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<凌太>
亮二の事を話すと瞳は俺を抱きしめてくれた。
「辛かったね」
確かにそうかもしれない。
だけど、俺は1番情けない方法で現実逃避をしていた。
そのツケをきっちりと払わないといけない。
宇座のことでボイスレコーダーを持ち歩く癖がついたと言って、松本ふみ子が現れた時に咄嗟にスイッチを入れたと言っていた音声をモバイルパソコンにコピーをした。
結局は俺自身に対するストーカーの証拠を集めることができなかった。
秘書から携帯を受け取りGPSを起動させて確認するとその場所は俺のよく知る場所の近くだった。
飯島に連絡をして松本ふみ子の実家の住所がわかるかと聞くと、多分必要になると思って調べておきましたと返事が返ってきた。
「俺が必要になると思って先回りしていたのか」
『こういう商売だからね、太客には迅速にって事で』
「報酬の振込先口座をあとで送ってくれ」
『これはサービスで、お客を紹介してもらえればいいです。特に不倫関係は強いんで』
「覚えておくよ」
『住所と地図を送っておきます』
そう言って通話を切ると、画像が送られてきた。
その画像を見て思わず「驚いたな」と呟いた。
高校の時も家を見にきていたんだろう。
瞳を見ると不思議そうな表情をしていたから画面を見せて「松本ふみ子の実家は俺の実家から近かった」と言うと画面をじっと見つめていた。
今から行くことを伝えると待っていていてくれるという。
嬉しかった。
そして
「私に見られるのが嫌ならやめるけど、一応私のスマホと交換しておく?」
電源を切るのは疑われそうだし、そのまま持っていけば俺が向かっていることに気づかれ逃げてしまうかもしれないと持っていたら瞳がスマホを渡してくれた。
「俺のスマホを隅々まで見てくれてかまわいよ」
「なんかそう言うと見ないと思ってる感じで、あやしい〜」
瞳が笑う姿を見て自分が怖い思いをしたのに俺を元気づけてくれることが愛おしく感じる。
「誰か来ても居留守で大丈夫、必要ならまた来るだろうから」
部屋を出る時に瞳は「気をつけて」と言った。
念のためにカーナビに飯島から聞いた住所を入力すると所要時間22分という音声が流れる。
ナビの通りに車を走らせるとナビが計算した時間よりも2分早く到着した。
二階建てで似たような建物が並んでいることを考えると建売なのかもしれない。
コインパーキングを見つけて駐車してから表札を確認していくとその中に“松本”と書かれた表札を見つけた。
関係をどう説明するか。
話ができなければここにきた意味がない。
つい先ほど瞳から、マークは動いてないと連絡があった。
インターフォンを押すと女性が応対してくれた。
声の感じから母親だろうか?
「どなたですか?」と、訝しげな声がきこえてきた。
何かのセールスだと思っているのかもしれない。
「ふみ子さんとは高校と大学が一緒だった甲斐と申します。ふみ子さんはご在宅でしょうか?」
「え?甲斐さん?ふみ子は出かけてますが?」
どう言うことだ?
母親が嘘をついてるのか?
「おかしいな・・・」
向こうからは俺の姿が見えているはずだから口元に手を持っていって考えているようなポーズをとってみる。
「先ほど一度帰ってきてからまた出て行ったんですよ。甲斐さんってもしかして太陽光パネルの?」
太陽光パネル?
どういうことだ?と考えていると松本ふみ子の母親が「ちょっと待ってください」と言ってから玄関の扉を開いた。
「パンフレットを持ってきてくれたんですか?」
「検討してくださってありがとうございます。紙ベースのものではなくて、こちらに入っておりますので説明をさせていただいもよろしいですか?」
と言って、モバイルパソコンを指を揃えてさし示した。
「今ってそういうものなのね、どうぞ」
こんなにスムーズに話が進むことに違和感があるが今はこの状況をうまく使っていくしかない。
「すみません、一本だけ電話をさせていただきます」
「はいどうぞ」
母親に軽く会釈しながら一旦玄関から出ると、瞳にマンションから出ないようにと電話をして母親のもとに戻った。
「以前にウチのものが伺っているんですか?」
母親の対応から気になって聞いてみると
「えーとなんとか島とかいう人が来たんですよ。助成金がでるからどうですかって。おとうさんに話をしたら今度来たらパンフレットをもらっておけって言われていたところにあなたが来たのよ」
「三島ですか?」
「あーそんな名前」
亮二が絡んでいるのか?
だとしたら、助けたのも裏があるのかもしれない。
松本ふみ子が家にいないとなると早く話をした方がいいと思い単刀直入に話をした。
「すみません、本当は太陽光のことで伺ったわけではありません。わたしはお宅のお嬢さんにストーカーされています」