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怜
206
碧瑠(みどる)&理雨
44
低浮上すみません!!
ただいま知り合いのスマホ貸してもらった夏の穂です。
リア友にチロルチョコ2個奢るってことで60分だけスマホ借りました!
1分0.5円の価値なんだね
ポメラニアンが最近中也に見えてならないのでポメガバースです。
ちっちゃくて可愛くて橙茶色で気が強いって中也以外のなんだよ………。
極秘の張り込みと膨大な書類の山。その地獄のような数日間をようやくの思いで片付け終えたとき、一六歳の中原中也を襲ったのは、文字通り致死量の疲労だった。
ポートマフィアの薄暗い会議室からどうにかたどり着いたセーフハウス。外套を脱ぎ捨てる気力すらん時すでに遅く、リビングのソファに倒れ込むように沈み込んだ瞬間、内臓の奥底からじわりと不穏な熱が這い上がってきた。
(……くそ、まじかよ……っ)
思考の端で、どうしようもない嫌な予感が頭をもたげる。数日続いた過労と張り詰めたストレス。それが引き金となって肉体の均衡を狂わせる、オメガバースの厄介なイレギュラー変異——「ポメガバース」の発作だった。疲労が限界値を超えた人間の肉体は維持限界を迎え、強制的に毛むくじゃらのポメラニアンへと姿を変えてしまう。
動こうと神経を研ぎ澄ませるが、徹夜明けの身体は鉛の塊のように重く、指先一つ動かすことすらままならない。抗う間もなく、全身の輪郭が曖昧にほどけていく。
——ぽんっ。
乾いた、しかしどこか間抜けな音がリビングの静寂に響き渡った。
床に落ちたのは、中也が先ほどまで着ていたジャケットやシャツ、スラックスの山。そして、その衣類の海にすっぽりと埋もれるようにして、小さな生き物がぽつんと座っていた。
平均的なポメラニアンよりもさらに一回り小ぶりな、手のひらにすっぽりと収まってしまいそうなほど丸っこいシルエット。橙と茶色が混ざり合う上質な綿あめのような毛並みは、どこからどう見ても完璧なまでに犬そのものだった。ケモ耳が生えた中途半端な半獣の姿などではなく、知能の大部分さえもその小さな動物のそれに引きずり込まれている。
「くぅ……っ、ぅー……!」
喉の奥から絞り出したのは、野生を失った威嚇のつもりか、はたまた不満の表れか。しかし、その声はどこからどう聞いてもただの愛らしい鳴き声でしかない。自分の意図通りにならないもどかしさに、中也ポメは小さな前足をふんふんと床に叩きつけた。
その時、ガチャリと玄関の扉が無造作に開く音がした。
「いやあ、まったくもって厄介な書類仕事だったねえ。首領ももう少し僕を労うべきだと思わないかい?」
ひらひらと手を振りながらリビングに入ってきたのは、相棒である太宰治だった。マイペースに独り言を呟いていた太宰の足が、ソファの前でピタリと止まる。
「中也〜? 次の任務だけど、どうやら僕ときみは愛し合うような性行為をしないといけないらしい……って、中也?」
怪訝そうに細められた双眸がスッと下を向く。そこには中也の姿はなく、ただ脱ぎ捨てられた衣服の山と、そこに埋もれている一匹の極小ポメラニアンだけがあった。
太宰は目を丸くし、数秒間の静寂の後、ふっと喉を鳴らして笑った。
「おや、随分と可愛らしい姿になってしまったねえ、中也。いつも不機嫌な顔ばかりしているから、神様が少しは愛嬌を出しなさいって慈悲をくれたのかな?」
面白がるような、それでいて底知れない甘さを孕んだ声色で、太宰はソファの前に膝をついた。
「うーっ! わふっ!」
荒ぶる誇りを見せようと、ちゅやポメは精一杯牙をむいて威嚇してみせる。だが、丸っこくて小さな体でいくら怒ってみても、ただふわふわの毛玉がぷるぷる微かに震えているようにしか見えない。太宰にとっては脅威の欠片もなく、ただ愛玩動物の甘噛みに等しかった。
「そんなに怒らなくてもいいじゃないか。それにしても、見事なものだね。どこからどう見ても、正真正銘の犬だよ。人間の言葉もしゃべれそうにないし、知能の方もすっかりそっちに引っ張られているらしい」
太宰は面白そうに目を細めると、何の躊躇いもなくその小さな体を両手でそっとすくい上げた。
「っ……!」
ふわりと宙に浮いたかと思うと、次の瞬間には太宰の大きな胸元へと抱きしめられていた。ひんやりとした外気から遮断され、太宰の体温と、なぜか妙に落ち着く香りに包まれる。本能的に「この人間は安全だ、敵ではない」と理解しているのか、先ほどまで尖らせていた小さな耳が、パタンと不安そうに垂れ下がった。
「よしよし、疲れたんだねえ。よく頑張りました、偉い偉い」
太宰の大きな掌が、中也ポメの背中を優しく、しかし執拗なほど丁寧に撫で下ろす。サラサラとした柔らかい毛並みが心地よさそうに波打ち、太宰はそれがすっかり気に入ったらしかった。黒い瞳が熱を帯び、どこか危険な光を宿していることなど、犬の脳みそになった中也には知る由もない。
「ふむ、これほど無防備な中也を見るのは初めてだな。いつもは不機嫌に眉間をひそめて、僕の頭を蹴飛ばそうとするのにねえ。ねえ、中也? 僕の声が聞こえるかい?」
「……くぅ、………っ」
「お返事もできないの? じゃあ、こうしようか」
太宰はソファに深く腰掛け直すと、中也ポメを膝の上に陣取らせ、たっぷりと愛情を注ぎ込み始めた。
頭のてっぺんから、ピンと立った耳の付け根、柔らかい頬のあたりを指先で優しく愛でる。さらに、普段なら絶対に触らせまいと激昂するであろう首元や、ピンク色の肉球が覗く小さな前足を、ぷにぷにと執拗にマッサージしていく。
「くぅーん……」
拒絶したいのに、体中を這う太宰の手つきがあまりにも心地よく、そして何より全身から発せられる太宰のフェロモンと愛の香りが、疲弊しきった中也の脳髄を心地よく溶かしていく。犬としての本能に抗えず、中也ポメは小さく喉を鳴らし、太宰の掌に自分の額をこすりつけるようにしてすり寄ってしまった。
その素直すぎる甘え方に、太宰の瞳の奥がふっと熱を帯びる。
「可愛いねえ、中也。どこまでいっても、きみは僕の可愛い相棒だ。こうして丸一日、誰の目も気にせず僕だけに愛でられるために生まれてきたみたいだ」
「わうっ……」
「よしよし、もっと撫でてほしいかい? それとも、美味しいミルクでも持ってきた方がいいかな? いや、きみには僕からの極上の愛をたっぷり注いであげないとね」
太宰は中也ポメを両手で包み込むように持ち上げると、その小さな鼻先に自分の鼻をすっと寄せた。逃げ場のない距離感に、中也ポメは小さく身じろぎするが、太宰はそのまま柔らかい毛並みに顔を埋め、執拗なまでに愛を囁き続ける。
「愛しているよ、中也。人間の姿でも、こんな小さな犬の姿でも、きみが愛おしくて仕方ない。だから、今日は存分に僕に甘えるといい」
外の喧騒を忘れさせるような甘やかな時間が、ただ静かに流れていった。太宰の止まらない溺愛と執着に包まれながら、中也ポメは心地よい疲労感と安心感に負け、トロンとまぶたを落としていく。最後には太宰の掌の中で小さく丸くなり、穏やかな寝息を立て始めたのだった。
◇
それからどれほどの時間が経ったのか。気がつけば、窓の外の景色は完全に夜の帳を下ろしていた。
セーフハウスのリビングルームには、外灯の光がうっすらと差し込んでいるだけだ。ソファの上では、昨日からの極度の疲労がすっかり抜け落ちた中原中也が、目を覚まそうとしていた。
(……ん……?)
意識が浮上するにつれて、中也は自分の肉体に違和感を覚える。ふわふわとした毛並みの感触は消え、代わりに硬いソファの背もたれと、肌を撫でる夜の冷気が直接伝わってきた。
(……って、あれ……?)
ガバッと上半身を起こした瞬間、中也の頭の中に冷水を浴びせられたような衝撃が走る。
服を着ていない。
当然だ。昨日のうちにポメラニアンの姿へと変化し、着ていた衣服はすべてその場に脱ぎ捨てられていたのだ。人間の姿に戻った今、無防備な裸の肉体がそのまま夜気に晒されている。
「……嘘だろ……っ」
顔面が一気に沸騰したように真っ赤に染まり、中也は慌てて近くにあった太宰のシャツを掴み取り、自分の体にざっと巻きつけて身を隠した。心臓がうるさいほど激しく脈を打っている。
ガチャリ、と、キッチンの方から食器が触れ合う音が響いた。
「おや、ようやく目が覚めたかい?」
振り返ると、エプロン姿の太宰がマグカップを二つ持って歩いてくるところだった。太宰はソファの上で顔を真っ赤にしてシャツを死守している中也を見て、くすくすと楽しげに笑い声を漏らす。
「おかえり、中也。人間の姿に戻る瞬間はいつ見ても感動的だねえ」
「てめぇ……っ! おまっ、ふざけんな、何勝手に見てやがるっ……!」
「見ていたも何も、目の前に我が家の最高に可愛い愛犬が転がっていたんだから仕方ないじゃないか。それに、朝起きたら人間の姿に戻って慌てている相棒の姿なんて、僕にとって最高の娯楽だよ」
悪びれる様子もなくニヤニヤと笑う太宰に、中也は恥ずかしさと怒りで頭から湯気が出そうになる。シャツの裾をぎゅっと握りしめ、顔を真っ赤にしたまま睨みつけた。
「てめっ……昨日のこと、全部覚えてやがるな……っ!」
「もちろんさ。ポメの中也が僕の手のひらですりすり甘えていた姿も、僕の匂いを嗅ぎつけて安心しきっていた顔も、一言残らずね。いやあ、写真に撮っておかなかったのが一生の不覚だなあ」
「殺すぞ太宰ぇっ!!」
怒号を上げながらも、肌を覆うものがシャツ一枚しかないため動きが制限され、中也の反撃はただの空振りに終わる。そんな中也の様子を見て、太宰は満足そうに目を細めると、マグカップをテーブルに置き、トコトコと近づいてきた。
「はいはい、そんなに血圧を上げるとまたポメに戻っちゃうよ? ほら、温かいミルクティーでも飲んで落ち着き給え」
「……っ、ふざけんな……」
文句を言いつつも、差し出されたマグカップを受け取り、中也は小さく息を吐いた。昨日のあの猛烈な発作と、恥ずかしい限りの甘えっぷりを思い出して、耳の根まで真っ赤に染まる。
だが、いつまでも恥ずがってばかりいられないのも事実だった。中也はふぅっと息を整えると、昨日の太宰の言葉を思い出し、鋭い青い目を相棒に向ける。
「……でだ。昨日の話の続きだが」
「ん? 何だい?」
「次の任務で、とある組織の幹部から情報を引き出す件だ。お前、さっき『夫婦のふりをして性行為しないといけない』とかふざけたこと抜かしてただろ」
中也の低い声に、太宰はニヤリと不敵な笑みを浮かべた。
「そうさ、あのターゲット・夏の穂は他人の秘密を絶対に他人に漏らさない厄介な女性でね。唯一の弱点が『他人のラブラブな夫婦の営みを見せつけられると、精神的に耐えきれずペラペラと秘密を喋ってしまう』という奇妙なフェティシズムの持ち主なのさ」
「……なんだそのふざけた設定は」
「仕方のないことさ。で、僕たちはその潜入先で、誰が見ても『愛し合っている新婚夫婦』を完璧に演じ切らなければならない。もちろん、ターゲットの目の前で実際に肌を重ねるふり……いや、場合によってはそれ以上の濃厚なスキンシップが必要かもしれないねえ」
太宰の言葉に、中也はジト目を向けた。
「ふり、じゃねぇのかよ」
「さあ、どうだろうね? 昨日の今日だし、中也がまたあの可愛いポメラニアンになって僕に甘えてくれるなら、任務なんて適当に切り上げて二人で引きこもってもいいけれど?」
「冗談じゃねぇっ! そんな真似できるか!」
バッと顔を背けた中也だったが、その頬にはうっすらと赤みが残っている。太宰はそんな相棒の横顔を愛おしそうに見つめながら、ふっと柔らかく微笑んだ。
「さて、準備をしなくてはね。今日はどんな手で中也をからかってやろうか」
「てめぇ、いい加減にしろ……っ!」
文句を言い合う旧双黒の声が、静かな部屋に小気味よく響き渡った。
個人的に
中也↪︎ポメラニアン
太宰↪︎オリエンタルショートヘア
敦↪︎スノーベンガル
芥川↪︎四国犬
ってイメージ
コメント
16件
極 小 ポ メ ラ ニ ア ン ……夏の穂さん…一緒に情報をばらしに(ちゅやとだざさんの営みを見に)行きましょう…ww

今まで中也はチワワだと思ってましたが、この作品を見てポメラニアンだ!!!っと考えを改めました。
たしかに中也はぽめだな