テラーノベル
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「あぁ〜、……まじでさぁ……、めっちゃ躾け甲斐あるわ♡」
そう言い、手首を拘束していたベルトを力任せに引っ張った若井の目は本気で、見ているこっちさえも怖くなるくらいだ。何故こっちの世界に霧矢が居るのかは良く分からないが、とりあえず不憫だと言うことは言える。
「…っと、……」
脇腹も痛むし、何より口の中に不快感が残っている。あれだけ殺される1歩手前まで追い詰められれば、水くらいは飲みたくなるだろう。そう思い、怠い手足に力を込め立ち上がった時、突然誰かの大声が響いた。
「、!い、行かないで!!!……ください、」
思わず声の主に振り向く。その声は酷く怯えを含んでいて、今にでも泣き出しそうだった。
「え、…もしかして俺に言ってるそれ?」
その問いかけにこくりと頷いた人物。それは、若井の下で組み敷かれている霧矢からだった。助けてください、と言わんばかりの瞳を向けられ、少し困惑してしまう。恐らく、この状況で若井と2人にされるのはまずいと悟ったんだろう。まあ、こんな獣みたいな男と放置されたら何が起こるか分からない。懸命な判断だ。
「あー……でもさ、涼ちゃん…、じゃなくて、えーっと…霧矢君?君が悪いんじゃない?」
俺の言葉を聞いた瞬間、彼の目に映る色が絶望に変わったのが分かった。涼ちゃんに似ているとはいえ別人だ、と一線を引いていたけれど、意外と面白いかもしれない。少しだけ遊ばせてもらおう。
「だってさぁ……、」
地べたに這いつくばったままの霧矢に近付き、顔を覗き込むようにしゃがみこんだ。そして、片手で彼の頬を掴み、無理やり目線を合わさせる。さっきは腹を手加減なしで蹴られたんだ。この位は甘いものだろう。
「ここ、俺らの敷地だから。」
小馬鹿にするように、ガオーとライオンの鳴き真似をして見せる。彼の表情が分かりやすく歪んだのが分かった。同時に、その瞳に揺れる恐怖心。最初の、獲物を狙うハンターのような目つきではなく、まるでライオンに狙われた子うさぎのようだった。
「…敷地って、…あんた達が俺のこと誘拐したんじゃないんすか!?!?そんなん言われても意味分かんないっすよ!!!」
いつもの涼ちゃんだったらこんなに吠えないのになぁ…、と思いながらも彼の喚きに耳を傾ける。
「俺ら別に誘拐してないから。さっき言ってた奴らの名前とかもよくわかんねーし。」
痺れを切らした若井がそう言いながら、霧矢のズボンに手をかけ始めた。彼に浮かぶ焦りが更に加速したのが分かる。頬に触れていた手を放そうとした時、右手に鋭い痛みと熱さが走った。
「…っっ、いった…………、」
反射的に手を離し、反対の手で痛む箇所を庇う。どうやら油断していた所を噛まれたようだ。手の側面にはハッキリと歯型が残っており、本気の力で噛まれている。
「…は、…ライオンになんて屈しないっすよ〜。あんた達が合六さんからの回し者じゃないなら、もうじき冬橋さんが来るはずっす。俺にはGPSが付いてますから!」
僅かに口角を上げながら話し出す彼を見てて、ひとつ疑問が浮かび上がった。そのGPSとやらは体に埋め込まれてたりしているのだろうか。何だか犬みたいだ、と思い、素直に質問を投げかけてみる。
「なんかそれって身体に埋め込まれてる系?裏組織ってやっぱそんなえげつないことまですんの?」
「身体……、…あ、…!!!スマホ!!!」
俺の言葉を聞くやいなや、慌て始めた彼の姿に首を傾げる。しきりに、”スマホ”という単語を呟き、首元には僅かに汗が伝っていた。
「っあ〜…、……やらかしたぁ…スマホ無いの完全に忘れてたっす…、」
ぺたりと床に体重を預け、片頬をフローリングに付けたまま深くため息をつく彼が何故だか愛おしく見え、思わず髪に触れる。
「さっきからずっと”冬橋”って奴の名前出してるけど、そんな好きなの?あ、もしかして恋人とか〜?」
金色の髪に指先を通しながら、そう問いてみる。冗談交じりに聞いたつもりだったが、暫くの沈黙の後、続いた言葉は酷く重さを感じるものだった。
「……冬橋さんとは恋人なんかじゃないっす。俺の大切なバディに勝手なこと言わないで貰えますか。」
俺の手を邪魔そうに頭を上げ、しっかりとこちらを見つめて発された言葉に温度は感じなかった。ちゃんと芯がある辺り、涼ちゃんに似ているかもしれない。そんなことを考え、思わず口角が上がってしまう。
「じゃあさ、今フリーってことでしょ。何しても良いって事だよね?」
その若井の言葉の後に続くよう、俺に視線を向けていた霧矢の身体がくるりと回転する。
「あーあ、…若井に気に入られるとか可哀想。」
楽しそうな笑みを隠すことをせずに霧矢の服を脱がす若井に目を向け、「嫌だ、……」と泣きそうな顔を浮かべる彼に哀れみを含んだ眼差しを向ける。
「なんでそんな他人事なの?元貴もやるっしょ?」
「あー…………、」
俺と会話をしながらも、器用に霧矢のジャケットの前を開け、服をはだけさせる若井の手元をじっ、と観察する。やっぱり涼ちゃんに似て身体のラインは綺麗で、十分な色気がある。「どうしようかな〜…」と建前だけのセリフを零しながら、霧矢の表情を見やる。必死に首を横に振っており、目には薄く涙の膜が張られている。それがより俺の中の欲を掻き立てた。
「じゃあ俺も……」
いただきます♡
💙
「っ、!!やめ、ろ!!!きもちわる、っ゛あ゛ッ♡♡」
「あーあ、ほら。あんま力入れると痛くなるって。」
気持ち悪い、なんて言いながらも彼のそれは嫌ってほど反応している。素直な所も涼ちゃんそっくりだな〜なんてニヤニヤが止まらない。
「く、っそ!!!触んなぁ゛、ッ♡♡」
そんな彼のセリフを無視しながら、どんどんと彼の中に指を押し進める。1本だけでもこんなに余裕がないのに、2本入れたら一体どうなるんだろうか。未だ暴言を吐き続ける彼を黙らせる為に、上手く動きずらい中で、関節を曲げてみる。彼の良いところを探るよう、ゆっくりと優しく愛撫してみれば、段々と甘い声に変わってきた。
「あ゛ッ♡♡、ぐ…、ッ…」
一際大きな声が上がったのにも関わらず、その後に続く声は何故かくぐもっていた。疑問に顔を上げると、そこには必死に唇を噛み締め、声を抑える霧矢の姿があった。お前には屈しない、なんて瞳で睨みつけている癖に、頬は紅く染まり、瞳は扇情的に潤んでいる。その可愛らしい唇に、空いていた片方の手の指先を添え、優しく撫でてみる。
「いいよ、噛んでみて?」
わざとらしく首を傾げ、促してみる。だが彼もそこまで馬鹿ではないみたいだ。じっ、と俺の様子を見ながらも噛む仕草をすることはない。噛んだ瞬間に指を激しく動かしてやろうと思ったのに。固く閉じられたままの口元に小さく舌打ちを零し、無理やり3本目の指をねじ込む。彼の眉間に浮かぶ皺がより深まったのが分かった。
「ねーもう良くない?」
横で胡座をかき、隣でことを見守っていた元貴が声を上げた。どうやら痺れを切らしたらしい。
「てかさ、これめっちゃ腕痛くない?ベルトの金具とか床に押されて腕くい込みそうじゃん。」
元貴が指さした先に目を向ける。確かに彼の背中側にある腕は圧迫されていて、想像してみれば痛いことは確かだった。
「あー、…じゃあ体制とかも変えずらいし1回外すか。また前側で付ければいいし。一旦元貴腕持ってて」
彼の腕の拘束を解くため、1度指を抜く。濡れたままの指先をどうするか迷い辺りを見渡してみると、丁度霧矢と目線があった。
「これ舐めたら腕解いてやるよ。」
片手で彼の頬を掴み、口元に指を近付けた。最初こそは嫌そうに表情を歪めていたが、「腕を解く」という単語に反応を示し、控えめに口を開けた。
「……もっと口開けろよ。そんなんで入るわけねーじゃん。」
僅かに開かれた唇に無理やり指をねじ込み、彼が苦しそうに身を捩らすのも無視し、執拗に口内を掻き乱す。
「ッ゛ぅ゛……ぁ…う゛ッ…」
彼の瞳からは、苦しさから来ているであろう涙が流れ、ゆっくりと頬を伝う。口周りも液体で汚れ、最初の威勢の良さは全くと言っていい程ない。
「あーあ、なんかさっきより汚れちゃったかも。ま、いーや。はい、後ろ向いてー。」
唾液に塗れた指を抜き、服で雑に拭う。苦しそうに咳き込む霧矢を一瞥し、身体を回転させた。
キツく縛られたベルトを外す。顕になった手首にはくっきりと内出血の後が残っており、見ていて酷く痛々しい。まあ、やったのは俺だけど。
「あ、やっべ。元貴、これパス」
ベルトを外した時、拘束するように作っていたふたつの輪っかの形が崩れてしまった。雑な手つきで霧矢をまた回転させ、正面を向かせる。ひとつにまとめて片手で抑えていた両手首を元貴の方に渡そうと腕を伸ばす。
「おっけー………っ、……ぅ、……っくしゅん!!!」
「え、……」
元貴の声を合図に手を離した時、突然のくしゃみが重なった。自身の手元に下げていた視線を思わずあげる。その瞬間、頬に鋭い痛みが走った。
「った…、!?!?は……?」
「はは、っ…無様っすね。油断するからそうなるんっすよ。」
手首を軽く振りながら嘲笑を浮かべる霧矢に、隣から聞こえる元貴の高笑い。熱を持つ頬を片手で抑えながら、まずどっちをしばくべきか考える。よし、決めた。
「元貴!!!!!」
「え、俺?殴ったの霧矢君だよ!?」
「…じゃ、俺帰るっす。今日のことは何も言わないんで、絶対口滑らせないで下さいよ〜?ってことで、早く退いてください。」
喧嘩を始める俺達に掛けられた霧矢からの言葉に二人で顔を向ける。未だ俺の下に敷かれている癖に、何故か勝ち誇ったような顔をして話を進めている。元貴も俺と同じような気持ちなのか、何か言いたそうな顔で霧矢を見ていた。
「…もういいよね元貴?」
「うん、俺上貰うわ。」
ゆっくりと立ち上がった元貴を視界の端に、改めて霧矢に向き合う。そして、躊躇せず、肘で彼の頬を殴った。
「ッ゛…、!?!?な、に……い、っ゛た……、」
「うわー、…容赦な…」
頬を抑えながら、理解できない、という目でこちらを見る様子はとても愉快だった。彼は気付いていないのだろうか。切れた唇から僅かに滲む赤い血に。白い肌によく映える赤に、より興奮が高まるのを感じた。
「あー、もう。俺めっちゃ我慢してたのにさぁ…、なんですぐ手出すんだよ。」
「ほら霧矢君こっち〜。俺の、舐めて?」
2つの方向から同時に話しかけられ完全にパニックになっている霧矢に、元貴は楽しそうに笑い声を上げている。いつの間にか脱いでいた元貴が、熱を持ったそれを霧矢の口に近付ける。だが、圧倒的不利な状況だと言うのにも関わらず、霧矢は必死に顔を背けている。
「ほら、早く咥えてやれよ。」
霧矢の両手首を片手で掴み、お腹の辺りで固定する。空いている手で頬を掴んでやれば、すぐに口を開いた。その隙を見逃さず、深く、喉奥まで一気に元貴のものが入っていく。
「ッ!?、ん゛ッ、!?!?ぅ゛…ぉ、え…ッぅ……ん゛んッ…ぐ…」
「っあ〜…めっちゃあつ…、」
口いっぱいにそれを含み、苦しそうに呻き声をあげる様子が酷く扇情的だった。紅く染まる頬も、床に広がる綺麗な金色の髪も。纏っていた物を脱ぎ、より質量を増した自身を何度か擦る。そして、先程まで指を入れていた箇所にゆっくりと入れていく。
「ッ……、きつすぎ……、」
慣らしたにも関わらずまだ狭く感じるの中は、さすが初めてと言えるだろう。仮に初めてじゃないとしても、きっと才能がある。長く楽しめそうだ。
「、ほら、1回くらい出しとけよ。」
「ん゛んッ、!?!!♡ん、ッ゛〜!!!♡♡」
1度彼の絶頂を誘うために、お腹につきそうなくらい反り立った彼の自身に触れ、激しく上下に動かす。快感を逃すために身を捩らせているが、力は弱々しく、呆気なく俺の手の中に白濁を吐き出した。
「っは、…やば、俺もイきそ…霧矢君、ちゃんと受け止めてね?」
「ッ、ぅ゛……♡げ、ほッ…ん゛んッ…う゛ぅ、」
息を切れ切れに発した元貴の言葉の後に、霧矢から苦しそうな声が聞こえた。満足したような表情を浮かべる元貴が、霧矢の口元から自身を離す。すると霧矢は、開放されたそれからすぐに顔を背け、口の中に広がる白濁を吐き出そうと何度か咳を零す。だが、そんな行為は元貴が許さなかった。
「…ねえ、受け止めてって言ったじゃん?何吐き出そうとしてんの。意味分かんないんだけど。」
1つトーンの下がった声のまま、霧矢の口を無理やり抑え、飲み込ませようとしている。目は真っ直ぐと霧矢を射止めているのに、口元は楽しそうに笑みを浮かべていた。それを見ているこちらすらもゾッとするような不思議な表情だ。
「ん゛……ぐ、…ッは、…はぁ、……」
暫くすると、ゴクリと霧矢の喉が上下した。相当口に合わなかったのか、今にも吐き出したい、というような表情を浮かべている。そんな彼に追い打ちを書けるよう、その唇に指先を伸ばす。
「なんでそんな元貴に従順なのに、俺には従ってくんねーの?」
僅かに白濁を纏い、光を反射して濡れている唇を開かせ、親指だけを彼の口の端に引っ掛ける。優しく横に引っ張れば、何だか子供のような表情になってしまった。
「ほれは、こほひとかはなひてくれなかったからて、!!」
「この人が離してくれなかったから?」
「ほーっす。」
上手く言葉を発せず、舌足らずのような喋り方で説明する彼に耳を傾け、「ふーん。」という適当な相槌を返す。
「めっちゃベタベタするからシャワー浴びてくるわ。二人で楽しんで〜」
そんな俺らの会話を横に、元貴がゆっくりと立ち上がった。ひらひらと手を振る元貴を見た霧矢の表情が、僅かに歪んだ。そして、ゆっくりとこちらに向けられた視線。それに答えるよう、笑みを浮かべて口を開く。
「じゃ、二人で楽しも?」
「ッ、…!!もう嫌っすよ…、助けてくださいよ冬橋さん……、」
弱々しく目線を下げた彼から発せられた「冬橋」という言葉。さっきから幾度なくその名前を呼んでいる。何だか少し、心の奥がモヤッとしたのを感じた。
「滉斗。」
霧矢の頬を掴み、しっかりと瞳を合わせてからそう呟く。
「ひろと……、?」
「そう、俺の名前。」
だから何だ、と言わんばかりの表情を浮かべる彼の唇を奪い、がむしゃらに舌を絡ませる。足りない、もっと俺を求めて欲しい。もっと、もっといつもみたいに。
「…っは、…りょ、ちゃん…」
「ッ…、?♡おれ、っ、そいつじゃな……」
己の中の枷が完全に外れた音がした。目の前の人物しか見れなくて、脳が快楽で埋め尽くされる。制御なんて効かず、本能のままに腰を押し付ける。激しい水音が廊下に響くのと同時に、彼が俺の腕を強く掴んだ。
「あ゛ッ、あ゛♡♡や、ぁ゛!!♡…と、めて、ッ゛…!!♡♡」
「ッ、く……♡は、ッ、…は…ぁ♡♡」
彼の爪が腕にくい込んでいるのか、鈍い痛みが腕に走った。けれど、そんなことは気にならない。今は目の前の獲物に食らいつくのに必死で、他のことなんてどうでもいい。早く、早く俺に堕ちて、俺だけの”涼ちゃん”に。
「ッ〜〜!?!?!?♡♡ぁ゛ッ…、♡」
「……♡♡、ッ…。」
込上がってくる感覚に抗うことなく、彼の奥に白濁を吐き出す。同時に彼も身体を大きく震わせ、少量の白濁を吐き出した。ドクドクと興奮を主張する胸の音を耳に、はっ、とした。
「やべ、…死んだ?」
目の前に広がる惨状に、冷や汗が首筋を伝う。完全に飛んでしまっている霧矢に、様々な液体が飛び散った床。冷静になった頭では抱えきれないほどの状況の酷さだった。つい数十分前の自分をぶん殴りたい。
「まじごめん霧矢君。ね、起きてよ。」
いくら身体を揺すっても、瞼1つ動きやしない。というか真面目に考えてみれば、霧矢は裏社会の人間のはず。こんな人に酷いことをしてしまうなんて、やばいのではないか。完全に欲に溺れていた自分を思い出し、深くため息をつく。
「…はぁ、……とりあえず元貴のとこ行こ…、」
霧矢の中から自身を抜き、そこら辺に投げていた下着を纏う。ちょうど、下から聞こえていたシャワーの音が止んだ。裸のまま放置するのも可哀想だと思い、自分が来ていたジャケットを彼の身体に被せる。
「…元貴ー!!!ちょっと助けてー!!!」
「…で、霧矢君のこと何処隠したわけ?」
パジャマに着替え、腕を組みながらそう問う元貴に言葉を詰まらせる。お風呂から上がってきた元貴を急いで連れてくると、霧矢がいたはずの場所には、ジャケットしか残されていなかった。まるで突然消えてしまったかのように。
「いや、俺隠してないって!!さっきまで此処に居たから!!」
「じゃあ何で居ないの。」
「それは……、」
必死に弁明を試みるも、元貴は全くと言っていいほど信じてくれない。むしろ疑いは深まるばかりだ。
「ってか、元々霧矢君何処にいたわけ!涼ちゃんの部屋から出てきたなら、なんか変な扉でも……」
訝しむような目線を向け続ける元貴を背に、涼ちゃんの部屋の扉に手をかける。もしかしたら異世界に繋がる扉でも中にあるのかもしれない。そんなおかしな考えを持ちながら扉を開ける。すると、ベッドの上に横たわる、先程まで見ていた人物が目に入った。
「…霧矢じゃん!!!」
思わずそう叫ぶ。だが、後から入ってきた元貴の反応は違った。
「…いや、違うでしょ。これ涼ちゃんだよ。」
「は……、?」
俺を壁の方に追いやり、涼ちゃんに近づいて行く元貴の姿を見守る。確かに服装もさっきと異なっていて、髪も下ろしている。でも、顔は完全に一緒だ。どっちが霧矢かなんて分からない。
「涼ちゃん、起きて。もう昼だよ」
「…、んぁ、……?まだ、あさ?」
「昼だって。いつまで寝てんのまじ。」
元貴の揺さぶりにゆっくりと目を開いた涼ちゃんが、眠たげな瞼を擦りながら身体を起こした。まだぱやぱやとしていて、夢から完全に覚めきっていないようだ。だが、この姿を見るに、これは霧矢ではなく涼ちゃんだろう。
「……涼ちゃん、」
大きく背伸びし、欠伸をこぼす涼ちゃんに、恐る恐る声をかける。すぐに俺の姿に気が付いた涼ちゃんが、爽やかな笑みを浮かべた。
「おはよ、若井。もしかしてもう皆ご飯食べちゃった?」
「………、いや…食べてない。」
なんだか変な感じだ。さっきまで自分が抱き潰していた相手が目の前にいる。けれど、それは涼ちゃんではない。すこぶるややこしくて、頭がおかしくなりそうだ。でも1つ言えるのは、涼ちゃんでしか得られない何かがあるということ。
「良かった!僕お腹すいちゃった〜。元貴もなんか食べよ〜」
「あ、さっき若井がコンビニ行ってたよ。俺はセンス良いんだ〜って調子乗ってた。」
上手く理解の出来ない出来事だったが、この目の前の幸せを感じていると、不思議と頭の隅に追いやられてしまう。
「良いとは言ってねーし!やばいって言ったんだよ。」
「何、やばいって。若井のチョイスとか怖い。 」
「俺は甘い物指定したから、ハズレないよ。涼ちゃんがロシアンルーレット。」
「えぇ、!??やだよー……、」
束の間の少しばかりの刺激。何も知らない涼ちゃんに、余計なことは言わなくていい。俺はただ、”涼ちゃん”が好きだ。
コメント
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き、霧矢くん…💦 迷い込んだ先が悪かった…💦 このお2人はやる時はとことんですよね😅 訳もわからず被害に遭う霧矢くんが不憫ですが最高でした🫠 無事冬橋さんの元に帰れてます様に🥹 こんな2人❤️💙の相手が出来るのは、やっぱり『りょうちゃん』だけですよね💛

まじ天才ですね!!霧矢がいた間涼ちゃんが何されてたか気になるな🫣
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