大森サイド
家の街灯やネオンカラーの看板が眩しい。
泣きながら見た街の景色は霧がかかって、歪んでいる。
脱水でくらくらしてきた。
そういえば涼ちゃんから作って貰ったココアを口にしたきり、何も口にしていない。
「涼、ちゃぁっ…」
振り払ってしまった手の温もりを今更ながら思い出す。
どんな時でも、優しく抱きしめてくれた涼ちゃん。
我儘も泣き言も全部受け止めてくれた涼ちゃん。
俺のために、行為もハグもキスもなんでも受け入れてくれた涼ちゃん。
暗い夜道、涼ちゃんの顔を思いうかべる。
脱水でクラクラしながら、目の前もまともに見えないまま俺の家へ向かう。
涼ちゃんの優しい笑顔を思い浮かべながら。
俺の家の鍵は空いていた。
家に入るといつもの匂いがする。
家に帰ってきた安堵感で、玄関に座り込む。
耳の奥で心臓の音が大きく聞こえて、手足が痺れてきた。
今すぐ何かを飲まないといけないのに、動けない。
座っている気力も無くなって、玄関に倒れ込んだ。
「もときっ、?」
「りょ、ちゃ…」
歪んでくる視界の中で、涼ちゃんの優しいシルエットが映る。
涼ちゃんに担がれる感覚。
そして、口の中にしょっぱい味が広がった。
「…あり、がと」
掠れる声で塩水を飲ませてくれた涼ちゃんにお礼を言う。
涼ちゃんはマグカップを置いて俺の方を見た。
「脱水、なっちゃったんだ」
「ごめん…」
「いいんだよ、でも、元貴、帰ってきたんだ」
涼ちゃんの目は黒くて、
部屋の空気は冷たくて。
「元貴、もう、…帰ってこないのかと思ってた」
「…なんで、」
「だって、元貴は、大好きな人と、結ばれて…」
「ちがっ、涼ちゃん、ちがったのっ」
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