テラーノベル
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王城の屋根の上。
瓦礫と炎に覆われた王都を、クレスは静かに見下ろしていた。
黒煙の混ざった上昇気流を見送るように、視線を上げる。
巨大な影――宇宙戦艦イクリプスをじっと見つめる。
「……さすがに七人分の力となると、馴染むのが遅かったな」
クレスが両手を手前にかざすと、空気が歪んだ。
炎、雷、嵐、砲撃、衝撃波、氷、光、七つの力が彼を中心に脈動している。
突如、クレスの足元に氷の大砲が生じ、砲身に雷の渦が巻いた。
炎と光のエネルギーが竜巻の中に閉じ込められ、収束し、衝撃波で圧縮されていく。まるで太陽を押し縮めたような、赤くきらめく球体が出来上がる。
「僕の仲間が命を捧げた弾丸だ、喰らえ」
轟音とともに、一筋の赤い光が地上からイクリプスへと伸びていく。
宇宙戦艦イクリプスの外殻に、赤い点が灯った。
遅れて、爆発が円状に広がる。
イクリプスの装甲が千切れ、黒い破片が降り注ぐ。
直径百メートルはあろうかという巨大な穴が、船体の中央に穿たれていた。
都市全体を覆っていた影が、グラリと揺れる。
イクリプスの外殻が生物のように蠢き、破壊された部分へと集まっていく。
しかし――。
「再生は追いつかない、か」
クレスが薄く笑う。
イクリプスの内部では、警報が鳴り響く。
『外殻損傷率 47%』
『第六装甲層 崩壊』
『主砲区画 機能停止』
『重力安定装置 異常』
艦体がグラグラと揺れ、ゆっくりと高度を落とし始めた。
その光景を、王都中のゾンビたちが見上げていた。
「悪くない。次の一発は耐えないね」
クレスがまた氷の砲台を作ろうとしたその時、黒い影が空から落ちてきた。
衝突。
クレスの身体が吹き飛ぶ。
レンガ造りの家々を三棟ばかりブチ抜きながら、クレスは吹き飛ばされていく。
瓦礫の中でクレスが立ち上がり、首を鳴らす。
「……おかしいな、君はさっき殺したはずだが?」
煙の向こうに立っていたのは、異形だった。
黒い外殻に、胸部のコアから青い筋が広がり、脈動している。
ムーが、拳を振りかぶった姿勢のまま止まっていた。
「もう少し、遊んでもらうぞ」
ムーの装甲が展開した。
黒い外殻が開き、その下から厚い多層装甲がせり出す。手足が盾のような巨大なプレートに覆われていく。
胸部のコアは三重の装甲の奥に沈み、青い光だけが隙間から漏れていた。
ゼレノアQの対極。機動性を捨てた、純粋な防御形態。
「戦闘装甲、ゼレノアB」
ロケットランチャーの絨毯爆撃でも煤ける程度、戦車砲でも傷一つつけられない――。
――という装甲が今、一瞬で打ち砕かれた。
ノータイムで距離を詰めたクレスが、ムーの身体を上下二つに引きちぎる。
「格上相手にそれはない。さっきの特攻型のがまだマシだったよ……」
言い捨てて去ろうとするクレスの足を、ムーが掴んだ。
ムーの身体の切断面で筋肉と骨が蠢き、つながり、徐々につなぎ目も癒えていく。
「嫌になるね……君まで再生するのか?」
再生能力つきの身体に、防御全振りの装甲。ムーの意図に気づき、クレスはげんなりとした顔で言った。
「君は時間稼ぎをしたそうだ。だったら、付き合わないよ」
ムーたちなりの作戦がある気配は感じるが、クレスからすれば興味もない。
クレスは足を蹴り、近場の見張り台まで一つ跳びに飛んでいく。
「自慢の戦艦が落ちるのを、ゴツい指くわえて見てるといいさ」
言い放ち、クレスが再び氷の砲台を作り出そうとした瞬間。
ムーの顔面の黒バイザーが、青白く光った。
そこに浮かび上がるのは、助けを求める人間の顔だった。
助けを求める顔と、クレスの目が合う。
クレスが微笑み、風を切る音とともに、その姿が消える。
次の瞬間、クレスの拳がムーの顔面を貫いていた。
黒いバイザーが砕け、装甲が紙のようにめくれ上がる。
衝撃波が遅れて広がり、ムーの頭部は細かな破片となって空中へ散った。
「よくわかった、いつまでも付き合おう……君が死にたくなるまで」
#主人公最強
#ハッピーエンド
海の紅月くらげさん
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