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◻︎爆弾投下
退院した次の日。
まだ少し体に違和感はあるけど、痛みはまったくなかった。仕事も溜まっているだろうし、今日は残業確定だろう。
出勤前に、お父さんにメールをしておいた。
“入院してるんだって?”
なんの挨拶もなく本題のみ。しばらくして返信があった。
“あー”
おそらく、『はい』とか『うん』の意味の言葉だろう。
“あとで電話するね”
“あー”
まぁいいか。
オフィスに着いて、課長に挨拶に行こうとした時。
「おはようございますぅ、チーフ」
朝から甘ったるい挨拶は、日下だ。
「おはよう、ごめんなさいね2日もお休みしてしまって」
「いいんですけどぉ、あのぉ…」
何か言いたそうにしている。
「何か?私がいない間にトラブルでも?」
ちょっと、と言いながら私の耳に顔を寄せ、小声で聞いてきた。
「結城先輩とデート中に、倒れたんですか?」
「はぁ???どうしてそんな…」
私の声が大きかったからか、一斉に視線が集まった気がした。
「え?違うんですか?だって結城先輩がそんなことを言ってたから、てっきり二人は付き合ってるのかなぁと」
_____なんでそんな…
「ちょっと、結城君はどこ?」
フロアには見当たらない。
「見つけたら、私が探していたと伝えておいて」
「はぁい」
まったく、なにをどうしたらそんな話になるのか。
課長はパーテーションの向こう側で、コーヒーを飲んでいた。
「課長、おはようございます。急に休んでしまって申し訳ありませんでした」
「おぉ!おはよう。もういいのか?」
「はい、ご心配をおかけしました。何かトラブルとかありませんでしたか?」
「あー、それなら大丈夫だ。君の代わりに頑張ってくれたヤツがいるからね」
「え?」
「いいねぇ。社内恋愛はあまり勧めないが、いざというときに頼りになるヤツがいるのは、君も心強いだろ?」
「は?え?もしかして…」
なんだこの、婚約発表した後みたいなお幸せに、感のセリフは。
「違いますから!何かの誤解です。私と結城君は何もありません!」
「いいよいいよ、恋愛してマイナスになるヤツとプラスになるヤツがいるけど、アイツなら大丈夫だ」
「いやいやいや、私が大丈夫じゃないですから。本当に違いますって」
両手で思いっきり否定のポーズをとる。その時パタパタと足音がして、結城がやってきた。
「森下さん、あ、違った、チーフ!」
_____また、ややこしい言い間違いして!
まぁ、頑張ってくれたまえと言いながら、課長は席へ戻ってしまった。
「はぁー、もうっ!一体どんな話から私とあなたが付き合ってるってことになるの?みんなになんて言ったの?」
「えーと…夜中に、電話で呼ばれて駆けつけましたって言っただけなんだけどな」
「それ!!誰が、とかどこへ、とかなんで言わないの?」
「え?」
_____あ、ダメだ
地雷どころか、爆弾投下だ。