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#学園
大正
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十六層をまだ進む。十七層への道はまだ見つけられていない。頭上をしっかり確認しながら進まなければいけない分だけ行く先を見つけるのに時間がかかっているのか、それとも見逃しているのかはわからないが、まだだ。おかげで余分にレッドスパイダーを倒して進んでいるが……と、後ろから追いつき始めていたパーティーの足音が消える。
足止めをされたというわけではなく、可能性としては……向こうのほうが先に次への道を見つけたのかもしれないな。ちょっと戻ってみるか。
「もしかしたらあとから来たパーティーのほうが先に道を見つけたかもしれませんね。足音が消えました」
「足音が消えたってことは階層をまたいだかやられたかってことだが……やられた可能性は? 」
「戦闘をしているような足取りではなかったのでその可能性はないかと。ちょっと進みすぎたのかもしれませんね。試しに戻ってみますか? 」
「それも悪くはないな。本当に次への道がそっちにあるなら問題なく戻れるし、時間は充分あるからまだ戻って探索するという方法もある。行くだけ損はないだろうな」
彩花のほうにも確認を取るが、こくりとうなづくだけでこちらに付き合ってくれるらしい。
「しかし、そこまで聞き取れるなんて、聞き耳のレベルをそれなりに上げているんだな」
「いちおうレベル4までは上げてあります。なのでそこそこの距離、そこそこの大きさの足音や重さは聞き取れます」
「おう、なかなかの上げっぷりだな。もっとおとなしく聞き耳を上げているだけかと思ったが、レベル4まで上げているならその耳は従うに値するな」
杉田さんも納得しているらしいので、さっき足音が消えた方向へ進みだす。すると、一度通り過ぎたところよりも少し奥に、次の階層への道を見つけた。ここは通り抜けてきたはずの道だが、どうやら見落としていたらしい。
「こんなところに次への道があったか。これは次の階層には先に潜り込まれて稼ぎは取られてる感じだな。本条君たちは次の階層も初めてだよな? 」
「そうですね、まだ知識もないですし、もうちょっと強さを身に付けてから十六層以降に挑むつもりではあったんですが、今日はいい機会になりました」
ここでは素直な学生のふりをしておいて、先輩の顔を立てるようにする。そのほうが多分、お互い変に気取ったりしなくて済むはずだ。
「さて、次の階層は何が出てくるのかなっと……とりあえず下りてみてから出会ってからでも遅くはないな」
杉田さん達を前にして、十七層へ入り込む。階層を降りてもまた洞窟のマップだが、天井は低くなり、道幅が広くなった。どうやら十六層に比べて戦いやすい階層にはなるらしい。
しばらく歩くと、真っ白い毛をしたヤギのようなモンスターが現れた。二体出てきたので杉田さん達とそれぞれで対応する。
「アドミラルゴートだ。まず、雷魔法は通じない。そして、角から雷撃をしながら突進してくるし、角に貫かれたらかなりの深手になる、注意しろ! 」
「はい! 」
アドミラルゴートの片方にマジックミサイルを当て、こっちに気をひかせる。片方はこれでいいだろう。もう片方は……杉田さんたちが戦い始めた。これでそれぞれ戦えるな。
こちらに振り向いた一体が、ゆっくりとこちらに……実際は早いのかもしれないが、俺の視点ではゆっくりと向かってくる。そして、しっかりと前に突き出された角の間に電流がバチバチと音を立てて放電現象を起こしていた。
どうやら、この立派な角と角の間の雷撃がアドミラルゴートの攻撃手段らしい。どっちも厄介だな。くっつけば雷撃を受けてスタンさせられるかもしれないし、それで距離を取ればきっと、角を使って突撃してくるのだろう。どうするのが正解かな。
「まずは攻撃してみることが大事よね。うまく当たらない可能性もあるけど、それはそれで戦訓を得て慣れていかないといけないわ」
彩花がそう判断し、ゆっくり向かってくるアドミラルゴートに対して火魔法を打ち、このご立派な名前の付いたヤギを燃やす。
どうやらアドミラルゴートの毛は火に強いらしく、大きなダメージがあるようには見えない。雷魔法も効かないらしいし、これはちょっと戦闘手段に困りそうだな。だが、本当にそうなのか、というのは試しておくべきだろう。どんなに少なくとも、マジックミサイルとエネルギーボルトは攻撃手段としては有しているので、それぞれを試してもいい。
もう一度マジックミサイルを撃ち込んで様子見をする。攻撃が効いているのかどうかは……いや、足には来てるな。ちゃんとダメージは通ってる、とみるべきだろう。もう一発ぐらい打ち込めば倒せる可能性は高い。
「だいぶ来てるわね。ちょっと全力戦闘で切ってきてみるわ」
彩花が最大スピードを出して一気にアドミラルゴートに肉薄すると、角と雷のアーチを避けるように前方からグルリと右サイドに回って、胴体だけを切り落とすようにしっかりと刃筋を立てて切断する。物理的な攻撃は通常通り効果があるようで、綺麗に真っ二つにされたアドミラルゴートは黒い霧に変わっていった。
「物理が一番手間取らない、か。一匹ずつ相手にするならどっちかがヘイトを取って、その間にもう一人がぐるっと回って切り刻むのが早そうだな」
「まあ、正面から殴れないのは面倒だけれど、服を着てて服の防御があったりで複数回攻撃しないといけないとか、今のところはなさそうなのがまだ楽なところかしらね」
「そうだな……ドロップ品が出るまではとりあえず次々に戦い方を考えながら進むとするか」
こっちのほうが戦闘が早く終わったらしく、アドミラルゴートを倒した杉田さんたちがこっちを向いて大丈夫そうだったかどうかを確認している。
「予想より早く終わったな。もう少し苦戦するかと思ったぞ。正面から相手すると面倒なんだが……どうやら二人で戦うなら問題なくできそうだな。本当にまだ学生なのか? 」
「近接で相手できるなら二対一でどうとでもなります。そこは信用してもらっていいかと」
「よし、じゃあさっそくダンジョンコアを探しに行こう。この次の階層がまだあるなら、さすがにそこにはダンジョンコアは安置されてるだろうからな。この階層で終わりなら、この階層のどこかにダンジョンコアがある小部屋があるはずだ。そこまでたどり着いたら……どうする、どっちがダンジョンコアの破壊をしたかの証明書をギルドに提出しなきゃならないんだが、やってみるか? 」
「以前のクイックインスタンスダンジョンで聞いたのですが、それを提出するほうがギルドへの貢献が認められるのでしょう? それを受けるとどのような効果があるのかはわかりませんが、面倒ごとが増えるだけならぜひともそっちでやってもらいたいもんですが」
「ふむ……まあ、ダンジョンコアを見つけてから詳しく話を始めることにするか。それまではしっかりモンスター退治に精を出すことにしよう。行こう」
杉田さん達もそこそこ戦える……こういういい方は失礼だが、戦闘係数から考えるに俺と彩花が本気で戦った場合、こっちのほうが同じモンスターに対しては圧倒できるのは間違いないのだから、全力を出すのはほどほどにしてぎりぎりの戦いをしてるように見せかけておくほうが便利なのは間違いないだろう。
「さあ、モンスター密度が高いですし、三匹四匹出てきた時が問題ですが、うまくスイッチしながら戦えるように頑張りましょう」
そのまま杉田さん達と交互にヘイトを取り合いながら相手の横っ腹を攻撃する……というやり方でうまく進んでいき、モンスター密度の高いところでも潜り抜けることができた。さすがに四匹同時に出てきた時は、攻撃を同時にすることはなく、二匹ずつ釣っては釣った相手と逆のアドミラルゴートをお互いに攻撃しあってきっちり倒していく。
他のパーティーもいるはずだが、どっちに進んでもモンスターがいるのでなかなかに戦い甲斐があって、専用ダンジョンと同様の経験値やドロップ率をもらうことはできないが、それぞれのモンスターとの戦闘経験を、他人の援護がある状態で学ぶことができている現在はかなり勉強になる形で探索を進められている。
しばらくたって、小部屋を見つけその小部屋に入ると、小部屋の中には光る台座とその上に鎮座する丸い玉が見て取れた。
「やっと到着か。満足……とまではいかないが、充分な戦いはできたし、レッドスパイダーにはうんざりさせられたがちゃんと仕事をしてきた、という証にはなるだろう」
「画像、画像撮らなくちゃ」
彩花がしきりにスマホでダンジョンコアとそこに入る自分を撮影している。周りにモンスターがいないのが分かっているからできることであって、もしこれが十六層だったら写真撮影してる間に上から吊り上げられて……となっていた可能性があるな。
「さて、さっきの話だが、インスタンスダンジョンの最終踏破者には、踏破階層一層あたり3万円の報奨が用意されているんだ。今回の場合、十七層までできているから全員で51万円、ということになる」
「……なるほど、それでみんな報告をしたがるわけですか」
51万円ともなれば大金だ。杉田さん達四人で割っても12万円ちょっと。俺たちを含めたとしても85000円。確かに頑張った分の報酬としてこれは大きい。
「で、ここで相談なんだが……人数割りで山分け、ということでどうだろう。こっちは四人でそっちは二人だが、パーティー的には一対一だ。ここはパーティーで取り分を山分けするのが筋なんだろうが、割と俺たちも頑張ってたと思うんだ。そこを納得してくれれば……」
「わかりました。人数割りで行きましょう」
「ちょっと幹也、それって私たちが四万円ぐらい損する計算になるわよ、いいの? 」
「その分こっちは四万円分以上の経験を積ませてもらった。二人で十六層に初めて潜って、レッドスパイダーに捕まってどうしようもなくなってたかもしれない。その可能性を考えると、今回は指導料としてそのぐらい向こうに譲歩しても悪い話じゃない。それに、一方的に人数を盾にして言うことを聞かせたりしない分だけ彼らはいい探索者だと考えられる。だから、ここはこっちももらえる分だけもらえる、ということで納得しておくほうがいいと思う」
コメント
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読み終えたよ〜!!第268話「祭りは終わり」、おつかれさまっ🥺💕 アドミラルゴートとの戦闘シーン、めっちゃ具体的で想像しやすかった!雷が効かないのに物理でバッサリってのが逆に新鮮で、戦略考える楽しさが伝わってきたよ🔥 それに最後の報酬の話、幹也くんの「指導料として」って考え方にじーんときた…大人だなあ、って思うと同時にこのパーティーの信頼関係がじわじわ沁みる😭💕 彩花ちゃんがダンジョンコアの前で写真撮ってるシーン、可愛すぎて笑っちゃった📸 次も楽しみにしてるね!