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「貴方の子」
中也女体化♀
太中
結婚済み
「あ“~……いい加減泣き止んでくれよ…、」
カーテンが閉ざされ、日差しの入らない真っ暗な部屋の中では、1時間ほど前から赤子の泣き声が絶えずに響き渡っている。ただでさえ徹夜明けの仕事帰りなのに、この始末。自分の夫は、どうやら留守にしているようだ。
「なぁ…俺も眠いんだ…」
さっきから小一時間ずっと、赤子の割には重たい自身の子供を抱き抱え、ずっと揺すっている。流石に手が痺れてきた。加えて、二夜分の睡魔が襲ってきており、うつらうつらと眠りに何度も入りかけてしまう。すると、あやしがなくなった、手の中の赤子がさらに声荒げ、耳を劈いて嫌でも目が覚めてあやしてやる。この繰り返しで、頭がおかしくなりそうだ。何処を撃たれても、大事な車を爆発されても、やっと手に入れた念願のワインを何処ぞの莫迦に飲まれても泣かなかった自分だが、流石にこれは声をあげて泣きたくなった。
そんな俺の心の悲鳴は、この小さな生命体には虚しくも届かず、いよいよ顔が赤くなり、手足をバタバタと動かし始めた。「勘弁してくれよ……」そう呟きながらダメもとでミルクを飲ましてやる。
吸い口を口まで持っていくと、一瞬何かと泣き声が止むが、また直ぐに哺乳瓶を手で叩いてイヤイヤと拒む。矢張り、自分には子育ては向いていないんじゃないか。何度も反芻してきた言葉がまた胃から上がってくる。
「…俺には親がいなかったから…手前が何を求めてるのかがわかんないんだ……。」
そう零して優しく抱き締めてやると、ミルクの幼さを証明する香りと、小さい生命を感じる。「ごめんなぁ……」そうもう一度言うと、ぴたりと声が止んだ。不思議に思って顔を上げると、先ほどまでの大泣きが嘘のように、けろっとした表情で「あ~?ぅ~…」と不思議そうに俺を見つめている。
なぜ泣き止んだのかがわからず、思わず顔を顰めてしまっていると「あー‼︎」と言葉を発しながら俺の顔を、小さな弱々しいで手でぺちぺちと触れてきた。小さいその手に、すり寄ると、キャッキャと嬉しそうに笑う。
「…笑った顔が彼奴にそっくりだ…かわいいなぁ…」
それに釣られて、思わず自分もくすりと笑う。なんとなく、憎めない存在だ。
その後はもう、泣くことはなくスヤスヤと眠っていて、心底安心した。小さな親指をカプリと口に咥えている姿がどうにも愛らしい。まだ赤く腫れている目元をそっと撫でてやると、少し短く唸った。慌てて布団をかけ直して、とんとん、とお腹を一定のリズムで優しく叩いてやると、満足したかのように口元をふにゃりと歪ませて、小さな寝息を再び続けた。その姿にほっと安堵すると、流石に自分も寝なくては、と薄いタオルケットを被り、ベビーベッドにもたれかかって眠りについた。
かたっと人が移動する音で目が覚めた。近くの時計に目をやると午前9時。よかった、まだ4時間しか経ってない。マフィアに入ってから、気づけば3時間未満の睡眠時間でも、常人並みに行動ができるようになっていた。俺も狂ってんなぁ、人のこと言えねぇなぁ、なんて思いながら、背伸びをして疲労で重々しくなった体をゆっくりと起こしていく。そう言えばさっきの物音はなんだったのだろうかと、部屋を見回すと、ゆっくりとドアノブに手を伸ばす姿があった。
「何してんだ、太宰 」
俺と子を起こさないようにしているのだろうか。物音ひとつも立てまいとした努力は、俺のその一声で無に帰った。それは、名前を呼ばれた男-太宰-が驚きのあまりか、開きかけていたドアに額をぶつけたからだ。
「い“ッ⁉︎ッ~…」
太宰が反射的にドアノブから手を離したことによって、扉は勢いよく音を立てて閉まり、近くに積んでいた本の山が崩れる。そして痛い痛いと声を額を抑えながら呻く彼。その一連の出来事に、やばい、と焦った。駄目だ、また、泣いてしまっては。中也ぁ…と不甲斐ない声で俺を呼ぶ声を無視して、赤子が起きていないかをベビーベッドの柵に手をかけて覗き込み、チェックする。幸い、昨日の大泣きで相当疲れていたのか、びくりとも反応せず、心地良さそうに寝ている。
「良かった…」
「全然良くないのだけれど?」
胸を撫で下ろす自分の横で、涙目になって、少し赤くなった額を抑えた彼が言った。
嗚呼そうかよ、と鼻で笑ってやろうかと、太宰の顔に目をやった時だった。
「…?何見てるのさ、」
続き書くかわからないです~。思いつきで、子育て中原見たいなぁ、という欲でかいたので…(そして案の定拗らせ)。若干スランプなので筆が遅い。