テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
コメント
12件
秋穂 神や
色んなパターンの中太♀︎が見れて幸せすぎました!! もちろん、普段の太宰さん♀︎も大好きなんですが自分の好みだと鬱太♀が好きすぎました 最後のおまけの中也も最高でした
この全部が詰まってだざさんが出来てる……すっげぇ……(語彙)(^O^) ツンだざが好きすぎる…!きゃわちぃ(⋈◍>◡<◍)。✧♡ 素敵な作品(人''▽`)ありがとうございます!
余談だけどさ、
太宰治が主人公の創作大好きなんだよね
(例:異世界失格、転生 太宰治)
文スト太宰と全然違ってみんな鬱病っぽいから萌える
「中也ー! 今日は絶好の入水日和だね! 」
相変わらずの調子で川べりを走っていた太宰♀が、そのまま盛大な水しぶきを上げて川へと飛び込んだのは、なんてことのないいつもの日常の延長だった。
「おいコラ太宰! 待てっつーの、……って、おい!?」
慌てて川へ駆け寄った中也の目の前で、川底から突如として眩い光が放たれた。水面が割れ、光の中から現れたのは、神々しい金髪をなびかせ、白いドレスに身を包んだ「女神」だった。
「おや、哀しき人間よ。あなたが落としたのは……この『デレ』の太宰ですか? それとも『ツン』の太宰ですか? それとも『鬱』の太宰ですか?」
女神がそう言うと、光の中から三人の太宰♀が現れた。全員顔は同じだが、纏う雰囲気がまるで違う。
「はぁ!? なんだそりゃ! つーか太宰が三人!?」
「ええ。どれもあなたが愛する太宰の『欠片』です。選べないのなら、三日間差し上げましょう。一日ひとりずつ一緒に過ごし、最後にどの太宰を引き取るか決めなさい」
そう言い残し、女神は煙のように消えてしまった。残された中也と、性格の違う三人の太宰♀。すでに恋人同士として甘い生活を送っていた中也だったが、ここから怒涛の三日間に巻き込まれることとなる。
初日、現れたのは「デレ太宰♀」だった。
朝起きた瞬間から、背中に柔らかい温もりが抱きついてくる。
「中也ぁ、おはよう! えへへ、今日も中也のお顔が格好良くて幸せだなあ」
「うおっ!? お、おい太宰、朝から距離が近い……っ!」
「だって中也のこと大好きなんだもん。ずっとくっついてたいの。だめ?」
上目遣いで袖をきゅっと掴まれ、中也の心臓が跳ね上がる。普段の太宰なら嫌味のひとつでも言う場面で、この太宰はどこまでも素直だ。朝食を作れば「中也のご飯世界一美味しい!」と目を輝かせ、街を歩けば「手、繋ごう?」と自分から指を絡めてくる。「好き、好き、中也大好き」と、まるで呼吸をするように愛を囁かれ続け、中也の顔は一日中真っ赤だった。
(可愛い……なんだこれ、天使か? 普段の捻くれぶりが嘘みたいに素直で胸がキュンキュンすんだけど!?)
二日目、登場したのは「ツン太宰♀」だった。
昨日とは一転、ソファーの端っこに座り、中也を見下すような目で睨んでくる。
「何よ中也、ジロジロ見ないでよチビ。別に私、君と一緒にいられて嬉しいなんて一微塵も思ってないんだからね」
「あ? 誰がチビだ誰が。相変わらず生意気な口叩きやがって……」
口を開けば悪口ばかりで、甘えてくる気配は一切ない。しかし、中也が「ふーん、じゃあ嫌ならいいけどよ」とわざと離れようとすると、視線で寂しそうに追いかけてくる。そこで中也が不意打ちで背後から肩を抱き寄せ、頬にキスをしてみた。
「ひゃあっ!?」
瞬間、ツン太宰の顔が「ぼっ」と音がしそうなほど真っ赤に染まった。
「へ、ぁ、あ、な、何するのよバカ中也! 触らないでよ、動けないじゃない……っ!」
両手を顔の前でわやわやと動かし、湯気を立てて固まる太宰。いつもなら屁理屈で返してくるはずが、照れすぎて完全にフリーズしている。普段の騒がしさが消え、静かに赤くなっている姿は破壊力抜群だった。
(……静かだし照れ方が爆発的に可愛いんだが??? 悪口言っておきながら触られたらこれかよ!)
三日目、最後に現れたのは「鬱太宰♀」だった。
朝から布団に包まり、猫のように小さくなっている。中也が近づくと、恐る恐る布団から顔を出し、縋るような目で中也を見つめてきた。
「中也……私、生きててごめんなさい。私なんて何の価値もないのに、中也の時間を奪っちゃって……でも、捨てないで……私には中也しかいないの……」
「おいおい、何言ってんだよ。お前には価値があるに決まってんだろ」
中也以外には全く懐かず、自尊心が極限まで低い。だがその分、中也への依存度と承認欲求がとてつもない。中也が「お前は可愛くて最高だ」「俺の大事な恋人だ」と頭を撫でて肯定してやると、泣きそうな顔で「本当に……? 私、中也の側にいていいの……?」と、中也のシャツの裾をぎゅっと握りしめて離さない。
(守ってやらなきゃ感がヤバい……! 肯定してやりてえ……! 庇護欲が爆発しそうだわ糞ッ!)
そして運命の最終日。
再び川べりに現れた女神の前に、頭を抱えて悶絶する中也が立っていた。三人の太宰♀は、それぞれ少し離れた場所で中也の答えを待っている。
「さあ、哀しき人間よ。三日間を過ごした感想は? どの太宰を選ぶのか、決めましたか?」
女神の神聖な問いかけに、中也は大きく息を吐き出し、頭をかきむしりながら叫んだ。
「決められるかバカヤロー!! みんな可愛すぎるだろ!! 選びようがねぇんだよ! デレもツンも鬱も、全員俺の愛しい女なんだよ! 誰か一人なんて選べるわけねぇだろ、全員抱えて帰る以外に選択肢がねぇんだよ!!」
中也の魂の叫びが川辺に響き渡る。その言葉を聞いた女神は、満足そうにうなずくと、ふっと微笑んだ。
「ふふ、中也ならそう言ってくれると思ってたよ」
次の瞬間、女神はスッと自分の美しい金髪に指をかけた。そのままスポンとウィッグを外し、顔につけていた特殊メイクの皮をスルリと剥ぎ取る。
光の中から現れたのは、見慣れたふわふわの茶髪と、どこか意地悪で、けれど心底愛おしそうに目を細める、本物の太宰♀の顔だった。
「な……太宰……!? お前、女神の正体、お前だったのか!?」
「当たり前じゃないか。私以外の女に中也を委ねるわけないでしょ? 川に飛び込んだのも、三人の私を用意したのも、みーんな私の仕込みさ。最近の中也、お仕事ばかりで私に甘い言葉をくれなかったからね。ちょっと検証してみたくなったのだよ」
ネタばらしをした太宰♀は、悪戯成功と言わんばかりにケラケラと笑う。三人に分かれていた太宰♀たちも、いつの間にか一人の太宰♀へと戻っていた。
「で、どうだった? デレな私も、ツンな私も、鬱な私も、みーんな中也をメロメロにしちゃったみたいだけど?」
「て、めぇ……! 俺の純情を試して遊んでんじゃねぇよ!」
真っ赤になって怒る中也に、太宰♀はすり寄っていき、昨日のデレ太宰のようにぎゅっと抱きついた。
「でも、どれか一つじゃなくて『全部の私』が好きって言ってくれたのは、すっごく嬉しかったよ。中也、愛してる」
素直な愛の言葉を囁きながら、少し照れたように頬を染める太宰♀。その表情には、デレも、ツンも、少しの弱さも、すべての要素が詰まっていた。
「ちくしょう……結局お前の手のひらの上かよ」
呆れつつも、中也は愛おしさを抑えきれず、太宰♀の腰を引き寄せて強く抱きしめ返した。結局、どの太宰も最高に可愛くて、自分にはこの一筋縄ではいかない彼女しかいないのだと、痛感させられた中也であった。
おまけ
「……ん、ふぁ……」
まぶしい朝の光に目を覚ました太宰♀は、ベッドの中で大きな欠伸を噛み殺した。いつもなら隣から聞こえるはずの規則的な寝息が聞こえない。不思議に思って目元を擦りながら半身を起こすと、目の前に信じられない光景が広がっていた。
「……え?」
ベッドの周りに、同じ顔、同じ声、同じ体型をした中也が三人、整然と並んで立っていたのだ。
「あ、起きたか。おい太宰、朝飯できてるぞ……って、なに顔赤くしてんだよ。別に、お前のために張り切って作ったわけじゃねぇからな。温かいうちに食えよ」
腕を組んでそっぽを向くのは、照れ隠しの悪口が隠しきれていない「ツンデレ中也」。
「おはよう、太宰。よく眠れたか? 寒くなかったか? ほら、足元冷えてるだろ。お前の好きな熱い紅茶淹れておいたから、ベッドで呑むといい。今日も可愛いな、俺の姫様」
優しく微笑みながら太宰♀の肩に優しく毛布をかけ直し、頭を愛おしそうに撫でてくれるのは、完璧すぎる気遣いを見せる「スパダリ中也」。
「おーおー、寝起きのボサボサ頭も格好がつかねぇな。……おい、いつまで寝ぼけてやがる。朝からそんな無防備な顔してると、今日一日ベッドから出られなくしてやるぞ?」
すっとベッドに膝をつき、太宰♀の顎を指先でクイと持ち上げて意地悪く囁いてくるのは、危険な色気を振り撒く「サディスト中也」。
三者三様、けれど発せられる声も匂いも、太宰♀を愛して止まない熱量も、すべて間違いなく本物の「中也」のものだった。あまりの密度の高さと圧倒的な存在感に、太宰♀の思考回路は一瞬でショートする。
「え……え、ぁ、え……っ!?」
普段ならどんな状況でも軽口で返すはずの太宰♀が、両手を口元に当てて音がしそうなほど真っ赤になった。いつも中也をからかって遊んでいる立場が一転、完全に逆転してしまったのだ。
三人の恋人は、顔を赤くしてパニックになる太宰♀を取り囲むように、一歩寄り添い、距離を詰めてくる。逃げ場のないベッドの上で、三人の顔が太宰♀の視界いっぱいに迫る。
「「「なあ太宰、どの俺がいい?」」」
重なる三人の声。一人はツンとそっぽを向きながら指先を絡めてき、一人は甘い眼差しで頬を撫でてくれ、一人は耳元で低く妖しく囁いて首筋に息をかけてくる。
「っ~~~!?!?! む、無理! キャパオーバー!! 決められるわけないじゃないかバカぁ!!」
心臓が破裂しそうなほどの胸の高鳴りと、甘すぎる圧迫感に耐えきれなくなった太宰♀は、ついに頭を抱えてベッドの中に全力で潜り込んだ。
「太宰ー、おい、太宰! いつまで潜ってんだよ。早く起きろ、ねぼすけ」
ふっと身体を揺さぶられる感覚と、聞き慣れた声に弾かれたように目を開ける。
明るい陽光が差し込むいつもの部屋。目の前には、三人ではなく「ひとり」の中也が、呆れ顔で太宰♀を見下ろしていた。エプロン姿で、手にフライ返しを持っている。
「ちゅ、中也……? 一人……?」
「あ? 当たり前だろ、何寝ぼけたこと言ってんだ。夢でも見てたのか? ほら、朝飯冷めるぞ」
そう言って笑う目の前の中也を見て、太宰♀は心底ほっと胸を撫で下ろした。……が、同時に、夢の中のあの濃厚すぎる「三人分の中也」に迫られた感触が脳裏に蘇り、再び顔がカッと熱くなっていく。
「な、なんだよお前、急に顔真っ赤にして……熱でもあんのか?」
心配そうに顔を覗き込んでくる中也に対し、太宰♀は真っ赤な顔を隠すように掛け布団を鼻先まで引っ張り上げた。
「なんでもない! なんでもないから、中也は向こうに行っててよ!」
「はぁ!? 人が心配してやってんのに何なんだよお前は!」
ぷいと横を向くツンな態度も、心配して覗き込んでくるスパダリな優しさも、少しイラッとして眉をひそめるサディストな気配も、全部この一人の中也に詰まっているのだと思い知り、太宰♀の心臓は朝から暴走が止まらないのだった。
怜
206
碧瑠(みどる)&理雨
44