い込んでいた。
(おわり)