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「次、女子リレー第一走者、準備してください!」
アナウンスの声に呼ばれ、咲はトラックへ向かった。
手にしたバトンが、少し汗ばんだ掌に冷たく触れる。
(大丈夫、大丈夫……練習してきたんだから)
スタートラインに立ち、深呼吸をする。
よーい――。ピストルの音とともに、一斉に走り出した。
風を切る音が耳を抜け、足元の赤いトラックが流れていく。
声援が飛ぶたびに、胸の奥に力が宿った。
――観客席に、悠真さんはいるのだろうか。
その想いを抱えたまま、咲はバトンを必死に繋いだ。