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「なぁ、きんとき。」
多少暖かくはなってきたとはいえ、
まだまだ肌寒い空気が肌を覆う1月の下旬。
こたつに入ってみかんの皮を剥いていた俺に
真正面に座っている、さっきまでテレビを見ていた恋人が話しかけてきた。
俺の名前を呼ぶその声色は、心なしか弾んでいて、
感情を表に出さない彼にしては珍しい、楽しそうな声だった。
…なんだか嫌な予感がする。
コイツが上機嫌に話しかけてくるときは
厄介なことに巻き込まれることが多い。
巻き込まれる前に逃げた方がいい。
そう思い、俺を呼ぶ声から逃げるように
剥いていたみかんを机に置いて、こたつから出ようとした。
ガシッ
「おい。まだ何も言ってないだろ。」
が、ちょうどこたつから出ようとしたタイミングで、
こたつに入れていた足を、彼の俺より少し大きい手で
掴まれた。
「おい、冷てぇよっ」
こたつで温められた足が、彼の冷たい手に掴まれ
ぶるり、と身震いする。
何をするんだ、と抗議のつもりで彼を睨みつけようとすると、
いつもの無表情で、何を考えているか分からない瞳と目が合った。
(あ、、しまった、逃げ遅れた、、)
「提案なんだが…」
あぁ、やっぱり厄介なことに巻き込まれてしまった。
必死の抵抗も虚しく、折角温められた体は
冷たい空気が漂う、寝室へとつれてこられてしまった。
メンバーの中で1番運動神経がいいし、
力勝負もスマイルよりは強い自信があったのに、
なぜかあっさりと抱きかかえられ、寝室に連れ込まれてしまった。
(どんだけ俺とシたいんだか…)
普段は見せないそのやる気を撮影中にも、もっと見せてもらいたいものだ。
そんな呆れた気持ちはあるものの、
俺をベッドに下ろすときに、
俺が落ちないように優しくベッドに下ろしてくれた
彼の優しさに、ちょびっとだけキュンとこないこともなかった。
こんなこと、絶対本人には言わないけど。
ベッドに座りながら、ローションなどの準備をしている
スマイルを見ながら、さっきの「提案」のことを思い出す。
あんな「提案」を嬉しそうに、俺に持ちかけて、
普段の生活では滅多に見ない楽しそうな顔を見ると、
やっぱりコイツは変態なんじゃないかと思う。
そもそも、俺はナカムやシャークんのように華奢でもないし、
女の子みたいに、可愛い仕草だってできないのだ。
なんならメンバーの中では男らしい方だと思う。
だから、こんな俺のことを『好き』だと言って、
可愛さのカケラもない俺を『抱きたい』なんて言う
スマイルは相当イカれてると思う。
そんなことをブツブツ考えていると、
準備ができたのか、スマイルがベッドに上がってきた。
「…きんとき。」
彼の低い声が、脳に響く。
「…ん。」
目を瞑ると、普段の彼の様子からは想像できないほどの
優しく、丁寧なキスをされる。
「ん…んぅ…ふッ…」
口内をじっくり味わうような深いキスに
思わず声が漏れ出てしまい、顔に熱が集まるのを感じた。
「ぷはっ、、はぁ、はぁ、」
口を離すと、スマイルとの間に銀の糸が引いてしまい、
恥ずかしさに目を逸らす。
「…かわいいな。きんとき。」
「なっ、、だから可愛くなっ、、うわっ、!」
ドンっと肩を押され、柔らかいベッドのマットレスに、ぽすっと沈む。
あっさりと押し倒された俺に、スマイルが覆いかぶさった。
仰向けになる俺に、覆いかぶさったスマイルの顔が近づく。
顔が近くでじっくりと見れる位置になると
悔しいけど、やっぱり「顔がいいな」と思う。
先ほどの「提案」のことをすっかり忘れていた
俺は、このあと地獄を見ることになるとは知らず、
呑気にそんなことを考えていた。
そんな呑気な俺を無視し、目の前の悪魔は
悪魔の宣言をしてきた。
「なぁ、きんとき。
メスイキ、頑張ってやってみような♡」