「あの日消えた君。」
_解けない謎
部活が終わり、いつも一緒のダチを置いて
着いたのは古錆びたマンション。
思ってた以上に汚いな。
タン、タン、タン…と階段を1歩登る度響く音。
『2階の1番奥』
ここか。
ピーンポーン
黄「はーい……え、っと…」
青「あ、初めまして」
黄「あはい初めまして…」
青「苺私立高校の青木ころんです」
黄「…はい、?」
青「黄山るぅとさんですか?」
黄「、そうですけど…」
青「…るぅとさんの兄についてお話をお聞きしたくて」
黄「……兄なんていませんよ」
青「そう、ですか…」
そう来たか
青「では赤瀬莉犬くんについてお聞きしたくて」
黄「…っ」
黄「………」
明らかに動揺しているのが分かる。
家に入れるか、知らないフリをするか、
まぁ迷っている事には間違いないだろう。
急に家に来た知らない先輩に失踪した兄の事を教えろ、なんて言われて
黄「…中へどうぞ、」
青「え、いいの?」
黄「……どうぞ」
青「教えてほしい」
黄「……」
長い沈黙が続く
どう話を切り出そうか。
青「…僕さ、赤瀬くんと関わりないんだよね」
黄「…え、」
青「呼び方も苗字呼びだし、多分しっかり喋ったの席替えで席が隣になった時くらいだし、笑」
黄「……そうなんですね」
掴めないな。この人。
本当に彼の事を知っているのだろうか。
聞きたいことは山ほどあるが、一気に聞いたらきっと何一つ答えてくれない。
青「…赤瀬くんが消えたって聞いて、みんな『可哀想』って言ってたんだ」
黄「……」
青「でも可哀想なのは、その赤瀬くんじゃないと思って」
黄「…、?」
青「赤瀬くんって誘拐事件に巻き込まれたって言われてるじゃん?」
黄「……そうなんですね」
知らなかったのか。
…、いや知ってるはずだ。
演技か。
青「誘拐事件に巻き込まれた赤瀬くんが可哀想なんじゃなくって、知らないのに勝手に可哀想って思われてる赤瀬くん、が可哀想なんだと思うんだよね」
黄「……そうかもしれませんね」
青「でもさ、僕、そんな赤瀬くんに『可哀想』って思っちゃったんだよね」
黄「……」
青「だから、赤瀬くんの事を知ろうって思ったの」
青「沢山知って、誰よりも赤瀬くんのことを知ってから可哀想って思おうって」
黄「…そうですか、笑」
そう言った彼は、少し疲れたように微笑む。
やはり掴めない。
分からない。
目の前にバリアを張られてるような、でもどこか隙があるような
そんな距離を感じる。
青「……」
青「…言葉を選ばずに言っちゃうね」
青「なんで2人は苗字が違うの?」
いつも通り学校が終わり、生徒会の仕事も終え、家へ帰った。
古びた階段を1歩、また1歩と登る。
早くこんなマンションから引っ越したいなと思う反面、離れてしまうのは少し、いやかなり悲しい。
いつものように鞄の左側に入れた鍵を手馴れた手つきで取り出す。
ガチャ
ドアを開けるにしては大きく音を立てて空いたドア。
黄「ただいま〜、」
なんて言っても、もう帰ってくることはない。
いや、分からない。
もしかしたら……
なんて今の状況からは難しい想像をした。
今日はオムライスにしようか。
グリンピース少しだけ入れちゃおうかな笑
黄「……あ、」
まただ。
また。
やっぱり、
何をするにも僕の頭の中には莉犬がいて。
どうしても、僕には忘れられなくて。
僕はきっと、お兄ちゃんに依存していたのだろう。
黄「………ッ、」
『お兄ちゃん』
そう呼ぶ時は、もう来ないのだろうか。
ピーンポーン
インターホンがなり部屋に小さく響く
隣の叔母さんかな、と軽くドアを開けると、綺麗に染った青い髪の毛の美青年。
誰だろう
なんて何となくわかっているのにね。
きっとこの人もお兄ちゃんと同じ高校の高校生だろう。
青「苺私立高校の青木ころんです」
黄「…はい、?」
まって思ってたより声がガサガサなんだけど
これギャップレベルじゃなくない?
…じゃなくて
青「黄山るぅとさんですか?」
黄「、そうですけど…」
そう言うと彼は僕の思ってた通りのことを聞いてきた。
やっぱりそうだよね。
僕はわざと明らかに嫌そうな態度をとった
…が彼は気づいてないのか
はたまた無視しているのか
どちらにせよ引き下がる気はないらしい
黄「…中へどうぞ、」
青「え、いいの?」
黄「……どうぞ」
入れてしまった
でもそう簡単には話すまいと僕は口を噤んだ。
青「…僕さ、赤瀬くんと関わりないんだよね」
黄「…え、」
青「呼び方も苗字呼びだし、多分しっかり喋ったの席替えで席が隣になった時くらいだし、笑」
黄「……そうなんですね」
お兄ちゃんの友達じゃないんだ
なんかちょっと興味深いかも
なんだか深い話をされて、次は君の番と言うようにこちらを見てくる。
だが、その期待の眼差しには答えられない。
長い沈黙を破ったのは彼。
青「……」
青「…言葉を選ばずに言っちゃうね」
青「なんで2人は苗字が違うの?」
息が詰まった。
いや、傷ついた、の方が正しいのだろうか。
やはり直接言われるとこんなにも刺さるのか。
黄「………、」
言うつもりなんて一切なかった。
僕とは関係の無い人達で話したってどうでもいいのに、
いや、僕とは関係の無い人だからこそ、話さなかった。
この人は僕とは初めましてで、お兄ちゃんの親しい友達でもなかった。
尋ねてきたお兄ちゃんの友達よりももっと僕達には遠い存在。
黄「……お兄ちゃんは、」
ただ、少しだけ、ほんの少しだけ、
期待したかったんだ。
小学五年生の頃。
交通事故で両親を失い、将来が見えなくなった。
ふらふらと道を歩いていると、明るく心地いい声が聞こえた。
赤「ねぇねぇっ!どうしたの?」
黄「……帰る家がなくて」
正確に言えば、帰る家はある。
が、温もりがない、と言えば良いのか。
赤「んー、じゃあさ、俺と同居してくんない?」
黄「…へ、?」
赤「あーお金、…あんまないからさ、ボロいとこしか住めないかも!」
意味がわからない。
まず誰なんだ。この人は。
赤「あ!不審者じゃないよ!?」
赤「ほら!!」
と、手に何も持っていないと示した。
いやなんで手ぶら…
逆に何か持っていてくれていた方がよかったんだけど
黄「同居…っていうのは、」
赤「そんなに堅くならなくていいからさ!」
赤「あ!俺、赤瀬莉犬!」
赤「好きなように呼んでね〜!!」
黄「…黄山るぅとです…」
赤「るぅちゃんね!いい名前、笑」
黄「っ、」
今思えば、僕はふわっと微笑んだ彼に一目惚れしたのだろう。
不審者かもしれない、よく分からない人なのに着いて行ってしまった。
お兄ちゃんと過ごす日々は、面白味が無くて、でも楽しくて特別だった。
お金に余裕はなかったけど、お金では買えない素敵な日々だった。
僕が賞をもらった度すごく褒めてくれて、テストがいい点でも、悪い点でも褒めてくれた。
学校であった事だって、相槌を打ちながらにこにこしながら、でも真剣に聞いてくれた。
悩みだって、嬉しい事、悲しい事、悔しい事だってなんでも聞いてくれた。
かけがえのない日々だった。
青「………え、それだけ?」
黄「……それだけです」
そんな中ある日突然、赤瀬莉犬は消えたと言う。
話し終わった彼をじっと見つめる。
隠してる訳ではなさそう?
……まじか、何もねぇよかよ、
黄「…面白くない話ですみませんね」
青「いや!違う違う!!全然素敵な話だった!」
青「ほら涙止まんないよ…ッ(涙声)」
黄「…」
青「いやその目やめて?!」
まあ、今後にも繋がりそうだし、聞いてよかった……かな。
青「…話してくれてありがとね」
黄「……もう遅いので早く帰ってください!」
青「えぇ?」
黄「ほら言った言った!」
青「…おじゃましましたぁ、」
黄「二度と来なくていいですからねっ!」
青「なにコイツ!態度悪!!」
青「二度と来ねぇし!!!」
なんて男子学生らしい会話をしている気がする。
こんな弟がいた赤瀬くんも大変だこりゃあ。
青「…………いやまって、大切な事聞き忘れてた?!!!」
__To be continued.
♡~200
なんだかデジャブですね
書いてて展開分からなくなってきた
分からない部分等ありましたらすみません💧
コメント
2件
素敵なお話過ぎて見入っちゃいました…続きが楽しみです🥹🫶🏻 ブクマ失礼します!