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【15年の嘘】
稽古中
─雨宮吾郎。
僕の役を演じるのは鳴嶋メルト。最近注目され始めたばかりのモデル兼役者だ。
メルト)星野、ここのセリフなんだけどさ
アクア)あぁ、ここは──
つい最近までの雑な演技は見る影もない。いつの間にか、俺と並ぶレベルの演技力を身につけていた。我が子を見ているようで嬉しい気持ちと、今までの努力を優しく否定されたような複雑な気持ちがある。
アクア)……
悔しくないと言ったら嘘になる。でも、俺にはそれ以上にやらないといけないものがある。俺にとって、役者は復讐の手段の1つにすぎず、鳴嶋のように役者に対して強い執念はない。俺の演技は器用貧乏だから上手くいってるだけだ。近いうちに必ず、カミキヒカルをこの手で──
メルト)星野ってば!
アクア)っ、え……?
いきなり肩を揺さぶられ、意識が現実に戻る。
メルト)やっと反応してくれたな!何回呼んでも返事してくんなかったから、心配したじゃん
アクア)あ、そうか……ごめん
悪い方向に思考が進んだな。今は演技に集中しないと。
メルト)えいっ
アクア)っ!?
いきなり首にひやりとした感覚が巡り、ビクッとして慌ててその方を向く。
アクア)な、なに?
メルト)へへ、びっくりさせようと思ったから!
悪戯が成功した子どものように笑っていた。なんとなく、こっちも笑顔になる。もしかしたら、アイドルに向いてるかもしれないな。
アクア)…眩しいな
メルト)え、なんか言った?
アクア)別に。なんでもない
メルト)? そっか
鳴嶋はペットボトルのキャップを開けて、水を飲み始めた。
アクア)…いや、それ俺の分じゃなかったのかよ
思わずそうツッコミを入れると、鳴嶋は笑顔を向けてきた。コイツ、さっきから笑ってばっかだな。
アクア)なに、その顔
メルト)飲む?
アクア)え?
ずいっと差し出された水をみて、唖然とする。
メルト)飲まないのか?
アクア)…飲む
若者の間では、これが当たり前なんだと結論を付けて、それを受け取る。少し恥ずかしいが、悟られないように水を口に含む。コクコクと遠慮なく飲んでいるのは、さっきの仕返し。かなり量が減ったペットボトルをメルトに返す。ふと周りをみて、ミスったと思った。何故かルビーの視線が冷たい。やめろ。今のお前はアイに似てるから、母親に怒られてるみたいで嫌なんだよ。
アクア)鳴嶋、少し動きの確認をしたいから、あっちで練習しないか?
メルト)そうだな!ここだと邪魔になるし……あっ、台本!
アクア)持ってる。お前のもな
メルト)ナイス!じゃ、行こうぜ!
疫病神)ふふ、中々に面白いことをしてるね
遠くに行ったアクア達を呆然とした目で見ている人達にくすくすと笑いながら眺めていた。
ルビー)お、おにいちゃん……
疫病神)え、そんなに?
ポロポロと涙を流すルビーにぎょっとし、ツッコミを入れる。近くにいる有馬かなや少し遠くにいる黒川あかねも同じような顔をしている。
MEM)うーん、この何とも言えない空気……
フリル)アクアさんと、メルトさん……ふーん、エッチじゃん
MEM)えっ!?
フリル)え?
疫病神)……
ダメだ。頭が痛いんだけど。早く帰ってカラスにエサをあげないといけないのに。
疫病神)…逃げてないでなんとかしてよ、星野愛久愛海
終
レモンさんからリクエストをいただいたメルアクでした。かなり遅くなってしまい申し訳ありません。。。