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何がなんだかわからなくて、縋る視線で健吾さんを見つめると、わざわざそれに合わせながら微笑みかけてくれる。
窓から差し込む太陽の光みたいな心遣いに、怖かった気持ちがすっと消えてなくなった。
「顔色が随分と良くなった。落ち着いたみたいだな」
言いながら背中に回されている手のひらが、あやすような感じでリズミカルに動き出した。ゆっくりと叩くお蔭で、ふたたび眠りそうになるくらいに気持ちがいい。
そんな気持ちよさに身をまかせたかったものの、心配させてしまったことについて謝らなければと口を開く。
「すみません、朝早くから心配かけてしまって」
「たまたま寝返りをうったら、腰がつってしまったんだ。痛みに堪えながら隣を見ると、おまえが微笑みながら『ありがとうございます、創造主さま』なんていう、寝言をはっきり言ったせいで、心臓が縮みあがった」
驚いたことを示すためなのか、形のいい眉毛があげられる。それにつられるように瞼も開いた。普段は見ることのできない、パッチリまなこの健吾さんの顔が面白くて、思わず吹き出してしまった。
「ふふっ、そんな寝言を言ったんですか。ということは僕は夢の中で、創造主さまに逢ったんですね」
「やっぱりな――」
上機嫌だった表情が、あっという間に忌々しさを表す顔に変わった。
(――つんと突き出た唇にキスをしたら、機嫌が直るだろうか?)
「創造主の奴め、敦士との逢瀬を楽しんだ記憶を消して、悔しがる俺の顔を空から見ているに違いない」
「逢瀬なんて、僕は誰とも浮気はしませんよ」
しっかりと否定したのに、苛立った気持ちが背中を叩く手に出ていた。ゆっくりと叩いていたのに、ベランダに干された布団を伸す勢いで、バシバシ叩きはじめる。