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僕にはお父さんとお母さんたちがいる。“たち”って何って?
お父さん2人とお母さん2人。みんな僕の親だ。
みんなはお父さんとお母さん2人で両親と言うが、僕の場合は「両両親」だ。
僕が生まれたとき、どうやら片方の両親の子供は亡くなってしまったらしい。
生まれたばかりの産院で、隣り合ったベッド。片や無事に産声を上げた僕と、片や静かに息を引き取った赤ちゃん。絶望に暮れるあっちの両親と、あまりの悲劇にかける言葉もないこっちの両親。
……で、どうしてそうなったのかは大人たちの曖昧な説明しか聞いていないけれど、気づいたときには僕には4人の親がいた。
両両親はどちらも、僕を自分の実の子だと思って育ててくれたらしい。
これは僕と、2つの家族の物語である。
◇
「たくやー!朝ごはんできたわよー!」
「拓也、今日の予報は雨だから折りたたみ傘持っていきなさい!」
階下から同時にかかる、ふたつの声。
我が家の朝はいつだって少しだけ賑やかで、そしてややこしい。
ダイニングテーブルに着くと、目の前には2組の夫婦が並んでいる。
向かって左側、ポロシャツを着て日経新聞を広げているのが「博お父さん」で、その隣で味噌汁の出汁をとっているのが「優子お母さん」。
向かって右側、パーカー姿でスマホのニュースを見ているのが「健司お父さん」で、トーストに手際よくバターを塗っているのが「恵美お母さん」。
「たくや、ほら。今朝は和食にする?それともトースト?」
ふたつの皿が同時に僕の目の前に出される。左からは焼き鮭と納豆の定食。右からはこんがり焼けたチーズトーストとスクランブルエッグ。
「……あ、じゃあ今日はトーストで。でも味噌汁ももらうね」
僕がそう答えると、恵美お母さんが嬉しそうに微笑み、優子お母さんも「やっぱり朝の汁物は大事よね」と満足そうに頷く。
争いはない。ただ、愛が単純に2倍存在しているだけだ。
「そういえば拓也、来週の三者面談だけど」
博お父さんが新聞から目を離さずに言った。
「あ、それな。先生にはもう言ったんか?うちは『五者面談』になりますって」
健司お父さんがニヤニヤしながら口を挟む。
「言えるわけないじゃん……。普通に『母と行きます』って言っといたよ」
「えっ、どっちの!?」
優子お母さんと恵美お母さんの声が綺麗にハモった。
僕が返事に詰まっていると、玄関のチャイムが鳴った。
「あ、宅配便かな」
健司お父さんが立ち上がり、廊下へ向かう。
親が4人いる生活。
小さい頃はこれが普通だと思っていた。参観日には後ろにズラリと4人が並んでいて目立つし、誕生日のプレゼントは毎年ふたつもらえる。運動会のお弁当は重箱ふたつ分で、いつもお腹が破裂しそうになる。
でも、中学に入る頃にはなんとなく察していた。
この温かい生活の裏には、語られない「もうひとりの僕」の存在があるということを。
博お父さんと優子お母さんの本当の子なのか。
それとも、健司お父さんと恵美お母さんの本当の子なのか。
血液型や遺伝子検査をすれば、本当の親がどちらかなんて一発で分かってしまう時代だ。
だけど、我が家では誰もその話題に触れない。病院の定期健診の書類だって、いつも絶妙にごまかされている。4人の大人たちが、全員で優しい嘘を守り続けているのだ。
「たくやー、お前に荷物届いたぞー」
健司お父さんが小さな段ボール箱を持って戻ってきた。差出人の名前を見て、僕は手を止める。
『天理総合病院 医事課』
それは、僕が生まれたとされる、あの病院からの荷物だった。
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虹彩芹歌/転生済
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コメント
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うわあ、めっちゃ好きな雰囲気…!4人の親に囲まれてる温かさと、その裏に隠された「もうひとりの僕」の存在が切なくて。朝ごはんのシーン、どっちの愛情も平等に受け取ろうとする拓也くんの優しさにじんときた。最後の病院からの荷物、めっちゃ気になる…続き読みたいです🥀