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柘榴とAI

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#没入感フィクション
柘榴とAI

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柘榴とAI

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「嘘だろ……さっきから見てた限り、かなりの人数がアンタを追ってココに入って来てるのに。どうやって撒いたんだよ……」
驚愕の表情を浮かべる狙撃手が、巨大なライフルはそのままに。
此方にはハンドガンを向けて来るではないか。
しかも……あの銃は。
「あぁ、なるほど。どこかで見覚えがあるプレイヤーだと思ったら……貴方、以前イベントの一回戦でシックスのチームに大きな被害を与えた方ですか。アタッカー四人を殲滅した、盤面をひっくり返したプレイヤーのチーム。その一人……随分と、シックスをしつこく追っているのですね?」
「黙れ」
彼が手にしているハンドガンは、私達賞金首に配給された……というか、シックスが普段から使っている物と同じ。
現在では装備パックとして販売が開始されたが、多分彼は“本来の形”で手に入れたプレイヤーという事なのだろう。
だってあの試合が終わった後、イベントの生放送に映っていた一人なのだから。
クスクスと微笑みつつ歩み寄ってみると、彼は立ちあがってしっかりとした構えを取る。
しかしながら、撃ってこない。
「貴方の目的はあくまでもシックス。この場で私にキルされるの不味い、と警戒しているのですか?」
「……どうせ、他のイベントと同じ“仕様”なんだろう? イカれた爆弾魔め」
「仕様とは……そんな、人の事をチート扱いしないでくれますか? ただの道具ですよ、他の人でも再現可能なクラフトに過ぎません」
そう言ってから、聖職者衣装とも言えるソレのファスナーを開き、相手に自らの身体を見せつける。
これで下が普通の下着姿でした、ではただの変態になってしまうが。
生憎と、私の場合ではそうではなく。
「は、ははは……そのレオタード姿でも、結構な人気を出しているみたいですね? シスター」
「私としては、そっちではなく“作品”を見て欲しいのですけどね?」
彼の言う通り、衣装の下に着ているインナーはレオタードの様なソレ。
とはいえ、コレも防弾で作ったけど。
しかし見せつけたのはそっちではなく、胸の下辺りに付けた電子装備。
そこからワイヤーが繋がれているお腹周りには、これに連動した特殊な爆発物がベルトに繋がれている。
「俺が例えアンタの頭を撃ち抜いても、そのままズドン……1キル取れたとしても、この距離じゃこっちも爆散……」
「えぇ、その通りです。これらは私の心拍をモニターしていますから、止まった瞬間に大爆発。それどころか、今回は建物に仕掛けた爆薬も連動させておきましたので。私が死ねば、この建物その物が消えて無くなります」
ニコッと微笑んでみると、相手は深いため息を零しつつ僅かに銃口を下げた。
「普通のプレイヤーなら、絶対嫌われる戦い方ですね。賞金首をキル出来たとしても、その後の発生する爆発でこっちもやられる。だからプレイヤーには絶対“デバフ”が掛かる、ガンサバでは致命的とも言える能力低下が」
「だからこそ、私を殺す事に躊躇する。近づかれた時点で負けなのですよ、貴方は」
などと会話している内に、建物内から聞える爆発音が近くなって来た。
早い所此方もどうにかしないと、それこそプレイヤーが雪崩れ込んで来そうだな……。
「こうなった以上、本来こっちは自滅覚悟で撃つ以外の選択肢が無くなります。降参した所で、逃がしてくれるつもりなんか無いんでしょう? もしもソレを許してくれるのなら、この建物から逃げる手伝いくらいはしますけど……俺の目的は、あくまでもシックスなので。正直……エイトからのドロップは、俺に合わない。嬉しいのは賞金くらいです」
「フフッ、随分と聞き分けが良いんですね?」
「賞金首は、無暗やたらにキルを取りまくるプレイヤーじゃないって噂に賭けただけです。今回の戦闘だって、エイトとシックスからすれば降りかかる火の粉を払っている様なモノ。だったら、敵意の無い相手と戦う意味は無いでしょう?」
「まぁ、この後もシックスを追いたいのなら……貴方はその結果が一番嬉しいでしょうね」
向こうは本格的に私に興味が無いのか、完全に銃を下ろしてそんな提案をして来たではないか。
普通なら、この状況を打開する為にはソレしかない。
私だって死にたくない、彼もデバフを貰いたくない。
だったらお互いに不干渉を約束し、両者共この場を離れる。
これが一番平和な解決策、それは分かっている。
しかし。
「貴方は、VR内で“死ぬのが怖い”と感じた事はありますか?」
「……え?」
「私は怖いんですよ。ただのゲームだって分かっている筈なのに、心が本気で恐怖するんです。まるで、本当に自分が死んでしまうんじゃないかって感じる程に」
語りながら更に近付いてみれば、相手も警戒した様子で数歩下がるが……向こうは、狙撃ポイントに居たのだ。
その後ろのスペースは、そう広くはない。
「そう感じているからこそ、どこまでも保険を作ろうとする、どこまでも直接戦闘を避ける。コソコソ逃げ回ってばかりで、様々な道具に頼るのが私という賞金首です」
「それって、VR特有の“境目が曖昧になる”っていう、脅迫感情の類じゃ……」
「これを病気だと嘆けば、そうなのでしょうね? でも私は、それを利用して名を上げた人間です。そんな人物が、この状況で……お互い手を出さないから終わりにしよう、という口約束だけで信じると思いますか? …………だって貴方、まだ銃を握っているじゃないですか」
ニコォっと、自分でも分かる程歪んだ微笑を向けた瞬間。
彼は顔を青ざめながら再びハンドガンを構えようとするが。
「遅いですよ」
腰の後ろから此方も銃を抜き、相手に向かって連射。
向こうが腕を上げるよりも早く、此方の弾丸が敵の身体に吸い込まれたのが分かった。
これだけは、ガンサバイブオンラインでも少しは自慢出来る……かもしれない特技。
クイックドロー。
しかしながら射撃が下手くそなので、こんなにも近づかないと当たらないのだが。
だが、octopus8という賞金首の特徴は爆発物。
そして先程の様に、身体に巻きつけた爆弾を見せると……大抵の相手は此方を撃つ事を躊躇する。
だからこその、奥の手とも言える最後のカード。
リボルバータイプの銃をクルクルと回しながら、再びホルスターに収めてみると。
「マ、ジか……エイトが普通の銃を使うとか、どこにも書いてなかったのに……」
「実際、こうして披露したのは貴方が初めてですから。普段は自分で作ったおかしな武装ばかりですからね。でも良い物ですよ、古い武器というのは。どれも単純で、“加工”しやすいので。何より扱いがとても楽です」
クスクスと笑いながらも、胸元の電子端末からケーブルを伸ばし。
彼の服を乱暴にズラしてから、心電図を測る電極をペタッと張り付けた。
45口径の銃弾の連射を腹に受け、蹲っている彼は抵抗らしい抵抗も出来ず。
そのまま、インナーに装備していた爆薬を彼の上に投げ捨てる。
「私は臆病ですから、どこまでも保険を作ります。そして臆病な者ほど……他者を疑うんですよ。信用出来るのは、自分と“同じ”だと思った人物だけ。その人を傷つけようとした敵が居るのなら……私が殺します。だって、殺されたくありませんから。私自身も、“お友達”の事も」
それだけ言って背中のリュックから新しい装備を取り出し、足元にアンカーを固定。
それにロープを通して、スルスルと地面に向かって降りて行けば。
『さっきのプレイヤー、倒さなくて良かったんですか?』
降下している間に、担当サポーターからの声が聞えて来た。
「だって彼も、随分と“本気”みたいですから。そんな人に、私達のデバフを付与しては可哀想でしょう? 遊びでは無いのなら、此方も敬意を払うべきかなと」
私からの攻撃で、かなり深い傷を負っているのは間違いない。
しかしまだ生きているのだ。
それは最後に相手に取り付けた、バイタルをモニタリングする装置が教えてくれている。
心音を感知している内は、何も起きない。
つまり彼が死亡すると同時に、この建物に仕掛けた全ての爆薬が起爆する様に仕向けたのだ。
だからこそ彼は、まだHP全損はしてない。
回復アイテムを使うという手もあるが、このゲームでは使ってすぐに全回復はありえない。
あの傷では、持続ダメージの方が上回ってしまう。
メディックから治療を受けるまで、回復アイテムを使用し続けるという手もあるが……普段からそこまで道具を持ち歩いているプレイヤーが居るかどうか。
今回はチームで攻めて来ている雰囲気はなかったし。
もしもこのまま持続ダメージで死亡した場合は、私がラストキルを与えたという形になってしまう。
こうなれば、当然彼には賞金首のデバフが掛かる。
それを回避する術が、あの状況でも一つだけあるのだ。
“自らの銃で、自らの命を絶つ事”。
他のプレイヤーからキルされるのでも構わないが、賞金首を追い回しているプレイヤー同士で戦うとは思えない。
つまり、デバフを受けたくないのなら自害するしかない。
しかしソレをした場合、彼のバイタルが止まった事が原因となり、建物内の爆薬が作動する。
なかなかキル判定が難しい事になりそうではあるが……これまでの経験上。
私から奪った爆弾のスイッチを彼が押した、という判定になる事が証明されているのだ。
強襲においてのラストキルとは、道具に関しても結構雑。
投げつけられた手榴弾を投げ返せば、投げ返した相手のスコアになるのと同様。
むしろ今の状況では、私が装備を相手に“託した”形に近いのかもしれない。
まぁ相手の銃を奪って誰かを撃っても、ちゃんとその人のスコアとして換算されるのだから当たり前なんだけど。
という事で……現在建物内に存在するプレイヤーの生殺与奪の権は、先程のスナイパーに委ねられたという訳だ。
『はぁぁ……まぁ確かに、賞金首にキルされたっていうデバフを振り撒くには、少々多すぎる数のプレイヤーが集まっちゃってますけど。普通、一般プレイヤーにこんな事させます? もしも私だったら、マジで泣きますよ。あの場に居る全員のキルログに、彼の名前が載る事になるんですから』
「選択を押し付けたのは申し訳ないと思っていますが……私も少々、先程の狙撃に腹を立てましたので。シックスの作ってくれたチャンスを、つまり相手のご厚意を、彼に阻止されてしまった訳ですから。それに、これはルールに則っての戦闘ですし」
『賞金首を演じている時は、どこまでもメンヘラなんですから……怖いなぁ、もう』
などと話している内に、地面に到着。
使い終わった装備一式をその場に脱ぎ捨て、建物に背を向けた所で。
屋上の方から、パンッ! と乾いた音が一発。
「どうやら、選んだようですね。さて、急いで離れましょうか。ナビをお願いします」
呟いてみれば、建物内部からは連続で爆発音が響いて来て……徐々に、建築物のそのものが内側に畳まれる様にして崩れ始める。
主要となる柱を抉り取る様にして設置した爆弾が、先程のスナイパーの死と同時に作動した瞬間であった。
ここへ集まって来た多くのプレイヤーを巻き込みながら、建物は周囲への被害を最小限に抑えたまま瓦礫の山へと変わっていく。
『はぁぁ……怖っわ。そのまま直進すると、あと二分で営業を開始するホテルがありますから。そこでログアウトしましょう』
「なるほど。営業開始と同時に飛び込めば、他のプレイヤー達の警戒も薄いかもしれませんね」
『まぁ、ラブホなんですけど』
「…………え、あの、え? あんまりこういう事は言いたくない、と言いますか。自意識過剰とか思われるかも、なんですけど。担当さん……その、セクハラ……ですか? 普通、修道女をそんな所に案内します?」
『急に素に戻らないで下さいよ! さっきまでのテンションどこいったんですか!?』
という事で、何だかんだ忙しくなってしまったイベントは幕を下ろした。
私の方は、だけども。
シックスの方は、無事にログアウト出来ただろうか?
コメント
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あらためて読み返すと、エイトの戦略の狡猾さと、その裏にある臆病さのギャップがたまらないですね。スナイパーとの駆け引き、お互いに手を出さない選択肢をわざと潰して追い詰める心理戦、そして最後の「自害させる」という選択肢の押し付け方――本当に計算し尽くされてる。ラブホに案内されて素に戻るところも好きです、人間味が出てて笑っちゃいました。シックスが無事かどうか、気になりますね。