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ユートピアの時もそうだったけど、めめが可哀想で応援しちゃう気持ちにちょっとなる😅😅🖤
そのままあべちゃんのこと思い出して、、
翔太 side
もう少しで頭の靄が取れそうになると、また靄の中に戻される。先程まで見ていた楽しい夢を、起きたらすっぽり忘れてしまっているみたいに。
そこだけぽっかりと空いた穴は、きっと蓮じゃ埋められない。
ベランダから一台の車が、都心方向へ走り去るのを上から眺めていた。運転席に座るピンク色の頭の佐久間がこちらを気にした様な気がした・・・
蓮 🖤『ここに居たの…何してたの?』
〝まず、ただいまでしょ…おかえり蓮〟蓮は急いで帰って来たのか額にうっすら汗を掻いている。〝ただいま暑いでしょ?中に入ろう〟腰に回した手がイヤらしく身体をなぞり、リビングに戻る間ずっと腰を捉えたまま離れない。阿部ちゃんにはドキドキする胸も今は大人しくしている。〝今日は何してた?〟一日中家に居てする事なんてせいぜいテレビを見るくらいだ。スマホもないし変わったことは阿部ちゃんが家に来た事くらいだ・・・これは言えないし。
翔太💙『特には・・・何も、蓮は?皆んな元気だった?今日はなんのお仕事してたの?』
ソファーに2人腰掛ける。さっきまで居た阿部ちゃんが居た場所に今は蓮が座ってる。蓮はお仕事の話を少しだけすると〝これ阿部ちゃんから預かり物〟と言って着替えの入った紙袋とスキンケアグッズの入った紙袋を渡してきた。そして携帯電話を俺の手に乗せると〝翔太、ロックの解除番号教えて?〟蓮の顔は笑っていない。
翔太💙『う…んいいけどなんで?』
俺は蓮の前でロックを解除すると〝心配だからに決まってるでしょ〟そう言ってすぐにスマホを取り上げられた。また靄が襲いかかる…薄らと頭を覆うそれはだんだんと俺から笑顔を消して行く。息苦しい空間だった。
無言で立ち上がると〝何処行くの?〟と聞いてきた蓮に〝何処へも行かないよ〟そう言って寝室に閉じこもった。
先程隠したノートを取り出す。タイトルの文字に見覚えがあった。最後に言われたあの言葉だ。
蓮 🖤『翔太と居ると息苦しい…』
5年前蓮に別れを告げられた日。確かこのマンションとは違う場所だった。ソファーに腰掛けペンギンの人形を抱えながらテレビを見ていた俺に突然そう言った蓮は全く笑っていなくて、一気に不安に襲われたのを覚えている。
この頃は毎日のように喧嘩が絶えなくて、正直俺も同じ息苦しさを感じていたけど、気付かないフリをしていた。
付き合い始めは、お互い男性との恋が初めてでそれは苦労した。心の葛藤、身体の葛藤。言えばキリがない程、沢山泣いたけどそれを乗り越えた2人は一緒に暮らす程ラブラブだった。
翔太💙『蓮大好きカッコいい』
蓮 🖤『翔太も可愛い大好きだよ。今度の休みデートしようか何処行きたい?』
2人で沢山色んなところに行った。海外旅行にも行ったし、映画館も遊園地も。一番は水族館に多く行った気がする。蓮が大好きだったし、幸せそうに水槽を眺める蓮を見るのが大好きだった。
状況が変わったのは付き合って2年が経った頃だ。蓮が知らない女性とコソコソ会っているのが分かってからだ。過去に付き合っていた女性から復縁を迫られていたらしい。
蓮は女性だけじゃなく、男性にもモテた。近寄ってくる人が皆んな好意を抱いている様に、俺には写った。
〝スマホ見せろよ〟〝昨日誰と会ってた?〟〝なんで連絡くれなかったの〟自分の中に蠢く嫉妬心を止められなかった。束縛しているつもりなんて全く無かった。
愛してるから気になる。愛を求めて言葉を欲しがる。愛してるなら抱いてよ…身体を欲しがった。
翔太💙『蓮愛してる…ねぇ?なんか言ってよ』
蓮 🖤『あぁ…俺も愛してる』
無感情に発される〝愛してる〟に心は満たされる筈はない。蓮に跨り愛を求めた。自ら服を脱ぎ蓮に舌を這わすと腰を揺らした。
あんなに互いに求め合い愛し合ったのに、その頃は自分だけが蓮の温もりを求めて同じ分量の愛を求めた。 そんな日々が1年も続いた。蓮からすればよく絶えた一年だったろう。俺からしたって辛い一年だった…目の前の蓮がどんどん離れていく感覚を感じ取っていたんだから。
蓮 🖤『翔太と居ると息苦しい…俺たち別れよう』
何処で何を間違ったんだろう。
〝悪いところ全部直すから〟
〝他に好きな人でも出来たの?〟
別れ話をされて蓮に縋る俺は、ただただ見苦しかった。
蓮 🖤『好きの向こう側って知ってる?』
手をとり別れたくないと泣きじゃくる俺に そう問うた蓮は冷たく俺の手を振り解いた。
翔太💙『 どうせ愛って言いたいんだろ』
蓮 🖤『違うよ。翔太の好きは独りよがりの愛だ。自分が大事なだけの、自己中心的な愛は一方通行だ…俺はもうこれ以上翔太を愛せない』
俺の愛は面白いくらいに全否定された。一緒に行った水族館も一緒に過ごした日々も全部否定されたあの日から〝愛してる〟 なんて〝愛して欲しい〟だなんて思わなくなった。と言うより言えなくなったんだ・・・
…そうだ佐久間に求められるがまま何も言えずに俺は愛されるのを待ってた。そう佐久間を好きになった…これっていつ頃の事だっけ?阿部ちゃん知ってるかな…佐久間との事。
〝コン、コン、コン〟
寝室のドアをノックする音が部屋に響いた。
俺は慌ててノートを元の場所に隠して〝なぁに?〟と返事をすると蓮は〝 翔太入るよ〟と言って 悲しい顔をして近づいてきた。俺が怒るようにして寝室に閉じ籠ったからだ・・・
ベットの端に腰かけた蓮は〝さっきはごめん不安で〟そう言ってスマホを俺に渡した。ちょうど康二かりメッセージが送られて来て開くと、蓮も覗き込んできた・・・ごめんと言いながらも見てるじゃないかよ。一緒に送られてきた動画を開くと新しい曲のフリ入れの動画だった。皆んな楽しそうに踊ってる。皆んなに会いたいし、踊りたい、早く仕事したい。いつの間にか涙が溢れた。
翔太💙『お仕事行きたい…ダメなの?』
蓮は記憶が戻るまでは、また倒れたりしたら大変だから駄目だと言ってるけど〝このまま戻らなかったら?俺仕事辞めなきゃいけないの?〟蓮は困った顔をしてる。ここに来てから一度も倒れてないしちょっとずつだけど思い出した事もいっぱいある。
翔太💙『多分…蓮と別れた後だと思う佐久間が好きだった…少しずつ思い出せてる。蓮と別れた時の事も思い出した。これって快方に向かっているでしょう?』
蓮は怯えたような目をしてる。俺の記憶が戻るのを喜んでなさそうだ。優しく涙を拭うと唇が近づいてきて、後ろに仰け反るとそのまま後ろに倒されて唇がぶつかる。頭を優しく撫でると〝仕事の事はもう一度事務所と話してみるよ〟そう言って俺の腕を取って体を起こした。
翔太💙『本当?ありがとう蓮。我儘言ってごめんね』
蓮 🖤『よし、お風呂まだでしょ。着替えも届いて良かったね。俺のじゃブカブカだもんね』
蓮の柔らかい笑顔にホッとした。俺が余計な事言わなきゃ蓮は優しく返してくれる〝じゃぁお風呂入ってくるね〟そう言って紙袋からシャツと下着を取って風呂場へと向かった。
懐かしい匂いが鼻を掠めた。思わずシャツに顔を埋めると亮平の顔が脳裏に浮かんで離れない。亮平の匂いなんだろうか?優しく包み込むような匂いに心があったかく温もるのを感じる。
蓮 🖤『何してるの?』
慌ててシャツを籠の上に乗せるとなんでもない風を装った〝ごめん蓮が先に入るよね?〟そう言って脱衣場を出ようとすると、蓮は扉の前に立ち塞がったままだ。家主より先にお風呂入ろうとするなんて流石に失礼だったよな。
翔太💙『ごめんなさい。非常識だね蓮の家なのに。それにお仕事してきてるのに…』
気まずい沈黙が流れ、やり場のない作り笑いを伏せるように下を俯いた…今一度〝ごめんなさい〟と言うと蓮は優しく俺の手を握った。
蓮 🖤『俺こそごめんね。翔太はここに来てからずっと泣いてる…俺のせいだ分かってる』
翔太💙『何で違うよ?俺の頭がおかしいからだ。蓮は俺の為にここに連れてきたんでしょ。皆んな俺の為に必死なの分かってるよ…だから早く治したい。ごめんね困った顔とか悲しい顔させてるのは全部俺だ…ごめんね』
俺のせいで皆んなが苦しそうだ…〝独りよがりの愛〟いつだって自分は一方通行…胸が苦しい
蓮 🖤『翔太?』
翔太💙『何処で間違ったかな?俺は独りぼっちの方が向いてる…みんな俺が居たら苦しそうだ…』
蓮は〝ごめん〟って何度も謝って抱きしめると背中を優しく摩っている。いつの間にか蓮の腕に抱かれててまた倒れたんだって分かった。これじゃまだ仕事は無理だってまた言われちゃう・・・
翔太💙『皆んなに会いたい…』
手を伸ばした先には蓮しか居なくて、守ってくれる唯一の人の首にしがみ付くと、イヤらしく伸びてきた手がお腹を撫でた。ビクリと反応した俺に〝愛してる〟と耳元で囁けば、身じろいだ俺が〝感じてる〟と勘違いした蓮は耳の中を舐め回している。
服を脱がされてお風呂場に立つと首筋を蓮の舌が這う。5年前俺がそうであったように、蓮も今惨めな思いで俺を抱いているのかと思うと切なくなって、応じるように腰に腕を回した。
自分が誰を好きなのか分からなくなるその行為は、益々俺を混乱させた。頭に待機中の靄がより一層濃くなって、目の前の蓮に没頭した。
蓮は夢中で俺を愛している。胸の突起に舌を這わすと硬くなった先端を舌先で転がし、後孔に伸びてきた指は優しくソコを掠め撫で上げる。甘い吐息がお風呂場に響き蓮の欲情を一層掻き立てた。
激しく後孔に侵入した蓮の指は俺の反応を楽しむように、中を弄り激しく出入りした。鏡に手をつくと、蓮と目がぶつかり、頰を撫でた蓮がグイっと後ろに向かせると唇が重なる。
蓮 🖤『舌出して……出しなさい』
優しい口調に、何処か怖い鋭い眼光の蓮に、おずおずと差し出した舌は、蓮と交わりイヤらしく音を奏でた。後孔を突く指からも音が響き、快感に善がる鏡の中の俺は赤らんだ肌を蒸気でイヤらしく映し出した。〝イヤだ、やめて〟と言わなければこうやって優しく蓮は抱くんだ。
俺が受け入れさえすれば蓮は俺を優しく愛する 。
薄れゆく阿部ちゃんの僅かな優しさが、心の中に残る言い知れない温もりが何なのか分からないまま、消えようとしている。
隘路に侵入してきた蓮の熱塊を咥えた俺の腰が揺れる。お腹に腕を回し上半身を起こすと下から激しく突き上げ、声にならない声を上げ恐怖で蓮の腕を掴むと〝可愛いよ、翔太いっぱい感じてるね〟と言ってさらに激しく律動を繰り返すと奥ばかりを突いて立っているのがやっとだ。
翔太💙『ンンンンッ蓮…ヤッもぅごめんなさい…無理』
我慢してるみたいに思わず出た〝ごめんなさい〟に蓮は気を悪くした。
膝から崩れ落ちる俺にお構いなしに、抽挿を繰り返し膝をついて四つん這いにさせると〝愛してる〟を、繰り返し言いながら奥を付いた。最後は膝も付いていられず床にへたり込んでも尚、蓮は愛を注入し続けた。
俺の愛を全否定した蓮が今俺に〝愛してる〟だなんて言ってるそんなチグハグな世界に身を置いて、抵抗しない俺もどうかしている。
5年前のあの日捨てられた俺の愛を拾ったのは蓮だろうか?目の前の愛を語る男は、力尽きた俺を甲斐甲斐しく世話して、綺麗に拭き抱き上げると裸のまま自身のベットに横にし、俺からの愛を求めながらもう一度抱いた。
阿部ちゃんの匂いが残るシャツは脱衣場に置き去りのまま、次の日の朝着替えようと脱衣場に行くとそこにはシャツはなくて、蓮のブカブカのシャツが綺麗に折り畳まれて置かれていた。
蓮の香水の匂いが微かに香るそのシャツを取り敢えず着ると寝室の紙袋の中のシャツを着ようとリビングに出ると蓮が洗濯を終えてキッチンに立っていた。室内に干された洗濯物に目をやると、そのまま自分の寝室へと行く。
俺の洋服は全部洗濯されていた・・・
隠していたノートを開くと阿部ちゃんからのメッセージに気づいた。食い入るように読むと、丁寧に書かれた綺麗な〝愛してる〟の文字が飛び込んできて俺の胸をドキドキさせた。
🗒️幸せは2倍に、悲しみは半分こに
また会える日に愛を託して…亮平
そうだ交換しようって…また会いに来るって言ってた。今日来てくれるかな…
僅かな期待を込めて、阿部ちゃんに返事を書いた。もう一冊のノートを読もうとクローゼットを開けようとすると蓮が寝室に入ってきた。
蓮 🖤『朝ごはんできたよ…どうかした?』
翔太💙『ん?何もないよ。すぐ行く…蓮ペンギンの人形ってもう捨てちゃった?』
蓮 🖤『もうないよ。何度か引っ越してるし…今度また買いに行こうか?』
咄嗟にペンギン探してる事にしちゃった…何だか胸がチクリと痛んだ。〝うん〟と返事をするとリビングに向かった。少しだけ楽しみが出来た。次に会えるまでにあのノートを読まなきゃ…何が書かれてるのか楽しみだ。
〝幸せは2倍に、悲しみは半分こに〟すごく素敵な言葉だ。こんな事を言える阿部ちゃんはきっと素敵な人なんだろうな・・・