…樹状細胞は、がん免疫療法に使われる事がある。
がん患者の単球(未熟樹状細胞)を採取し、培養液でがん細胞の断片を覚えさせる。その後、樹状細胞を体内に戻し、ヘルパーT細胞に指令を出させる。
擬人化して見れば、、誘拐みたいな物でしょう。
幼い単球は、それが、体内のためとなるとも知らず、ね。
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樹状細胞と貴方は、楽しくお茶を飲んでいる。
そう、談笑に花を咲かせながら…。
「ねぇ、ちょっと聞いてほしい事があるんだ。ふふ、君の反応がみたいだけ☆」
そして、クスッと笑みをこぼした。
「君は細胞ってなんだと思う?」
樹状細胞は優しい眼差しで問いかける。
「ふふ、僕はね…」
そう呟く。
「骨髄や、胸腺で生まれ育ったり細胞分裂したり、死ぬまで、死んでも尚、この体の為に利用され続けその限られた生命の中で、ひとつひとつが何を成し遂げ、散っていくのか…」
そう静かに言うと樹状細胞は酷く寂しげな表情で微笑んだ。
「ふふ、この体の持ち主も、それを知っててもいいと思わないかい?
こんな話をしている間にも、細胞達は、はたらいているんだし…」
そして樹状細胞はティーカップを口元に当て、中の紅茶をゆっくりと啜った。そしてカップをソーサーに置く。
「結論ね、細胞が一ついくら努力したって、何も起こらないし、まぁ細胞一つが引き金になることはあるけどね…細胞一つの出来ること、それは他の細胞と力を合わせる事、それしか出来ない。」
冷たい沈黙が全てが木でできたこの部屋に纏わりつく。
冷たい沈黙の後、樹状細胞は口を開いた。
「…うん、そうだよ。」
樹状細胞は彼の膝の上で握り拳を固める。
「言ってしまえば、この体の持ち主も、世界のいいように扱われているんだ…」
樹状細胞は彼自身の心の内を晒すまいと、微笑み、取り繕っている。
「あっ、」
と、樹状細胞が声を漏らした。
「ごめんね、今日、胸腺で未熟胸腺細胞達の負の選択のお手伝いに行くんだった〜残念だけど、また一緒にお茶飲もうね☆」
樹状細胞は時計の方をチラッと見た後言った。
樹状細胞の口調や表情がいつも通りの”優しいお兄さん”に戻り、なんだかんだで樹状細胞との御茶会議はお開きになった。
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