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泣いたあとも、好きでしたー
第一章 泣き虫の朝
朝、目を覚ました瞬間から私は少しだけ面倒な日になる気がした。
理由なんてない。
カーテンの隙間から入ってくる光も、枕元に置きっぱなしのスマホも、昨夜に途中まで見ていた動画も、いつもと変わらない。
それなのに、ほんの少し胸の奥だけが重かった。
「……学校行きたくないな。」
誰にも聞こえない声でそう呟いて、布団の中でもう一度目を閉じる。
その時、スマホのアラームが二度目に鳴る。
スマホの画面には、友達からのメッセージが表示されていた。
《今日、放課後コンビニ寄らん?》
その短い文章に私は少し迷った。
行きたくない気持ちは消えなかった、けど友達とコンビニに行く少しの楽しみを思い出すと、完全に休んでしまうのは惜しい気がした。
「……行くだけ行こう。」
布団から出て、歯磨きをする。その時鏡を見て寝癖のついた髪に気づく。
「最悪」
そう言いながら少し笑った。
こういう小さなことで笑える私を私はきっと嫌いじゃない。
私はよく泣く。
悲しいと泣くし。
悔しくても泣く。
怒ってても泣くし。
嬉しすぎても泣く。
誰かに自分の気持ちを伝えようとすると、どうしてか心の中で言葉に詰まって、喉の奥が熱くなって、気づけば涙が出てる。
だから昔から自分のことは「泣き虫」と思っていた。
もっと強くなりたい。
何を言われても平気な人になりたい。
泣かずにちゃんと言葉にできる人になりたい。
ずっとそう思っていた。
学校へ到着し、教室へ入ると友達の里恋がすぐに手を振ってくれた。
「おはよー!今日めっちゃ眠そうだね?」
「昨日遅くまでゲームしてたから」
本当は眠れなかっただけだった。明日のことを考えたり、昔のことを思い出したり。そんなことをしているうちに時計の針は進んでいた。
里恋はそれ以上聞かなかった。
「ん〜、じゃあ帰りは甘いものだね」
「ね、賛成」
くだらない話をして、笑って、席に着く。
それだけで朝から胸にあった重さが少しだけ軽くなった。
1時間目の終わりに、私はノートを閉じながらふと思った。
学校に来る前までは、今日一日を乗り越えられる気がしなかった。
でも今は、放課後までなら頑張れる気がする。
何気ない会話。
目が合って笑うこと。
休み時間に一緒にいること。
帰りに寄り道すること。
あとから思い出せばこんなことで?と思う時間。
でも、その時の私はその一つ一つの時間に心が救われていた気がする。
第2章
大切な人は、ずっと隣にいるとは限らない。
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放課後コンビニへ向かう途中、駅前の小さな公園を通った。
ベンチの横には古い自動販売機がある。昔、里恋とここでよく飲み物を買った。
里恋とは何年も一緒にいる。
笑った日も、くだらないことで怒った日も何度もあった。
帰り道に同じ曲を聞いたり、テスト前になったら一緒に勉強したり、何も話さずに隣を歩いたりもした。
だから、ずっとこのままでいられると思っていた。
でもそうじゃなかった。
ある日私たちは喧嘩をした。
きっかけはほんの小さな言葉の入れ違い。
私は相手の言葉を悪く受け取り、相手も私の発言に怒りを覚えた。
「もう知らないから!」
そう言ってしまったのは私だった。
言ってしまった直後から後悔していたのに、謝ることができなかった。
翌日から私たちは同じ教室に居ても全く話さないようになってしまった。
その間に、私は別の友達と仲良く過ごしていた。笑える時間は増えたし、寂しさも減った。
「もうこのままでもいいかもな。」
そう思ったことも何度もある。
けれど、駅前の自動販売機を見たり、一緒に遊びに行った場所などへ行くと、どうしても里恋の事を思い出していた。
ーー里恋、元気かな。
喧嘩をして一度嫌いになったはずなのに。
すごく傷ついたはずなのに。
どうしてこんなに気になるんだろう。
ある日の帰り道。私はスマートフォンを手に取りメッセージ画面を開いた。
《久しぶり、少し話せないかな?》
この文を送るために、打っては消して売っては消してを繰り返していた。
送信ボタンを押すだけなのに、なかなか勇気が出ない。
もし無視されたら。
また責めてしまったら。
今度こそ、本当に終わりになってしまうかも。
そんな考えが頭によぎる。
怖かった。
それでも、何もせずにいる方が苦しかった。
私は目を閉じて送信ボタンを押した。
しばらくして里恋からの返信が来ていた。
《緋夏、久しぶり》
《私も話したかった。》
里恋からの返信を見て私は涙が出てきた。
翌日、私たちは放課後の教室で向かい合った。
初めはどちらも黙っていた。
私は何度も言葉を探したあと、ようやく口を開いた。
「この前はごめん。怒ってて、強く当たってしまったけど嫌いなわけじゃなくて…!」
声が震えた。
里恋は目を伏せて、小さく言った。
「私もごめん。ずっと謝りたかった。」
すぐに昔のように戻ったわけではない。
気まずい沈黙もあったし、以前と同じように話せないことだってあった。
それでも帰り道に里恋が笑って言った。
「あの自動販売機でまた飲み物買おうよ」
私は泣きそうになりながら返事をした。
「うん」
それから私は知った。
「大切にする」ということは、ずっと傷つかないことではない。
一度壊れたものを無かったことにするわけでもない。
傷ついたままでも、怖いままでも、自分の気持ちを伝えること。
それでも大切だと思えるなら。
もう一度手を伸ばすことなのかもしれない。
そんなことがあっても、私は今里恋と仲良くできている。
今一番の相棒で、親友だ。
コメント
1件
「泣き虫」の自分を受け入れつつ、小さな日常に救われる感覚がとても丁寧に描かれていて、胸に沁みました。里恋との喧嘩と再び手を伸ばすまでの心情の揺れがリアルで、「大切にする」の定義を考えさせられます。続きも楽しみです!
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