テラーノベル
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「今、ドイツ首相夫婦が降りてきましたーー」
記者から倒れるほどのフラッシュを浴びせられ、日本とドイツ同士は握手を交わし合う。
テレビの目の前を灰原が通った。
「あっ!」という記者の声にコナンは音をあげる。
「外務事務次官のハインツ氏です、本日も真っ青なスーツを着ています」
美しいですーーと記者は素直に言う。
コト、と置かれた珈琲に「サンキュ」とは言うがテレビから目を離さない。
「嫌よね」と灰原は阿笠を見る。「女って、こういうことしちゃうんだもの」はら、と髪を後ろにやる。「自分でもわからないから」阿笠は渡されたカップを首をかしげて口にした。
「本日は18時から首相官邸で会合ののち、ハインツ氏のみは迎賓館でパーティーがあります……」
移動車にはおびただしい警護がついている。
「えー」記者は手元のバインダーを見た。
「ハインツ氏は……ええ、と」と言いにくそうにする。「ハインツ氏は……首相の側近であるボーデン氏より【外交力】があると国内世論も認めており……今回は来日に至ります……」
「国捕りをしたいだけよ」と灰原は言う。「ただの不倫相手でおさまる気はないわよ、あの女…」腕を組み、はーっ、と深く息を吐く。
コナンは考えるしぐさをした。
安室さんがメディアに見える位置にいるわけはないから、いるとしたら「迎賓館かーー」何をするんだ、安室さん。
ドイツが今来日する理由……「戦争の支援か……」たしかハインツ氏はロシアの血が入っていたはず。ロシアは今領土問題で揉めている……。
ぶつぶつ言うコナンに、灰原は肩をすくめた。
「始まった」
降谷は目の前に立つ風見を見るし、風見も見た。
「…男前じゃないか」
「…小さい気がするんですけど」と風見は黒い蝶ネクタイに指を入れた。
「着なれてないだけだ」とんとん、と胸元を叩く。
「あら」スミスは立ち上がる。男2人どころか捜査員もざわついたのがわかる。
「いいじゃない」
真っ赤な口紅と、同じ色のドレス、マニキュア。惜しげもない曲線。紙のように白い肌では、まるでーー「あぁ、花には花で対抗ってわけか……」まるで目の前で咲き誇る1輪の薔薇だ。
「ねぇ?」とスミスは風見に言う。
「きれい?」ちら、と降谷が風見を見る。「あぁ、もう。魔法にでもかけてあげないと無理そう、そんなからだに力を入れないで。だんな様。見てわかるほどだわ」
する、とスミスは風見に腕をまわす。
「聞いて…」と耳元で囁く。「あなたは男で……とても強い…」
力がある……。とスミスは力強く囁く。口紅がつくほどそばで。
降谷はぐる、と目をまわし、捜査員を手で押すしぐさをした。捜査員は慌てて出ていく。
「ーー」口を開こうとした風見に「しー…」とスミス。くる、と後ろにまわり、反対の耳元で言う。
「弱い男は踏みつけて……どんどん先に行き頂点に立つーーあなたの思うままに……世界が……世界からあなたを求めてやってくる……」
ふさ、とスミスの碧い髪が肩に落ちる。
「私たち女は……あなたを……どんな目で見る?そしてあなたは…皆が要望の目を向ける中で…どんなふうに振る舞ってるの…?風見……」
はっ、と風見は1度息を吐いた。
目の前にスミスが来て、肩から腕まで撫で下ろす。ふっ、と笑う朱を風見は見た。
「栄光なら欲しいだけ…ありあまるほど……あなたは絶対的な…」
勝者なのよ……。
明らかにからだの感覚が違うのが風見にはわかって、スミスを見た。
足元がしっかり地に着いているし、肩の力は抜けて胸元が広く息がしやすい。背筋が上から引っ張られているように、背骨の存在を感じる。
「何…した……?」
スミスは肩をすくめる。「魔法にかけたのよ」と。
ただ、男のプライドを思い出させただけだがーー風見みたいに、まるで虐げられているような男にはすごく効く。
これは降谷にやると調子に乗るだけだから絶対にしない。
「ーーそれじゃあ」と降谷。す、と拳を出す。同じように素直にした風見に少し降谷は驚きながら、スミスも同じようにした。
「手強いぞ」
「わかっています」
「大丈夫」スミスはいつものこと、と言いたげだ。
「最高にセクシーで…」
「クレバー」
「必ず」と3人は拳を離しパラパラと指を動かす。
「「「成功させるーー」」」
行くぞ。という降谷に、2人は力強く1歩踏み出した。
コメント
2件
ありがとうございます!
読ませていただきました!第23話、すごく好きな回でした。特にスミスが風見にかける“魔法”、あれはただの演出じゃなくて、男のプライドを思い出させるって心理描写が絶妙だなと。風見が変わっていく空気感がしっかり伝わってきて、ドキドキしながら読みました。灰原とコナンの会話もスパイスになってて、大人の事情と子供の視点が交差する感じがまたいいですね。今後の安室さんの動きも気になります…!
#風見裕也
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