テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
Mami
291
#大人のロマンス
𝑆𝑜𝑦𝑜𝑜𝑛
41
#潔世一
べびーすたー
3,882
꒰ঌうさぎ໒꒱
410
コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!
第三話:純白の檻
「カイザー、そんなに引っ張ったら、生地が傷んでしまいます……っ」
ミュンヘンにある最高級メゾンのプライベートサロン。
完全貸切にされたその空間で、ネスは困ったような、けれど酷く甘やかな声を漏らした。目の前の大きな姿見には、全身純白のオーダーメイドタキシードに身を包んだネスが映っている。上質なシルクがネスの細身の身体にぴったりと沿い、その端正な顔立ちをより一層引き立てていた。そのネスの背後から、カイザーが大きな身体を容赦なく押し付けている。カイザーの長く白い指先が、ネスの胸元のタイをこれでもかと強く引き絞っていた。
「うるせぇ。傷んだらもう一着作らせるだけだ。それよりネス……お前、確信犯だろ」
「え? 何のことですか?」
「この衣装の担当デザイナーだよ。男だったろ。お前のサイズを測る時、手つきがいやにねっとりしてやがった」
カイザーの青い瞳が、鏡越しにネスを鋭く睨みつける。その瞳の奥には、ドス黒いほどの独占欲が渦巻いていた。昨夜のプロポーズから、カイザーの嫉妬深さは留まるところを知らない。二人の結婚式を完璧なものにしたい反面、ネスの美しい姿を他人に一瞬でも見せることが、彼には耐え難いのだ。
「ふふ、そんなところまで見ていたんですか。大丈夫ですよ、カイザー。僕が触れられて嬉しいのは、世界中であなたの手だけですから」
ネスは鏡の中のカイザーを見つめ返し、そっと自分の左手をカイザーの手に重ねた。薬指のブルーダイヤモンドが、サロンスポットライトを浴びて妖しくきらめく。
「……お前、本当に俺以外の人間はどうでもいいんだな?」
「当たり前じゃないですか。僕の目には、あなたという『王』しか映っていません。もしあなたが望むなら、今すぐこのサロンの人間を全員追い出して、二人きりで誓い合ってもいいんですよ?」
ネスの言葉はどこまでも本気だった。彼の紫の瞳には、カイザーへの狂信的な愛だけが満ちている。第三者の存在など、ネスの視界には最初から一歩も入っていないのだ。カイザーはふっと、その端正な顔を歪めて愉悦の笑みを浮かべた。
「ククッ、いいね。お前のその、俺にしか向かない狂気が一番愛おしい。……おい、もう衣装合わせは終わりだ」
「えっ、まだジャケットの袖丈の調整が……」
「そんなもん、後回しだ」
カイザーはネスの腕を強引に引き寄せると、サロンのふかふかなソファへと彼を押し倒した。純白のタキシードが容赦なくシワになっていくが、二人はそんなことを気にも留めない。
カイザーはネスの腕を強引に引き寄せると、サロンのふかふかなソファへと彼を押し倒した。純白のタキシードが容赦なくシワになっていくが、二人はそんなことを気にも留めない。
「ここで、俺のものだって証拠をもう一度刻み込んでやる。世界一綺麗な衣装を着て、俺の隣で、誰よりも淫らに鳴け、ネス」
「あっ……はい、カイザー……。あなたになら、すべてを捧げます……っ」
閉ざされたサロンのなかで、二人は外の世界を完全にシャットアウトし、ただお互いの体温と愛だけを貪り合うように、深く唇を重ねた。