太中
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あれから、彼は金木犀の木の下には来ませんでした
彼が居なくなった次の日に雨が降り、彼の様に金木犀の小さな花は去っていってしまいました
当時、十八だった私の初めての別れでした
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私は四年後、彼と会いました
金木犀が咲き誇る綺麗な洒落た公園でした
君は矢張り金木犀の下に居て、 深緋色の着物を身に着けていました
彼にとても似合っていました
私は思わず声を掛けました
君は声を掛けられるまで、私に気付いていなかったので、一寸ばかり驚いていました
公園の腰掛けに二人並んで座って、暫く談話しました
其れから、話が尽きてきた頃、彼は煙草を吹かした
君は蒼い透き徹るような空を見ていました
其の眼に映る蒼さは空に反射して見えるのか其れとも、彼そのものの蒼さなのか
其の空き抜けるような蒼さに私は見惚れました
私達の周りには、常にきつすぎるように甘い香りが漂います
其のせいか、ここが痛いのです
何時までも甘く痛むのです
ですが、嫌な痛みでは無かったのです
その痛みから感情がとれるような、そんな気がします
そして私は腰掛けから立ち上がり、地面に落ちている金木犀を手にすくい、彼のもとへと持ってゆきました
そしてまた彼に金木犀をあげたのです
其の時の表情は良く覚えています
一寸表情が固まって、一寸俯いて、其れから直ぐに花を受け取って微笑みました
其れから礼を云う君の姿はちっとも変わってなくて、懐かしいと云うのか、とても愛らしく思えたのです
君は懐から瓶を取り出しました
其れから、其れを手の平に乗せて私に見せました
硝子瓶の中には、あの時あげた金木犀が残っていました
色はすっかり抜けて、小さく縮んでしまっていましたが、其れよりもこの瓶を大事にとって置いてくれたのが嬉しくて、思わず小さな君を潰れる程、抱き締めてしまいました
其の出来事の後、私達は文通でお話ししていました
偶にお互い空いている時間を見つけては、会ったりしていました
其の時間が愛おしい程に幸せでした
ですが、そんな幸せな時間はそう永くありませんのでした
–✄—-✄—-✄—-✄—-✄—-✄—-✄—-✄-お疲れ様でした
ヨミさんが毎回暖かいコメントを残してくれて、心から暖かくなります
改めて、何時もコメントありがとうございます
大好きです
最後まで見て頂きありがとうございました
コメント
1件
あ〜...甘々すぎてこっちまで溶けそう...中也が抱きしめられた瞬間めちゃくちゃ喜んで、めっちゃ心の中で叫んで読んでたら最後の言葉でやられました、有難うございます....(??) 最後の言葉気になり過ぎます....続きが本当に楽しみすぎます...!!!頑張ってください!! 大好きってとこでトドメ食らいました...感謝してくれるだけでも嬉しさで死にかけてたのに...私も昴さん大好きです...!!