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「花崎さん。僕、言い忘れてたことがあって……」
顔を上げると、クローゼットを開けたアリスが目の前に立っていた。
「―――!」
祐樹はその華奢な身体に抱き着いた。
このまま鬼が来て部屋に入ってきたら、アリスを突き放してクローゼットを閉める。
そうすれば一番初めに見つけられるのは、アリスだ。
もし鬼がアリスに反応しなければ、アリスはゲームの参加者じゃない。
自分が見つかって生き返ればいいだけだ。
尾山を自殺で殺したい。
でもそれ以上に、早く生き返りたい。
今、俺には、帰ってやらなければならないことがある―――。
「花崎さん、何を……」
反射的に離れようとするアリスの身体に、クローゼットに腰を掛けながら脚を回した。
ぐいと抱き寄せ羽交い絞めにする。
裕樹の身体はいつの間にか、大人に戻っていた。
強く押さえつけているからか、アリスの華奢な身体が軋む。
「―――くッ」
いつもは涼し気な顔をしているアリスの顔が苦痛に歪む。
―――うわ……。
その反応に身体の中心が熱くなる。
―――ダメだ、今は……。
抵抗する様子がないアリスの身体をさらに締め付ける。
「……ぅぐ……ッ」
―――そんないい声を出すなよ……。
さらに力を込める。
「……ぁあッ!」
―――興奮……してくるだろうが……!
鬼の足音が聞こえる。
どうやら2階の手前にある両親の寝室に入っていったらしい。
「あ……ァア………はぁッ………」
祐樹は苦痛に震えるアリスの耳に唇を寄せた。
「シ――。見つかっちゃうだろ……?」
アリスの紫色の瞳がこちらを睨む。
「殺されちゃうぞ?―――あの子たちみたいに……」
言いながら唇を滑らせ、アリスの首元まで舌を這わせると、その首筋に一気に噛みついた。
アリスの悲痛な叫び声が家中に響いた。
足音で尾山が潜んでいる聡子の寝室に入ろうとしていた鬼の軌道が変わったのが分かった。
こちらに歩いてくる。
―――今だ!
花崎はアリスを突き飛ばしてクローゼットの扉を閉めた。
ギーシャ ギーシャ ギーシャ ギーシャ
ブリキの歩く音が響く。
部屋に入ってきた。
ーーーーーーーーー。
「……………?」
何の反応もない。
祐樹はほんの少しクローゼットの扉を開けた。
アリスは突き飛ばされた体勢のまま、膝を立てて床に尻をついている。
その横にピエロが見える。
――無反応。
つまりアリスはゲームの参加者ではなかったということだ。
じゃあ、自分が今出ていって負ければ、
生き返るのは祐樹で、尾山は自殺。
―――ははは……。勝った。
胸の奥から笑いがこみ上げてくる。
試合に負けて勝負に勝つとは、まさにこのことだ。
祐樹は扉を開け放った。