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藤塚 太陽
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五木友人
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耀聖(ようせい)
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「未来(みらい)ー! お客さん来てるわよ、挨拶しなさい!」
階下から母親の呼ぶ声が聞こえる。
当時、小学四年生だった彼方未来は、自室のベッドの上で膝を抱えて丸まっていた。
「……む、無理……人がたくさんいる……怖い……」
未来は極度のコミュ障だった。
近所のおばさんに「こんにちは」と言うだけで心臓が口から飛び出そうになり、授業で音読を指名されれば声が震えてパニックになる。教室の隅で気配を消し、誰とも目を出合わさずに生きることだけが彼の人生のテーマだった。
そんな未来にも、幼馴染の空斗(そらと)という唯一気軽に話せる友人がいた。
ある日、放課後の空斗の家で、ふたりでオンライン対戦ゲームをやっていたときのことだ。
「なぁ未来、ボイスチャット入れろよ。指示出しにくいだろ」
「え……ボイチャ……? ぼ、僕の声、ヘンだったらどうしよう……」
「いいから入れろって! 敵が裏回ってんだよ!」
焦った未来は、震える手でマイクのスイッチを入れた。
そして、画面の向こうの空斗に向かって、パニックになりながら必死に叫んだ。
「あ、あの! 右から……右から敵が来てます! 逃げてください……っ!」
『…………』
ゲームの画面内で、空斗の操作するキャラクターがぴたりと動きを止めた。
ヘッドセットの向こうから、恐ろしいほどの沈黙が流れる。
「……空斗? 聞こえてる……? ごめん、やっぱり変な声だったよね……僕、マイク切るね……」
『待て待て待て待て!!!』
爆音で空斗の叫び声が響いた。
『お前、今の声なに!? 誰!? どこから出してんのそれ!?』
「えっ!? ご、ごめんなさい! 普通に喋っただけ——」
『ヤバすぎるだろ!! なんだその、耳に直接低音が響いて脳がバグるみたいなイケボ!! 声優かお前!? 映画の吹き替えか!?』
未来の体質。
それは、**「息を吸って喋るだけで、全世界の人間を平伏させるレベルの超絶極上低音ハスキーイケボが出てしまう」**という、神様の最大の悪ふざけだった。
だが、その神様の贈り物は、極度のコミュ障である未来にとって「呪い」でしかなかった。
中学校に上がると、その声のせいで余計に目立ってしまうようになった。
音読をすれば女子たちが「やば……声良すぎ……」とざわつき、学級委員決めでは「声が通るから」という理不尽な理由で推薦されかけ、挨拶をしただけで「イケメンぶってる」と見知らぬ先輩に目を付けられた。
目立ちたくない。静かに生きたい。
それなのに、口を開けば「声の破壊力」のせいで周囲が大騒ぎになる。
「……もう、喋りたくない……」
未来はどんどん口を閉ざすようになった。
喋らなければ、傷つかない。喋らなければ、誰にも注目されない。
高校を卒業する頃には、未来は見事な「ゴミカスメンタルの引きこもり無職」へと完成されていた。
それから数年後。
20歳を過ぎ、自室の暗闇の中でパソコンのモニターを眺めていた未来は、ひとつの求人募集(?)の画面に目を留めた。
【VTuber事務所「ルミナスプロ」新人オーディション開催!】
人と話すのが苦手なあなたも、バーチャルの世界で新しい自分になってみませんか?
在宅OK! 顔出し不要! 喋るだけで月収◯◯万円も夢じゃない!
「……VTuber……?」
画面を見つめながら、未来はゴクリと唾を呑み込んだ。
「顔出しもしなくていいし、家から出なくていい……。喋るのだって、画面の向こうの知らない人相手なら……それに『バ美肉』とか『可愛いアバター』なら、僕のこのボソボソした暗い声も、可愛い声を作る練習をすればバレないかも……?」
働きたくない。でも、このまま無職でいるのも限界だ。
「VTuberなら自分でもやれそう」という、人生最大級の勘違いをした未来は、震える指で応募ボタンをクリックした。
——これが。
後にインターネットの海を大炎上と大爆笑で包み込む、「伝説の天使(中身は地声事故を起こすゴミカスメンタル)」が誕生した瞬間であった。
コメント
1件
読み終えたわ! 「イケボすぎてコミュ障」って斬新すぎる設定だし、空斗にボイチャ入れた瞬間の「待て待て待て!!!」は笑ったわ😂 ゴミカスメンタルになった理由も納得だし、VTuberで化ける可能性感じまくり。続き読みたい🔥