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初めに
皆様ほんっとにお待たせしました……お久しぶりです‼️誕生日の日くらいは書こうと思ったんですけど受験が忙しくなかなか投稿できませんでした……。今回は誕生日のお話です‼️今回は2人とも15歳の中学三年生です。
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俺は8時に起きると、もう既に弟である無一郎は起きていて、ちらり、と俺を見たあとすぐに小説に目を戻した。
「……おはよう」
俺が声を挨拶をするも、体が震えるだけで無視。
「……うるさい。もうちょっと黙れないの?」
やっと喋ったかと思えば、毒舌の数々。
俺は無一郎に嫌われていた。
なぜかは分からない。嫌われたのは、確か中学に上がってからな気がする。小学生まではすごく仲良しだった。
……いや、仲良しどころじゃない。むしろ兄弟とは思えないほどの距離感だった。
でも、それも束の間で。中学生に上がってから、俺の弟は少しずつ俺から離れていった。
まぁ、中学生だから、という事もあって、俺もなんとなく成長期なんだな。と把握してそこまで何も言わなかった。
でも、それが少しづつエスカレートして行った。俺が話しかけても無視されるか毒を吐かれるか、俺の料理も食べなくなった。反抗期だと思ったが、それにしてもやりすぎな気もした。
まあ、少し経てば治るだろ。と思っていたが、1年。2年経ってもそれが変わることはなく、いつの間にか受験生になってしまった。
そうして、夏休みに入った今に至る。
夏休みが折り返しになっている今、俺は勉強に力を入れていた。少し疲れたので、お茶を飲もうもしてリビングに入る。弟はいない。
きっと弟も勉強しているのだろう。何故か安心しながら、俺はキッチンからお茶を取りだしてこく、と飲んだ。
何気なく、俺は目に入る日付を見た。今日は8月7日。「あ、」と思った。明日が誕生日なのをすっかり忘れていた。いくら弟に嫌われているからとは言え、なにか贈り物はしたい。……そう言って去年は受け取ってくれなかったけれど。
今年こそは、と思って、俺は服を着替えて、一応弟に外に行くという報告をするために無一郎の部屋のドアを開ける。
「俺、出かけてくるから。昼メシは冷蔵庫のやつ明後日勝手に食べろ」
「……ねぇ、勝手に開けないでくれない?僕勉強してるんだけど。勝手に開けるとかほんとありえない」
冷たい視線。ぐさ、と俺の心に突き刺さる。さっきまで聞こえなかった蝉の声がやけに煩くて、俺はそのまま扉を閉じた。
ガチャリ、と玄関の扉を開けて、俺は1人歩く。今年の夏は酷く暑くて、汗が止まらなかった。そういえば、ニュースで38℃と言っていた気がする。
そういうことを考えながら、俺はどうしてあんなに嫌われてしまったのかを考える。それでも、全く思い当たる節はない。無一郎に前聞いても、「知らない」の一点張り。
はぁ、と深くため息を着くと、俺はいつの間にかイオンモールに着いていた。
店に入ると涼しい風が俺をでむかえてくれる。何かプレゼントをしようと言っても、無一郎の欲しいものなんてもう分からない。あいつは剣道部だから、木刀とかを買ってやろうか、と思ったけど、もう少しで引退だからそれはやめとこうと思った。
迷いながら商品を見ていると、なんだか見覚えのある人が見えた。
「あっ、有一郎くんっ!」
キラキラとした眩しい笑顔で近づいてくる正体は……
「……パン屋か」
炭治郎だった。こいつは家でパン屋をしていて、凄く良い奴。……それに、無一郎ととんでもなく仲がいい。
でも、俺もこいつを信用していて、1年前に無一郎に嫌われていることは話している。
「……無一郎くんとどう?」
困り眉をして俺を心配してくれた。ちょっと嬉しくて、俺は目をそらす。
「相変わらずだ。……でも、明日無一郎の誕生日なんだ。だからプレゼント買ってやりたくて」
「わぁっ!!素敵だねっ!!何を買うんだ?」
「……まだ決めてない。そもそも、まともに話してないから今あいつが好きなものなんて分からないし。昨年プレゼントあげた時もいらないって断られてそのまま……」
「……そうなんだ。あ、でも俺、無一郎くんのほしいもの知ってるよ!!」
そう言われた瞬間、俺は目を大きく開ける。
「……ほんとうかっ!? 」
「うんうん。それはね……」
急にスマホを取り出し、なにか検索 している。俺はじっと待っていると、ある画像が見せられる。
「これこれ!無一郎くん、シマエナガのもふもふしてるぬいぐるみが欲しいみたい。」
その画像を見せられた俺は、肩をふるわせる。
「…………これ」
そう。これは、幼稚園の頃、家族4人でお出かけした時に、両親が俺と無一郎に買ってくれたぬいぐるみと全く同じだった。でも、1年もしないうちに無一郎は無くしていて泣き叫んでいた気がする。
なんで、どうして。そんな言葉が繰り返す。
「……有一郎くん?」
画像を見て何も言わない俺を心配したのか、俺の名前を呼ばれてやっとハッ、とする。
「……いや、悪い。……これ、昔両親が俺と無一郎に買ってくれた物と全く一緒だったから」
「えっ、そうなんだ」
炭治郎は、なにか考えるポーズをする。なんなんだこいつは……と呆れていると、ピンと来たのか、あっ!と声を出す。
「もしかして無一郎くん、本当は嫌いじゃないんじゃないの?」
「…………はぁ?そんな訳ないだろ。たとえ好きだったとして、約2年半も嫌いなフリをする意味もわからないしできないだろ」
「まぁ……。そうだけどさ。でも、嫌いなのにこのぬいぐるみが欲しいのは、きっと有一郎くんになにか助けを求めてるんじゃないかな」
「…………助け?」
「それがなんなのか俺には分からないけど……。」
助け。無一郎は俺に助けて欲しい……?なんで。何を?
「そのぬいぐるみ、ここに売ってるか?」
「うーん……このぬいぐるみ、もう販売中止になってるから、ここの中古屋とかにあるかないか……」
「わかった。行ってくる。悪いなパン屋」
「……ふふ、大丈夫だよ。またいつでも相談しに来てね!」
*
俺は小走りで3階の中古屋へ行って、その「シマエナガ」のぬいぐるみを探す。
「……あった!!」
まさか本当にあるとは。そのぬいぐるみを手に取る。中古屋のものなのに、新品って言うぐらい白くてふわふわで、可愛らしかった。きっと前の持ち主が大切にしていたんだろう。値段もそう高くはなくて、俺はすぐにそれを買った。しかも、2個。
実は俺も無一郎がなくした半年後に無くしてしまったのだ。ちゃんと管理してたのにどっかに行ってしまい、無一郎ほどでは無いがショックだった。
そのままついでにケーキと晩飯の食材を買って家に帰る。
*
そうしてついに誕生日当日の朝。俺は今渡そうと思って、緊張しながら無一郎の部屋をノックする。
「…………なに。来ないで」
「渡したいものがあるんだ」
「どうせまたくだらない誕生日でしょ。要らないって言ってるじゃん」
俺はお構い無しに無一郎の部屋に入り込むと、無一郎は今起きたばかりなのかベッドにすわって眠そうに目をこすっている。
「勝手に入るとか……。」
そのまま俺は、可愛く梱包されたプレゼント箱を渡す。
「…………。」
無一郎は俺を一瞬見たあと、プレゼントを見つめて、リボンを解く。無一郎が箱を開けると、昨日買った「シマエナガ」のぬいぐるみが。
無一郎は息を飲んだのか、びっくりしているのか、そのまま固まった。
「……パン屋からほしいもの聞いたんだ。そしたら、これが欲しそうだったって」
「これ、むかし無くしたやつだよな。……無一郎」
無一郎は無言で、シマエナガのぬいぐるみを持って撫でる。
「…………なぁ、どうして俺のことが嫌いなのに昔俺とお前が持ってたものを欲しがってたんだよ」
「………………っ」
無一郎はぼろぼろ、と涙を流してしまう。俺はギョッ、として慌てる。
「はっ……!?お、おい、どうしたんだよ、なんか悪いことでも─────」
「兄さんって優しいよね。」
「…………は?」
無一郎はぬいぐるみを撫でながらそのまま話す。
「……僕はこんなに兄さんのこと拒否ってるのに、1度も僕を見捨てなかったし気も使ってくれた。」
「……僕ね。兄さんのこと、恋愛として好きだったんだ。」
「それがわかったのがちょうど中学生に上がる時だった。兄さんん見る度何故か胸が苦しくて幸せだったんだ。」
「……でも、弟が兄に恋するっておかしいでしょ。だから、どうすればいいのか分からなかった。兄さんと今まで通り話せば、もう歯止めが効かなくなる気がしてずっと避けてた。」
「……どう接すればいいのか忘れたんだ」
俺はただ無一郎の話を聞いていた。
「お前は、俺とどうしたいんだ」
「え??」
「……どうしたいか聞いてる。」
「そりゃもちろん、付き合いたいよ。」
「…………俺も」
「俺もお前のことが好きだった」
その時、無一郎は有一郎をみあげる。
「だから、嫌われたのが苦しかった。でもそうじゃないってわかったから」
「…………にいさん」
「……ふふ、お互い同じだったのにずっとすれ違ってたんだね」
「……そうだな。やっぱ双子だから」
くすくす、と俺は無一郎と笑った。無一郎の笑顔なんて全然見ていなかった気がして、なんだか嬉しくなった。
「兄さん。誕生日おめでとう」
「……お前も。おめでとう」
*
それから3年が経って、俺たちは今日で18歳になった。無一郎と俺はこのぬいぐるみを大切して、あのことがあってからずっと無くしていない。
今は実家を出て二人でアパートを借りて、将棋のプロになるためにお互い励んでいる。
だって……ほら。今も隣で無一郎が微笑んで俺のぬいぐるみと無一郎のぬいぐるみの手を繋ぎ合わせているから。
コメント
3件
お久しぶりです…!まな板様の作品いつも最高ですね!受験勉強お疲れ様です!
毎日楽しみにしてましたーーー!!!! 最高!!!!!!!
うわぁあ良すぎーーー!!!