ワトリーとポテトは、思わず振り向く。
そこには、冷たい目で見下ろすデイビスが立っていた。
ポテトは驚きながらも声を上げた。「あ、あなたが犯猫だな!」
デイビスは眉をひそめ、「何を言ってるんだ」と冷たく返す。
ワトリーは自信を持って言った。
「ここに証拠があるのだ!」証拠の入った袋を掲げると、デイビスの目が見開かれ、瞬時に怒りが顔を覆った。
「くそ!」デイビスは証拠を奪い取ろうと手を伸ばす。ポテトは慌てて袋を抱え、デイビスをかわした。
ワトリー「デイビスは格闘経験があるんだ。暴れたら手に負えない!」
ポテトが慌てて言う。「ど、どうしよう…!」
二匹は必死に警備室の中を逃げ回り、デイビスが苛立った声で叫んだ。
「くそっ!!お前ら、ちょこまかと動きやがって!」
ワトリーは息を切らしながらも冷静に問いかけた。
「デイビス、シオンは何も盗んでなんかいなかったのだ!」
デイビスは怒りに駆られ、ワトリーに向かって怒鳴り返した。
「なんだと!俺はシオンがドラッグを盗んで逃げるのをこの目で見たんだ!」
ワトリー「だからって殺さなくてもいいのだ!」
デイビス「違う、脅しただけさ。でも、シオンが暴れやがったんだ…!」
――その日、シオンの楽屋――
デイビスは重そうな工具箱を抱えて楽屋に入ると、床に静かに置いた。
中身を確認するように蓋を開けたが、その様子を見たシオンが後ろから声をかけた。
「えっと、水漏れでもしているんですか?」
その言葉に答えることなく、デイビスは工具箱の中からアイスピックを取り出し、シオンに向けて突きつけた。
「!!」
シオンの表情が一瞬にして凍りついた。
「おっと、声を出すなよ」
デイビスは素早くシオンの背後に回り込み、その細い右腕を掴んで後ろ手に締め上げた。
「な、なんでこんなことを…?」シオンの声は震えていた。
「なんでだって?それはあんたが一番よく知ってるはずだろう」
「どういう意味?」
「忘れたのか?あの日のことを。俺はちゃんと見ていたんだ――お前がドラッグを盗むところをな」
「そ、そんな…知らない!私じゃない!」
「白を切る気か?お前、どこに隠した?」
「本当に知らないわ!」
デイビスの顔が歪んだ怒りで赤く染まった。
「いいぜ、そんなにとぼけるなら…。お前の子供に聞いてみようか?」
「!!」シオンの体が硬直する。
「ど、どうしてそれを…」
デイビスは不敵な笑みを浮かべた。
「調べはついてるんだよ。リックの子供だろ?」
その瞬間、シオンの表情が一瞬で凍りついた。目の前が真っ暗になったような気がした。
リックとの関係が知られたのだろうか?子供のことを知っているとしたら、全てが危険にさらされる…。
「だめ…子供に手を出さないで!」
その言葉にデイビスは目を細めた。
「おいおい、子供が何か知ってるってのか?」
「何も知らないわ!何も知らないって言ってるでしょう!!」
シオンの声は必死だった。しかし、
その必死さがデイビスの疑念をさらに煽った。彼はシオンの腕をさらに力強く締め上げた。
「どこに隠したか、言え!」
「やめて…本当に知らない…お願い、信じて…!」
シオンの瞳には恐怖と痛み、そして必死に守りたいものへの思いが滲んでいた。
しかし、デイビスの冷酷な視線は揺らがなかった――。
シオン「どうしてこんなことをするの?リックはもう死んでいるのよ!」
デイビス「そうだな…死んださ。でもあんたが殺したんだろう!」
シオン「私が…殺した?そんな馬鹿なこと…」
デイビス「とぼけるな!あんたがデビューしたって聞いたときは耳を疑ったぜ。
猫を殺しておいて、平気な顔でステージに立つなんてな!
しかも俺たちの稼ぎまで盗みやがって…お前なんか絶対に許さない!」
シオンは突然の非難に混乱していた。リックを殺した?盗み?何を言っているのかわからなかった。
しかし、この危険な状況を切り抜けなければならないと直感した。
自分だけでなく、愛する子供やリックを知っているサリーにも危害が及ぶかもしれないと感じたのだ。
「違う、そんなことするはずがない…!」と必死に訴えながら、
シオンは全身の力を振り絞り、デイビスの手から逃れようともがいた。
「くそ、暴れるな!」
シオンの口を強引に押さえつけた。
――ゴキッ!――
鈍い音が楽屋に響き渡る。シオンの腕の関節が外れた音だった。
「うぅっ…!」シオンは痛みに顔を歪め、声にならない呻きを漏らした。
「言うんだ!」デイビスの声は冷酷だった。
だが、シオンは苦しみながらも首を横に振った。
「このメス猫が!!」
その態度に怒りが頂点に達したデイビスは、持っていたアイスピックを握りしめ、シオンの右胸に突き刺した。
「――!!」
アイスピックが胸を貫いた瞬間、痛みと共に冷たい鉄が肌に食い込む感覚が、シオンの全身を震わせた。
鮮血が胸元から溢れ出し、シオンの視界がかすんでいく。
デイビスは血に染まる手元を見て、舌打ちをした。
「くそっ…!お前が悪いんだからな!」
その場にいられなくなったデイビスは、楽屋を後にし、警備室へと急いだ。
警備室に戻ると、デイビスは手早く計画を進めた。レインコートと血のついた凶器を共に隠す。
そして自分が逃げるための準備を整えている最中、防犯カメラの映像に目を向けた。
そこにはエイミーが映っていた――彼女がシオンの楽屋に入る姿が、しっかりと記録されている。
「ほう…面白い展開になってきたな。」
デイビスはにやりと笑い、防犯カメラの映像をじっくりと見つめた。
数分後、映像には楽屋から慌てて出てくるエイミーの姿が映し出された。
エイミーは警備室のドアを勢いよく開け
「警備員さん、大変です! シオンが!」
振り返ると、息を切らせたエイミーがそこに立っていた。
「どうしたんだい?」とデイビスは平静を装う。
エイミーの顔は蒼白だった。
「血を流して倒れているの! すぐ救急車を呼んでください!」
「わかった。君はどうするんだ?」
「私は…とにかく救急車を! それと…シオンに頼まれたことがあるのですぐ行かないと!」
「そうか」といいながらデイビスは裏口の扉のロックを外した。
「落ち着いて、すぐに呼ぶから。」
「お願い、早く!」
エイミーはそれだけ言うと、急ぎ足でその場を立ち去った。
ドアが閉まる音を聞きながら、デイビスは低く笑みを漏らす。
「ありがとうエイミー」
エイミーがシオンを殺害し、逃げたように仕立て上げる。
そのための証拠を作るのは、デイビスにとって容易いことだった。
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