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前回の続き
ワンクッション
数日後
「スイサイド〜!どこ行くのさ〜?」
明るく声をかけながら、俺はスイサイドの後を追う
ナイフをくるくる回しながら、彼の背中を見つめる
『はぁ…またお前か…』
めんどくさそうに振り向くスイサイド
でも、その目はほんの少しだけ、警戒しているのが分かった
「え〜?俺が来たらダメ?」
『…そういうわけじゃねぇけど』
「じゃあ、いいじゃん!」
笑いながらそう言う
でも軽いノリ、無邪気な態度。全部、”偽り”
俺は、俺自身を守るために”偽る”
別に痛みが好きなわけじゃない、快楽殺人鬼なんかじゃない
だけど”そう”でいないと、俺は俺を保てない
「なぁ、スイサイド」
『…なんだよ』
「俺ってさ、変かな?」
スイサイドがピタッと足を止める
振り向いたその目が、珍しく真剣な色をしていた
『…何言ってんだよ、今さら』
「いや〜、なんかふと考えちゃって」
『お前が普通じゃねぇのは知ってる』
「あはっwそれひどくない?」
『でも、”なんで”そうなったのかは知らねぇ』
スイサイドが目を細める、俺のことを探るような視線
でも、俺はそれに対して、ただ笑うだけだった
言えるわけない
言ったところで、理解されるわけがない
『…まぁ、お前が何考えてんのかなんて、俺にはわかんねぇけどよ』
「うん」
『一つだけ言えるのは、”無理してるなら、やめとけ”ってことだ』
「……」
『俺は、お前みたいになりたくねぇからな』
「…ふふっ、そっか」
俺はまた、笑った
痛みを押し殺して
偽ることでしか、自分を守れない俺のままで
——シアワセに慣れる日は、いつ来るんだろう
また、数日後
「スイサイドぉ〜、見〜つけたっ♪」
『……またかよ』
ため息混じりに、スイサイドが振り向く
いつものことだから、もう慣れたのかもしれない
だけど
今日は、少しだけ違う
「ねぇ、スイサイドはさ”痛み”って好き?」
『はぁ?』
「俺ね、好きなんだ〜だって、痛いってことは”生きてる”ってことじゃん?」
『……お前さ……』
「昔はね、痛いの嫌だったんだよ?でもさ、耐えて、耐えて、耐え続けて、気づいたんだ」
俺は、にこにこ笑いながらスイサイドに歩み寄る
「痛いのが”普通”になれば、もう怖くないんだよ?」
『……っ』
スイサイドの表情が、ほんの一瞬だけ、苦いものになる。
それが、”楽しい”
「ねぇ、スイサイドはさ、俺のこと”普通じゃない”って言ったよね?」
『……あぁ、言ったな』
「じゃあ、普通ってなに?」
『……』
スイサイドが答えない
それも当然だ だって、”普通”なんて誰にも分からない
「俺はさ、”普通”になりたかったんだよ」
『……』
「でもね?俺が”普通”になるためには、”痛み”を受け入れるしかなかったの」
ナイフを持つ手に、力を込める
「あれ?なんで俺、ナイフ持ってるんだろ?」
『お前……』
「ねぇ、スイサイド”普通”になる方法、教えてよ?」
『……知るかよ』
「そっかぁ……」
俺は、にっこりと笑う。
そう、笑うしかない。
だって、俺はもう”普通”には戻れないから
「じゃあ、俺はこのままでいっか♪」
スイサイドの視線が、一瞬だけ鋭くなる
でも、何も言わない
いいよ、それで
だって、”どうせ理解なんかされない”んだから
俺は俺を偽るしかないし
壊れたまま、笑ってるしかないんだから