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#主人公最強
#ハッピーエンド
海の紅月くらげさん
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「状況は知ってるだろ? あと一時間半で月が地球に落ちてくる」
カイルの言葉に、ムーが困惑する。
――月の衝突の情報、何故彼らが知っている?
ムーはハッとしてあたりを見渡す。通信機が床に転がっていた。
「奴らと話したのか! ガロン!?」
『あはは。彼らも月が落ちること自体は知っていたようですよ?』
通信機越しに、ガロンが平然と言った。
ムーは苦虫を潰したような顔で、カイルに向き直る。
「私たちが貴様の提案に乗る必要はない! そうだ、この世界が月の衝突で焼け野原になるなら、侵略の意味はもうない。我々は撤退する。イクリプスを壁にして私は帰らせてもらう!」
『あー、それ無理のようです』
通信機越しに、ガロンが言った。
『月は隕石世界の輪を押し広げながら、この世界を埋め尽くすでしょう……でも、それだけで止まりません。宇宙人世界の輪を通じて私たちの世界をも蹂躙していくようです』
「なッ……いや、それなら輪を閉じて……」
『あのゲートは閉じれません』
「……だったら、そうだ、輪を二つ用意すればいい! 二つの輪を重ねて、月が我々の世界を素通りする構造を作るんだ!」
『実はそのくだり、一度やったんですよ。イクリプスを通すため、私たちのゲートは拡張された。あなたの案を通すなら巨大化した輪に合わせて、超巨大召喚陣……直径四キロの円を用意せねばなりません』
「直径四キロの円? なら問題ない! イクリプスが丁度そのくらいの大きさ……」
ムーが頭を抱えた。
「どの道イクリプスが必要じゃないかッ!」
カイルがムーを指さして、通信機に話かえる。
「ひょっとしてアイツ、面白い?」
『ちょっと』
カイルがムーに握手を求める手を差し出す。
「そんなわけで、お前たち的にもイクリプスは守らないといけないわけだ。手を組もうぜ」
ムーはカイルの手を突っぱね、不機嫌そうに鼻を鳴らした。
「我々と貴様ら原始生物との間で、対等な同盟が組めると思うな!」
『あ!』
通信機の奥でガロンが驚いた声を出した。
リシェルが首を傾げる。
「何かあったんですか? ガロンさん」
『通信です。今、仲間が皇子との戦闘で死にました』
沈黙が降りる。
リシェルの身内が、ムーの仲間を殺した。
同盟結成の交渉中に舞い込んだ情報としては最悪の部類だった。
誰も言葉を発せられなくなる。
沈黙を破ったのは、ムーが鼻を鳴らす声だった。
「我々と貴様ら原始生物との間で、対等な同盟が組めると思うな!」
カイルとリシェルが顔を見合わせる。
「マジか、さっきの流してリスタートしてくれんの?」とカイル。
「こいつは交渉の余地がありますわぁ」とリシェル。
『想定よりちょろいですよ、ガンガン押していきましょう』とガロン。
彼らはヒソヒソ話の体で会話していたが、声量的に、丸聞こえだ。
ムーの身体は屈辱でピクピクと震えていた。