中編です
⚠幼児化、嘔吐、精神的に不安定な表現⚠
夕飯を終わらせ、Broooockとシャークんの寝かしつけが終わって、スマイルは早めに就寝。俺ときんときは、医務室にいる子どもの寝かしつけにでも行こうと歩いていた。
あの子の名前は何ていうんだろうか、どんな声で話すんだろう、何が好きだろう、少しづつ楽しみが溜まっていく。
「…きりやんなんだか楽しそうだね」
「まぁ、どんな子かなって気になってさ」
「そっか」
そう話しながら、カーテンを捲ると、少年は布団の中で丸まっていた。
寝ているだろうか、と顔を覗き込むと、焦点の定まっていないアクアマリンと、酷い顔色に、はっはっ、と浅く短い呼吸。
体調が悪いのか、と思う隙がないほど辛そうだった。
この状況にはきんときも気づいていたみたいで、大急ぎで薬やら点滴やら袋やら水やらと準備をして、軽く声をかけながら、少年の背中に触れる。
びく、と体を揺らし、こちらを見る。
こちらを認識できているのかはわからないが、ゆる、と手を伸ばされる。
伸ばされた小さな手を優しく握り、安心させるように撫でる。
テキパキと処置をするきんときの横で、俺はただ不安に襲われながら見守ることしかなかった。
――――――――――――
処置が終わって、二十分ほど経った頃、きんときは近くの椅子に座ったまま眠っていて、かなり疲れていそうな顔をしていた。
原因は治療に使った薬と本人の体質の相性だった。
処置をされた少年はさっきよりは落ち着いていたが、まだ眠れないようで体調が悪そうだ。
「まだつらいかな?」
「…………ん、ぁ……?」
きんときを起こさないように優しく問うと、よくわからない顔をしながら、少し考えていた。
「………おなか、ぐちゃぐちゃになる……」
「……はきそう?」
「………ん、」
少し独特な言い回しに一瞬困ったが、おそらく、気持ち悪い、と言いたかったのだろう。
はきそう、といったので、袋を用意しつつ、吐瀉物を喉に詰まらせてしまわないように、体を起こし小さな背をゆっくりとさする。
「大丈夫だよ、ゆっくり息しようね」
「……っ、ぅぇ…」
「そうそう、上手だよもっかい、やってみよっか」
「…ん、ぃ…ぉ”ぇッ…!」
ガサガサと袋が音を立てる。
苦しそうに跳ねる背中を落ち着かせるようにしばらくさすっているとだんだん落ち着いたきたのか、手で口元を拭った。
流石にそのままでいさせるわけにもいかないので、手と口元をちゃんとタオルで拭き取り、軽くうがいをさせた。
「ちょっとは楽になったかな?」
「……ぅん、」
「そっか、よかった…」
あまり刺激しないように、頭を撫でると嬉しそうに笑った。別に身内や他人から傷つけられていたことはなかったようだ。俺が手を伸ばしても怖がらなかった。
Broooockはきんときが手当てをしようと手を伸ばしただけで怯えて隠れてしまったから。きっとこの子はひどい目にあっていないのだろう、目立った傷もなかったし。
「…………おにいさん、」
「なぁに?」
「………………ぼくが、さ…なんであそこにいたのかきかないの?」
「どうして?」
「……………………だってぼく、そとにいったらおかあさまにどうしてそとにいったのか、きかれたから」
「………みんなに、きかれるとおもって、た」
と、悲しそうに目線をそらす。
きんときが言っていた伝承が本当ならば、この子はきっとその遠いところにある国ってやつの王族の一人なんだろう。
そうでなきゃ、きっと外へ行った理由など問われないだろうし。
「…聞いてほしいの?」
「……………ゃだ」
「じゃぁ、俺は聞いたりしない、君が話したいと思ったときでいいんだよ。」
「………なかむ、ぼく、ちゃんとなまえあるよ」
「…!そっか、ごめんねなかむくん」
「………うん」
名前を復唱すれば、少しだけ嬉しそうにこく、と頷いた。
さっきまでよりも顔つきが明るくなったような感じもするし、少し楽しそうだ。
あまり声量は出していないがここまで誰かが横で話していても起きないあたり、きんときは相当疲れているらしい。そりゃまぁ…あんだけ血が苦手なあいつが摘出なんてしたら疲れるよな。
さすがにずっと椅子の上で寝かせておくのも翌日体がバキバキになりかねないと思って、起こさないようにそーっと、抱え上げる。ほんとこいつ軽いな。片手でカーテンをかき分けながらNakamuくんのすぐ横のベッドに寝かせて、布団をかける。あと、夜中悪夢とかで飛び起きたとき用に一番気に入ってるサメの抱き枕とペンギンのぬいぐるみ、まだ肌寒いから布団の上からブランケットをかけて、落っこちない程度に小さいぬいぐるみを近くにおいておいた。これで大丈夫、たぶん、きっと、うん。
そのまま俺はまたなかむくんの横に戻って、椅子に座り直す。
「……そろそろ寝ようか、眠いでしょ?」
「…うん、……ぁ、の…」
「なに?」
「なまえ…くん…つけずに、よんでほしい……です…」
「…わかった」
「…おにいさん、なま、え…」
「俺はきりやん、いつまでかはわからないけどこれからよろしくね」
「…うん」
「…それじゃ、また明日、おやすみ」
軽く声をかけて部屋をあとにしようとしたものの、服の袖をくいっと引っ張られて、振り返る。
「…?どうかした?」
「……ねるまで…いっしょがいい…」
「…じゃ、なかむが寝るまでここいるね」
すぐに椅子に座り直し、なかむが布団に入ったことを確認して、さっききんときがおいてくれていたペンギンのぬいぐるみをもたせると、ぎゅ、と抱え、ぬいぐるみを寝かしつけようとでもしているのか、布団の上からぽんぽん、と軽く叩いていた。可愛い。
なかむがぬいぐるみにやっていることと同じことをしてやると、やっぱり疲れていたのかうとうとし始めて、そのまま寝てしまった。
安心したような幼い寝顔。マジ可愛い。
起こさないように電気を消して部屋をあとにし、自分もベッドに入った。
――――――――――――
3日後、元気になったなかむは、早々にシャークんやBroooockといっしょに遊びまわっている。
部屋に関しては、俺と同じ部屋。一応二人部屋だし広すぎて持て余してたからちょうどいいなって話になった。
中庭を駆け回る3人(特になかむ)をきんときとスマイルが今まで以上に心配そうに見守っている姿はなかなかに面白い。
かく言う俺は、昼食の準備をしている。
子どもたちの遊び場にしている中庭は、メンバー共用の部屋からならどこからでもみえるようになっている。キッチン、談話室、医務室、あとは、念のためにって仮眠室からもみられる。談話室とキッチンは二階だけど、それ以外の部屋は中庭からそのまま中に入れるようになってる。子どもたちが何かあったときのために。
そもそもあんまり怪我がなかったから、復帰もはやいけどついこの前までずっと寝てたようなものだからか足取りがおぼつかない。
まぁでも、シャークんもBroooockもいるし、何かあったらきんときもスマイルもいるし、大丈夫だ、きっと。
彼らを信用していないわけではない、でもその一瞬に終わりのない不安に襲われる。
大丈夫、大丈夫、彼らなら、大丈夫、傷つけたりはしない、大丈夫、きっと、
決まりきったようなことを自分に言い聞かせる、いったん手を止めてゆっくり、刃物から遠ざかって、床に座る。
強い恐怖心と不安にかられて、どくどくと落ち着かない心臓を少しでも落ち着かせたくてゆっくり息を吸ってはいてみる。
少しだけ落ち着いてきた頃に、立ち上がろうとしたとき、かひゅ、と息を余分に吸った。
だんだん浅くなる呼吸をまた落ち着かせるため、結局座る。
どのくらい時間が経ったかはわからないが、かなり落ち着いた。
あまり自分を刺激しないように、ゆっくり立ち上がり、止めていた料理を再開する。
きんときが中庭では、子どもたちに水を飲ませていた。涼しいとはいえ水分補給は大切だからね。
お腹空かせてるだろうな、早く作ろう。
楽しそうに遊ぶ子どもたちを見ながら、料理を作る手を早めた。
次で最後です
コメント
2件
幼児化あんまり見たこと無かったけど良いっすね……可愛すぎます、、