テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
146
第4話 戻れない距離
深澤side
——気づいたら
隣にいないのが、
当たり前になりかけていた。
佐「おはよー!」
教室に響く明るい声
佐久間は今日も、変わらず笑っている
クラスメイトと楽しそうに話して、
冗談を言って、笑って。
その中心にいるのに——
(…遠い)
深澤は、自分の席からその様子をぼんやり眺めていた
前なら、隣にいたはずなのに。
A「深澤、今日のプリント見た?」
深「あー、見てない」
A「マジかよ」
友達に話しかけられて、適当に返す。
会話はできる。
笑うことだってできる。
でも、いつもどこか上の空で。
視線は、どうしてもあいつの方に向いてしまう。
—
昼休み
いつもなら隣に座っていたはずの席は、今日は空いたまま。
その代わり——
B「さくま、それマジで?笑」
佐「ほんとほんと!」
少し離れた場所で、楽しそうな声が聞こえる。
輪の中心で笑う佐久間。
その姿は、何も変わってないはずなのに。
(…なんであんな遠く感じんだよ)
自分で距離を縮めにいけばいいだけの話なのに、足が動かない。
あの日の空気が、まだ残ってる。
—
放課後
鞄を持って立ち上がる。
いつもなら、隣から声がかかるはずだった。
『ふっか、帰ろ!』
——でも今日は、ない。
(…当たり前か)
自分から声をかければいい。
そう思って、視線を向ける。
ちょうどその時、、、
C「さくま、今日さ!」
別のクラスメイトが声をかける
C「一緒に帰ろーぜ!」
佐「いいね!帰ろ帰ろ!」
迷いもなく、笑って答える佐久間。
そのやり取りを、少し離れた場所で見ていた。
深「……」
気づいたら、足が止まっていた。
声をかけるタイミングなんて、いくらでもあったはずなのに。
結局、何もできないまま。
—
校門を出る頃には、もう姿は見えなかった。
ひとりで歩く帰り道。
こんなに静かだったか、と思う。
深「…はぁ」
無意識にため息がこぼれる。
たった数週間前まで、
当たり前に隣にいたやつがいないだけで。
こんなに違うもんなのかよ。
—
次の日
佐「ふっかおはよ!」
突然、目の前に現れた笑顔。
深「…佐久間」
いつも通りの距離感で話しかけてくる
佐久間に、少しだけ戸惑う。
佐「今日さ、プリントやった?」
深「…ああ」
佐「見せてほしいな〜!」
机に身を乗り出してくる
まるで、何もなかったみたいに。
深「…お前さ」
思わず口が動く。
佐「ん?」
きょとんとした顔。
深「昨日——」
言いかけて、止まる。
“なんで俺と帰らなかったのか”
“なんで急に距離取ったのか”
そんなの、聞く資格があるのか分からなくて。
深「…なんでもねえ」
そう言うと、佐久間は一瞬だけ目を細めて。
佐「そっか!」
また、笑った。
—
放課後
佐「じゃあねー!」
クラスメイトに手を振りながら、教室を出ていく佐久間
その背中を、ただ見ていることしかできない。
(…違うだろ)
このままでいいわけがない。
そう思うのに。
足が、動かない。
—
あの公園。
気づけば、そこに来ていた。
ひとりで。
深「……」
ブランコの前に立つ。
あの日、聞いた声が蘇る。
『大丈夫。君ならできるよ』
『俺は、諦めない』
深「…嘘つけよ」
ぽつりと呟く。
あんな声、出せるくせに。
あんなに好きそうにしてたくせに。
なんで諦めてんだよ。
—
佐「…ふっか?」
後ろから聞こえた声に、振り返る。
そこにいたのは——
佐久間大介だった。
佐「…なんでここに」
驚いたような顔。
それは、こっちのセリフだ。
深「そっちこそ」
そう返すと、少しだけ気まずそうに目を逸らす
佐「…たまに来るんだよね、ここ」
小さな声。
あのときとは違う、弱い声。
深「……」
言葉が出てこない。
近くにいるのに、やっぱり遠い。
でも——
今、逃げたらダメな気がした。
深「さくま」
名前を呼ぶ。
その瞬間、びくっと肩が揺れる。
深「ちゃんと話せよ」
静かに言う。
深「このままなの、無理だから」
その言葉に、佐久間は何も答えない。
ただ、ぎゅっと拳を握りしめていた。
—
風が吹く。
沈黙が、痛いほど重い。
でも
今度は、目を逸らさなかった。
コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!