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意識が浮上していくのをぼんやりと感じながら、俺はゆっくり目を開けた。サラサラと、俺の髪を撫でながらローは本を読んでいた。
「俺、ローのベッドで寝てたのか……。ごめんロー」
「大丈夫だ。それよりも気分は?」
「気分?」
「精神的な意味だ」
「ああ。……うん。寝たら良くなった。ありがとう」
そう言って笑うと、ローも微かに笑った。
「そうか」
俺の頭を撫でたり、髪を手櫛で梳いたりする。
「俺の頭って撫でやすい形でもしてる? いろんな人に撫でられんだよね」
「……嫌か?」
「んーん? 撫でられんのは嫌いじゃねえよ、俺」
キスとかは苦手だけどな。と心の中で付け足す。
俺の言葉を聞いて安心したのか、ローの手つきが更に優しくなった。しばらくされるがままになっていたのだが、ふとローが手を止めた。俺がローの方を見上げると、ローは何かを言いたげな顔をしている。俺は首を傾げた。
「……お前は…」
ローが口を閉じてしまう。言っていいのだろうか。そんな表情や感情が俺でも容易に読み取れた。
「さっきはローが俺の話聞いてくれたんだから、今度は俺が聞くよ。話してみ?」
そう言うと、ローが一瞬だけ眉を下げる。
「……今はやめておく」
「そっかぁ。それじゃあまた今度だな」
俺から視線を逸らしたローに向かって、俺は詮索するようなことはしなかった。だってロー、そういうの多分嫌いだろ。
ローの膝にコテンと頭を預けると、再び頭を撫でてくれる。それがとても心地良くて、俺は小さく欠伸を漏らした。
「まだ眠いのか?」
「んー……」
「もう少し眠るといい」
「……ローは?」
「俺はまだやることがある」
「そか…でも今寝たら夜中起きそうだし、起きてる。夕飯作ってくるわ」
ぐっと伸びをして俺はキッチンの方へと歩いていく。
「あ、イッカクちゃんだ。今日の夕飯担当イッカクちゃん?」
「そうよ」
「俺手伝うよ」
「ありがとう」
イッカクちゃんの隣に立ち、一緒に料理を始める。包丁で野菜を切る音。鍋に具材を入れる音が響く。他愛のない話をしながら作業を進めていると、あっという間に出来上がった。
「俺、みんな呼んでくるよ」
「いや、私が呼んでくるから、ジェイデンはキャプテンを呼んできてくれる?」
「わかった」
俺は船長室に向かい、ローを呼ぶ。
「夕飯できたぞー」
「ん」
ローの返事を聞き、食堂の方まで連れだって歩く。食堂に入ると、既に全員が席についていた。俺とローが座ったところで、いただきますの声が揃う。
食事を終え、食器を片付けてから俺は寝室の方へと向かった。ベッドに潜り、目を閉じる。
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