TellerNovel

テラーノベル

アプリでサクサク楽しめる

テラーノベル(Teller Novel)

タイトル、作家名、タグで検索

ストーリーを書く

川辺の宿屋

一覧ページ

「川辺の宿屋」のメインビジュアル

川辺の宿屋

2 - 第2話

♥

10

2022年10月06日

シェアするシェアする
報告する

宿の名は冥楼旅館という。

建物の北端から、南端まで見渡せないほどの大きさだ。

ふわりと霧に包まれていて、城のような見た目をしている。

皆がめぐるましく働く冥楼旅館は、亡くなった人々が休む場である。

亡くなった場所から三途の川へ来るのは相当な苦労が必要だ。

その疲れを癒やし、極楽へと送り出すのがこの旅館の役目である。


「逝ってらっしゃいませ、ナッカルタンさま!」

《元》新人・サーメルカークはにこやかに言う。

もうすっかり仕事が身に付いたらしい。

「あたし、頑張るわ、サーメルカークさん…」

この方は、彼氏に浮気され、自殺をしたと言う。

何も信じられない、と泣きながらサーメルカークに訴えたそうだ。

話を聞いてもらってから、極楽へ逝くのに後悔はなくなったという。


「あたし、彼氏のスマホ覗いちゃったの。」

そう話し始めたナッカルタンさまは目を真っ赤にしている。

どうしよう、お客さんのお悩みなんて聞いたことない!

そんなサーメルカークの気持ちは知らず、ナッカルタンは続ける。

「知らない女の、連絡先があったの…」

友達の関係のはずじゃない、と震える声で言った。

「内容は、「また会いたい」とか、「今アイツ居ないよ」とか」

誰か確認する前に《アイツ》が分かってしまった。

「あたしだ」

とうとう、涙をポロポロと溢し始めてしまった。

「ナッカルタンさま…っ」

対応の仕方が分からず、サーメルカークはおどおどする。

その女のSNSのアカウントも見つけたそうだ。

アップされた写真にちらほらと写り込んでいた男。

「あたしのッ彼氏だった…ッ」

拳を握りしめ、紅紫檀の机を睨む。

そして、その事を追求すると開き直り、あれこれ言ってきたそうな。

サーメルカークは慰め方が分からず、とにかく思ったことを言った。

「酷いです、あなた様の事を好いているとその方は仰っていたのに」

ゆっくりと顔を上げて、ナッカルタンさまはこちらを見つめてきた。

私はこれで合ってるのかな?

「私はっ、嘘つきは苦手でございますっ」


十数分の相談が終わり、二人ともほっとした顔で戻ってきた。

その表情を見て、女将は安心したが、心配にもなる。

何にもできなかったあの子が?

でも、まぁ良しとしようかな。

この作品はいかがでしたか?

10

コメント

0

👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!

チャット小説はテラーノベルアプリをインストール
テラーノベルのスクリーンショット
テラーノベル

電車の中でも寝る前のベッドの中でもサクサク快適に。
もっと読みたい!がどんどんみつかる。
「読んで」「書いて」毎日が楽しくなる小説アプリをダウンロードしよう。

Apple StoreGoogle Play Store
本棚

ホーム

本棚

検索

ストーリーを書く
本棚

通知

本棚

本棚