テラーノベル
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■事務所様、ご本人様、関係者様とは全く関係ございません。
□転送装置の誤作動で ru の世界に飛んでしまった lr の話
目を開ければ、そこは俺の知らない場所だった。
「…はい?」
俺は転送装置を使って『エデン中央都市』へ帰ろうとしていたはずだ。
こういう言い方は違和感を覚えるが、俺の世界は日本に暮らしている人たちから見ると『近未来』と言い表すことのできるレベルらしい。
目の前にあるのは山だ。
大きな山脈がまるで壁のように目の前に立ちはだかっている。
一体、この先に何があるのだろう。
うーん、と唸っているとガサッと近くの草むらから音が聞こえる。
咄嗟に振り向き、後ろに飛び退いて距離をとれば『それ』は現れた。
黒と白の二色で構成された、ぷくっとした、愛らしい…に分類されるだろう生物。
ふよふよと、俺の目の前で浮いてこちらを見つめている。
「……ん゛~?」
どっかで見たことある気がするんよな~?
どこだっけ?
「い゛っ!?」
そんなことを考えていたらものすごいスピードでその生物が突っ込んできた。
運良く上着の中に隠している拳銃を掴めたとしても一撃はくらってしまうだろう。
どのくらいの威力があるのか全く想像が出来ず、自分に訪れるだろう痛みに覚悟を決めた。
「誰の許可得てその人に触ろうとしてんだ、てめぇ」
聞き覚えのある、いや、聞き慣れた声。
落ち着いていて、低くて、心地よいと感じる声。
黒白の生物が目の前で真っ二つになり、そのまま消滅する。
その先でひらひらと布が揺れている。
「無事で良かった。ロレさん」
「小柳…?」
普段とは少し様子の異なる小柳が駆け寄ってくる。
あぁ、ヒーロー衣装だからか…髪が伸びてるからか…そりゃ、雰囲気変わるわな。
っていうか、何で小柳がこんな所…に…
「あ゛っ!?」
「えっ?」
「あの黒白!ヒーローが戦ってるやらなんやらのコザカシか!!」
「間違ってはないんすけど惜しいんすよね」
実際に出会うことは無かったから完全に頭から抜けてしまっていた。
コザカシと小柳がいるということは、ここは…
「小柳の世界に、来ちゃった?」
「まぁ、そうなりますね」
………なんで?
「転送装置の誤作動です。ロレさんが使用した時に偶然誤作動が起きてしまって、俺たちの世界に行先が変わってしまったとか」
「マ…?」
「その話をこれまた偶然俺が聞いて、追いかけたって感じっすね。まぁ、誤作動のせいで座標もおかしくなってたから、ロレさんは本来到着する場所とは異なる場所に送られたんすけど」
つまり…小柳は俺が異なる世界、しかも小柳たちの世界に飛ばされたと聞いて急いで助けに来てくれたと。
しかも、何処にいるか分からない俺を。
「ヒーローやん」
思わず、声に出してしまった。
いや、小柳がヒーローであることなんて分かってることなんだけど。
でも、そう思っちゃったっていうか、いつもの小柳からはそういうの感じないから新鮮だったというかね?
と思いながら、どう取り繕うかと考えていれば黙っていた小柳が口を開く。
「確かにヒーローっすけど、ロレさんを急いで追いかけたのは大切な人だからでヒーローとか関係ないっすよ」
……う゛ぅわぁ!!
なんだこいつ、なんだこいつ、なんだこいつ!!
てか何で俺もこんなに照れてんの!?
別に、こういうの普段から言ってくることもあるんだから今更じゃない!?
……ヒーロー衣装だからか…!?
いつもとちょっと雰囲気が違って、普通に、その、格好良いなって思ったけどさ!?
「この姿をお気に召してもらえたようで」
「心読むな!?」
「めちゃくちゃ口から出ていたが?」
まさか垂れ流しになっているとは思わず、小柳の指摘に顔が熱くなるのを感じる。
それを誤魔化したいという気持ちもありって上着の中から拳銃を取り出す。
「え、えーっと…自衛くらいしか出来ないかもだけど、これもコザカシに効く感じ?」
「特殊なモン使ってるわけじゃないんで効くと思います」
「そっか……あー、えっと、ここから転送装置まで結構かかっちゃう?」
「少し歩きますね。でも日が落ちる前には辿り着けるかと」
「そっか」
基本的に戦闘は小柳に任せるようにした方がいいだろう。
レオスが作り出した変な生物とかそういうのを相手にしたことがあるとはいえ、この世界の住人は俺ではなく小柳で、俺が動くよりは小柳に従った方が絶対に良い。
それを小柳に伝えてみれば「そうっすね」と頷かれた。
なんとなく先輩として情けない気もしたが、邪魔になってしまう可能性が微々としてもあるのだから仕方ない。
「とりあえず、自分に向かってくるのがいたら迷わず撃ってください」
小柳がそう言った直後に周りからあの生物がわんさか出てくる。
「おっほ…」
思わず出たわ。
「まぁ、大丈夫っすよ」
「へ?」
「俺が、一匹たりともロレさんに近付けさせないんで」
目の前から小柳の姿が消える。
いや、消えたんじゃなくて速すぎて目で追えていないだけだ。
美しい所作のせいだろうか。
次々とあの生物が斬られ、伏せ、消滅していく光景が広がっているというのに静かだ。
踊ることが出来る男とは知っていたが、あんな映像に残しているような激しいものではない。
まるで舞だ。
布をひらつかせながら、舞うように一匹、また一匹と確実に落としていく。
最後の一匹が何もしてこないから戦えないと判断したのか俺に向かって飛んでくる。
「はあ゛?」
美しい舞が荒々しく乱れ始める。
ドスの効いた声と共に俺の目の前に現れる小柳の背中。
「馬鹿なことしなけりゃ楽に殺してやったのに」
舞は何処へ消えてしまったのか、小柳の動きが狩りをする獣へと豹変する。
激しく荒々しいというのに繊細だった。
そんな豹変した小柳を見た俺は
「……俺のこと好きすぎじゃない?」
と、どこかずれた感想を口にしていた。
・
・
・
コザカシもといKOZAKA-Cを倒した俺たちは街の中へ入る。
どのような感じなのかと思ったが、日本に近く気楽に過ごせそうな良い街だった。
「KOZAKA-Cは街の中でも当然のように現れます」
「そうなんだ」
「普段やっていることは本当にしょうもないことばかりですけど、中にはさっきの個体のように明確に人間を襲ってくるものもいるんで気を付けてください」
そう小柳が言った直後、少し先の方から悲鳴があがる。
急いで悲鳴の聞こえる方向へ走れば、KOZAKA-Cが砂場で遊んでいる子供を人質にとっているのが見えた。
手にはオモチャのように見えるが威力はなかなかありそうな武器を持っており、それを容赦なく振り下ろしている。
「くそっ、あの野郎っ…!」
だから俺は引き金を引いてやった。
「えっ」
乾いた音がその場に響く。
子供を人質にとっていたKOZAKA-Cが、ぶるぶると震えた後に消滅する。
持っていたオモチャは子供に当たることなく地面に落ちた。
「俺の方が速いね。これからもそうだけど」
「ロレさ…ん…」
「都市警備部隊に所属してて良かった~って思ったわ、今」
「ロレさ~ん!!かっけぇ~!!」
「んふふっ」
そこからは基本的に小柳に戦闘を任せながらも俺もフォローに入るスタイルに変えて進むことにした。
順調に進んで進んで進みすぎて、あっという間に転送装置の前に辿り着く。
「せっかく小柳の世界に来れたのに、もう終わりか~」
「もっといてほしい気持ちはありますけど、見てもらえたように意外と危ないっすからね」
転送装置から少し離れて俺を見送る姿勢をとる小柳。
俺はそんな小柳に歩み寄り、ずっと着けていた仮面を外して口付けてやる。
「最後くらい、俺のことちゃんと見てくれていいんじゃない?」
「…引かれるくらいには見てましたよ。多分」
「引かれる程のガン見マ?」
「この世界で隣にロレさんがいるとか嬉しすぎるから」
「…あっそ」
本当にこの男はドストレートで素直で困る。
顔が熱くなるのを誤魔化すために、もう一度口付けてやった。
「俺の世界にもいつか来てよ。案内する」
「え、いいんすか?絶対に行きます。お泊りセット用意しとくんで」
「当然のように泊まっていこうとしてる?」
「はい」
「お前のそういうところ嫌いじゃないよ、俺は」
まさかのお泊りの予約をされてしまった。
俺もまた帰る必要が無い時に泊まりに来てやろうかな、なんて考えたりして。
「じゃあね、小柳。また」
「はい、また」
転送装置を起動させて、世界を移動する。
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・
・
と、思っていた時期が俺にもありました。
つい最近見たばかりの壁のように並ぶ山。
つい最近見たばかりの草むら。
つい最近見たばかりの光景。
「何でまたここに戻ってきてんだ~!!!!!」
「ロレさーん!!」
「小柳ー!?」
どうやらまた転送装置に誤作動が起きたらしい。
そんなことあってたまるかと思うが起こってしまったのだからどうしようもない。
しかも誤作動が起きた直後にエラーを大量に吐き出し始めたらしく、修理が必要とのこと。
それを聞いた俺は大きなため息をついて、小柳を見て口を開くのだ。
「お泊りセット買える場所に連れていってもらっていい?」
コメント
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オチが最高すぎました。。!神です。