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『移動時間も謎解きしよう』
迂闊にリプしたあの言葉がきっかけだ。メンバーとの収録が終わり、シェアハウスの自室で他の配信者さんのポケポケパック開封動画を見ながらのんびりと遅い夕飯を食べていた時に勢いよく自室のドアがバーンと開かれて大きな音に背中が跳ねた。
『びっ…くりしたー、ノックを忘れがちなメンバーといえば…』
と思いながらドアの方を向くと、予想通りの人物が目をきらきらさせて立っていた。どうしたどうした。
「mfくんノックぐらいしろよーびっくりするじゃん」
「行きましょう、謎解き旅行!」
「は??」
人の話を聞かず食い気味で何やらたくさんのパンフレットをぐいぐい押しつけてくる。顔が近い、怖い。
「いやーさすがhrくん良いこと言ってくれるわ、移動中も謎解きとか天才か?探したら3週間後に列車でやる謎解きツアーっていうちょうど良いやつあってですね、」
「ちょちょちょ、待って待って」
「なにー?」
「俺、移動時間も謎解きしようとは提案したけど行きたいとは言ってない…」
俺の言葉を聞くと、mfくんは得意そうにふっふっふと笑うと仁王立ちになってピースした。テンション高えな。
「なんと!俺が行きたい謎解きイベントの近くにhrくんが前行きたいって言ってたポケカのショップがあるのでーす!」
そう言ってmfくんはすかさずスマホを取り出して、俺のずっと行きたかったショップと、mfくんお目当てのイベント会場の説明をしだした。本当にめちゃくちゃ近い、まじかぁ。mfくんのことだから誰か同行者見つけるために周りに何があるか下調べしまくったんだろうなと思うと微笑ましい気持ちになる。ポケカショップ周辺のお店を確認していると気になるものがゴロゴロ見つかって、自分の気持ちが旅行へと傾いてきたのが分かる。いいじゃん楽しそう。観光できるし謎解きも嫌いじゃないしアリかも。何より誘ってくれたのも素直に嬉しいし。そう思って心がぐらぐら揺らぎだしている俺のことなんてきっと彼にはお見通しなんだろう。追い討ちとばかりmfくんは声高らかに宣言する。
「今なら!私めが!hrくんのご飯代と謎解きイベント代は全て負担させていただきます!」
「な、なんだってー」
行く?行くよね?ってそわそわワクワクしながら聞いてくるmfくんの必死さと、念願のポケカショップと、行ったことのない土地に気心知れたメンバーとの旅行という事案に俺はついに白旗を上げた。
「仕方ないなぁ、折角だからmfくんに名物食べさせてもらいますかぁ」
「やったー」
ポケカショップでシヴァさんに何かお土産買ってあげよう。あの土地の名物何だっけ?とか考えながら、俺は自分のスケジュールを確認することにした。
突然決まった謎解きツアーまであと3週間。