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【警報】ちょっとモブちゃん出ます!
不器用な富豪もっくんと天使涼ちゃん。
そしてイケメンわかぱでお送りします。
「最後に通しで確認してくださーい。」
撮影は終盤。3人できゅっと集まって映像を確認した。これがオッケーなら片付けに入る段取り。
涼ちゃんはまたシャッターが閉じてるようで、若井の隣に座ってしまいむっとする。それでもなんとか仕事に集中して画面を確認して、ちょっとした待機時間がうまれた瞬間。
チーフマネージャーがすかさず俺にメガネ(俺の予備)を渡してきた。さすがしごできだな!
腕を伸ばして若井を越えて無言で涼ちゃんにメガネを渡すと、苦笑してかけてくれる。
「かわい!似合う!」
かけてくれてうれしくて全力で褒めてしまう。
「似合うよ涼ちゃん。かわいい。」
なぜか若井のほうがかっこよくほめてて腹立つ。
スタッフもキャーキャー口々にほめている。
うるせえな、俺の涼ちゃんなんだけど。と思いながら写真を撮った。かわいい。待ち受けにしよ。
キャーキャー言われた涼ちゃんはというと、照れたように口をとがらせただけだった。
無事に確認が終わり解散になった。
監督と話しながら涼ちゃんを目で追う。
……ふらついてる?
心配になって監督への挨拶もそこそこに涼ちゃんを追うと、若い女性スタッフと話していた。
ニコニコしてるけどちょっと困った表情の涼ちゃん。トラブルかな?
「……だからメガネかけましょうって言ったのにー!私が怒られちゃいましたよー。」
あほ会話すぎて頭を殴られた気持ちになった。
てか誰こいつ。
「メンバー同士のことに口出しする君はだあれ?」
「大森さん!?す、すみません。」
知らないスタッフが途端に涙目になって、涼ちゃんの後ろに隠れた。
うわー!!シンプルにイラッとするー。
俺の怒りと無表情に気づいた涼ちゃんが慌てて俺に話しかけてきた。
「元貴、前にマネージャーが言ってたインターンシップの子だよ。 彼女は俺に色々言ってくれてたんだけどさ。」
ちょっとフラフラしてるくらい具合悪いのに。
何であほと話して俺と話さないんだよ?
「涼ちゃんはさ、他人を気遣ってる場合なの?体調管理もできてないのに。 」
我ながら低い声がでた。
びくりと肩をすくませて言葉をとめた涼ちゃんの腕をそっととる。
「フラフラしてるくせに。早く上がろ。」
涼ちゃんの背後に隠れたスタッフにもにっこり笑いかけた。つられ笑いする彼女。
「 君さあ、 メンバーに上から言えるほど偉い立場じゃないよね? チーフマネージャーに言っとくから、社会勉強終わってから現場きてね。」
騒ぎを聞きつけてかチーフマネージャーが走ってきたが、俺は涼ちゃんを早く上がらせたいので。
「マネージャー、後でラインしますね。」
と、涼ちゃんの腕を引いてそのまま足早に楽屋に向かった。
「も、元貴……!……」
「黙って。」
楽屋のドアを開け放ち、ソファに涼ちゃんを突き飛ばした。そのまま逃さないように、 涼ちゃんの前に立ち見下ろす。
「……なにごと?」
ドアのほうから冷静な声がして振り返ると、先に着替えが済んだらしい若井が椅子に座ってこちらをみていた。
「若井、先に車乗ってて。俺ちょーっとだけ涼ちゃんと話あるから。」
「……元貴。涼ちゃんの顔色、よーくみてみろ。で、もう1回いってみてくれ。」
見やると明らかに真っ青な顔色なのに、ニコニコしてソファに座っている涼ちゃん。思わず言葉に詰まった。
「ごめん。元貴が忙しいのに、迷惑かけちゃったね。まだ夏バテみたい。2人とも元気でうらやましい。 」
ふわふわした言葉に激情が凪いでいく。
違う。そんなこと言わせたかったわけじゃなかった。
慌ててソファに近寄り、涼ちゃんの隣に座って背中をさする。
涼ちゃんは優しく笑って、そっと俺によりかかってくれる。いつも華奢な背中をさするが、何だか 少しこってるというか腫れてる……?
「……ごめんね、元貴。ちょっとだるくて、いっぱいいっぱいで。俺、感じ悪かったよね。」
いっぱいいっぱいなのに頼ってくれないのはどうして?俺そんなに頼りない?
「……早く帰ろ。てか。あんなあほにまで優しくするから具合悪くなるんだよ。涼ちゃんは1番年寄りだけど1番時間があるんだから。早く治してよ。」
我ながら下手くそ。ガキかよ。 それなのに。
「迷惑かけてごめんなさい。心配してくれてありがとうね。元貴は優しいね。」
涼ちゃんがささやくように言って俺の頭を撫でてくれた。
「いやいや。元貴は謝らんのかい。涼ちゃん、あまやかしすぎだよ。叱ろうよ。」
若井が冷めた目で俺を見ているが知らん。
「お言葉に甘えて早く帰らせてもらうね。 2人もスタッフさんとご飯食べに行くんでしょう?早く着替えないと。」
「うん。」
顔色が少し良くなった涼ちゃんがゆっくり立ち上がり、俺も後に続いた。
涼ちゃんの華奢な背中を見つめる。
手のひらには涼ちゃんのあたたかさと、妙に腫れた背中の感覚が残っていた。
コメント
2件
一気に読んじゃいました!! 設定も好きすぎるし、お話もめっちゃ面白いです💞 続きが出るの楽しみにしてます🥰