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彼は郵便受けに“異物”を見つけた。
一冊の黒いノート。目立つほどではないが、どこか“場違いな存在感”を放っていた。
『DEATH NOTE』
それを見た瞬間、彼は一度だけ息を止めた。
そしてすぐに、ふっと鼻で笑う。
_まさか。本当に存在するわけがない。
ただのイタズラか、熱心な“オカルトマニア”の仕業だろう。
そう思った。
部屋に戻り、ソファに腰掛けたままノートを開く。
薄く乾いたページに記された、奇妙なルールの数々。
「このノートに名前を書かれた人間は死ぬ」
「死因を書かなければ心臓麻痺となる」
「顔を思い浮かべながら書かなければ無効」
_そこに書かれていたのは、
かつて“漫画の中の出来事”として読んだ、あのルールと一言一句違わぬ内容だった。
「……へぇ、よく出来てる」
声に出してみる。笑うでもなく、ただ淡々と。
「でも、フィクションだと思ってたものが、実在したとしたら__
その世界は、どこからが“現実”になるんだろうね」
誰に語るでもなく、ただ虚空へと呟く。
彼は、ノートを膝の上に置いたまま、うっすらと微笑んだ。
_______その夜。
部屋の中の空気が変わった。
部屋の隅、影の中から、何かが“にじみ出る”ように姿を現す。
ガリガリとした骨ばった体躯。歪な羽根。発光する瞳。
死神・リューク。
どんな人間でも悲鳴を上げるはずのその存在に対し、彼はほんの一拍の沈黙ののち__
「へぇ……本当に、いたんだ」
それだけを言った。
笑いもしない。動揺もない。ただ、軽く感心したような声色。
リュークは思わず目を細める。
「おいおい……普通もうちょっと驚くもんだろう?お前さんの驚く顔を楽しみに来たのにガッカリだぜ…死神の威厳が失われるっていうかよぉ……」
「驚くべきかどうか、判断するにはまだ早いよ。
君が“本物”なら__僕の想像よりも世界は、ずっと面白いってことになる。」
青年はカップを持ち上げ、紅茶をひとくち啜る。
「“DEATH NOTE”って漫画、読んだことあるんだ。
あれ、面白かったよ。構成が巧みで、登場人物の心理もよく描けてた。
ただ__少し、演出が足りなかったね」
リュークがくつくつと笑い始める。
「へぇ、お前……ライトのことも、ただのキャラだと思ってたんだな?」
「うん。
でも……もし彼が本当に存在したっていうなんら、
僕は彼よりも、ずっと観客を楽しませてみせるよ」
「はは、こりゃヤベェやつに当たっちまったかもなぁ。まぁ、俺を楽しませてくれるんなら良いか…あとリンゴも。」
彼の目がわずかに細められる。
その笑みには、あの月にも無かった__純粋な“遊戯者”の色が宿っていた。