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【注意事項】
①こちらはirxsのnmmn作品です nmmnを理解している方のみお読みください
②この作品には、以下の要素が含まれますので自衛等お願いします
・青桃
・パロディ
③他SNSなど、齋-nari-の作品を公に出すことは絶対にしないでください
④コメント欄ではご本人様の名前を出さず、伏字の使用をお願いいたします
バーテンダーの青さんとクラ者の桃さんのお話です。
青.side
いつもは見慣れない、大勢の人が小さなステージに釘付けになる景色。
ここは、大きなショッピングモールの一角にあるこぢんまりしたバーだ。
いつもは洒落たジャズがかかっているそのアンティークな空間には、見慣れない管楽器が照明に反射してきらきらと輝いている。
今日は珍しく、吹奏楽の演奏が予定されている。普段はお客様が自由にジャズを演奏していることが多いが、前々から大々的に予告されていた演奏会だ。
いつも訪れてくれるお客様の何倍もの人が小さなバーに押し寄せている。
「なぁ、この人達そんな人気なん?」
「まぁ…あんなポスター貼られとったくらいやしそうなんちゃう?知らんけど。」
その管楽器を横目に隣のこのバーで特に人気な白髪の店員に聞くと、グラスを拭きながらそう答えられた。
どうやら彼の可愛い見た目に反して男らしい低い声がギャップ萌えなのが理由らしい。
突然、店内に鐘の音が鳴り響く。
それは17時を知らせる時計の音で、鐘の余韻が消えたその瞬間に演奏が始まった。
手拍子を促す演奏者に乗じて手を叩き始めるお客さんたち。
まるでジャズみたいな曲で、どこか安心感があるように感じる。
「…あぁ、この曲有名なやつやなぁ」
懐かしそうに初兎が呟く。俺も少し聞き覚えがあるこの曲は、ディスコ・キッドという名だった気がする。
とはいってもこの吹奏楽グループはとても少数で、編成はというと
フルート、クラリネット、アルトサックスとソプラノサックス、ホルンにユーフォ、チューバ。
それからピアノの8人編成だ。
センターを飾るのはもちろんクラリネット。
一番の見せ場であるクラリネットソロがあるからだろう。
そんな呑気に彼らのことを見ているが、あくまで俺はバーテンダー。見てる場合では無い。
こう言っている間にも、カクテルは作るし客の話に付き合わなければならないし…意外と忙しい。
しばらくすると、ソロの時間が来たようだ。
この曲は、意外と人によってソロの演奏方法が変わってくる。がなるように力を込める人もいれば、流れるように優雅に指を滑らせる人もいる。
「…あの人ジャズ奏者してたんかな」
「めっちゃサックスの吹き方やんな♪後で話しかけてみよかな…まろちゃんもどう? 」
「遠慮しとくわ」
「ちぇ、釣れへんなぁ」
その洗練された、でもどこか力強い音色とホストのような見た目に釘付けになっている間に演奏は終わったらしい。
俺は業務を抜けて演奏者達を裏へと通す。
演奏どうだった、なんて詰め寄ってくる彼らに素敵だったと返しながら案内したが、俺が見ていたあのクラリネット奏者とは一度も目が合わなかった。
クラリネットは、上手い人と下手な人とで奏でられる音が大きく変わる。
下手な人はどこか詰まったような音がして、楽器が響いていない。そのせいで音量もかなり小さくなる。それとは逆に上手い人は、ベルから広がる音が違う。全体的な音量も上がるし、喉が開くことで圧も強くなる。
先程のクラリネット奏者は後者だった。クラは主旋律の演奏が多いこともあり、注目を浴びる。だがこの演奏はそれとは違った。大きく鳴り響く音は、「スポットライトを全て自分に向けろ」と言わんばかりの自信を孕んでいた。
と考えながらも、もう2度と話すことはないと心に留めていたのに。
「いふさん、だっけ」
「…そうですが。」
「え怒ってる?」
「別に。」
なんでこの人が客になっているのか。
楽屋に行く時も一番距離があったし、気に入らないと言うように目も合わせなかった。
「丁度いいカクテル頂戴」
「…かしこまりました」
コイツがタメ口なのもすぐ帰らなかったのもよく分からないが、もうただの客なので淡々と業務をこなす。
俺がカクテルを作る一つひとつの動作を全て目で追ってくる派手髪男を横目に見ながら、グラスに完成品を注いだ。
「……おれ、ないこって名前。これ名刺ね〜」
しばらくすると、完全に酔いが回った派手髪は覚束無い足取りで俺に名刺を投げて帰って行った。いやアイツ帰れるのかよ。
「まーろちゃんっ♪」
「あ、しょにだお疲れ」
「おん♪ところであのクラ奏者さんとは仲良くなったん?」
あのタイミングで休憩に入っていた初兎は、俺の事を盗み見してたみたいだ。
別に仲良くなんてなっていないし、言葉を交わしたのはほんの十数秒程度だ。何も思っているのかは知らないが…。
「別に何も。ただの客やからな」
「でもさっき名刺貰っとったやん」
「…このアホ兎が」
「失礼な」
揶揄いながらも店の片付けを進める。気づけばもう閉店時間だった。今日は演奏会もあった為、しっかりと楽屋に使った部屋も掃除しようとドアノブを引いた途端、見覚えのある物が目に入った。
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桃.side
聞き飽きた着信音が、朝から耳を突き抜ける。
まだ寝ていたいのに。また上司かと眉を寄せながら、電話番号も見ずに画面をタップした。
『…忘れ物してますけど』
「はい???」
『だから、昨日の演奏会での忘れ物。自分の楽器忘れるとか神経どうなってるんですか』
「…嘘でしょ俺」
酔って気持ち良くなってたせいですっかり忘れてた。
繋がれた電話をそのままに電源をブチッと切って、鍵を引っ掴んで家を飛び出した。
数時間前も聞いた、扉に付いた鈴の音。
…なんて優雅に考えてる暇もなく駆け込むと、バーカウンターで酒を流し込む青髪が目に入った。
扉が空いたことで風が入り込み彼の髪を梳くように通り抜け、喉から酒を飲む音が聞こえる。
そのままゆっくりと風の吹く方向を向いた彼と目が合った。
その動作がなぜだかとても幻想的に見えて、思わず声が出そうになる。
「……お待ちしておりました」
「口だけじゃないですか」
カウンター前の椅子に体を預け、グラスを揺らしながらこちらを見るその姿からは、昨日の夜に見た清楚系バーテンダーのような面影は一切感じられなかった。
その後店員らしくカウンターの裏へ回り、良く言えば保管してもらっていたクラケースを取り出してテーブルに置いた彼は、そのまま頬杖をついてこちらを見上げる。
「確か…ないくんだっけ」
「!」
「何か一杯、飲んでいきません?♪」
先程自分が飲んでいたグラスを引き寄せ、見せびらかすように縁を叩いて見せた。
本来、このバーは17時に開店するらしい。
それなのに現在時刻はショッピングモールが開店してから30分後。勿論、入口には「Close」の札が掛かっている。
俺だけが特別な客。よく考えてみれば、不可解な点がある。
そもそも忘れ物の連絡は、昨日の夜の内にすればよかったのに今日の朝電話をかけた。
そして、今ここにいるのは、いふさんと俺だけ。
まるで、それを図ったかのよう。
だから、俺は聞いた。
「お兄さん、俺のこと好きなん?」
彼は、うん、と目を瞑ったまま、
首を振った
「ないくんの、サックスみたいなクラの音色が」
「…バレてたか」
実は数年前までは、サックス奏者として多くの場所でジャズを演奏していた。
それに気づくということは、いふさんも関係者なのだろう。
つまり、俺があんなにソロをアピールしたくて踏み込んだのもバレているということだ。恥ずかし。
「もう一度、あのソロ聞かせてくださいよ。」
「……喜んで。」
ケースを開いて、リードを咥える。
そのままマウスピースとバレルを合わせ、リガチャーを嵌めてからリードを差し込んだ。
その様子をじっと眺めるいふくんを横目に、上管と下管を嵌め込み金属部分を合わせる。
それからベルを取り付け、マウスピースで数回音を鳴らす。
最後に上管に取り付ければ作業は終わり。
「相変わらず準備が長いですねぇ」
「そのせいで苦労が多くてね」
正面の6つの穴と、裏の1つの穴、それから左小指でレバーを押せば、B♭音が鳴る。
それを見てか、いふさんは目を見開いた。
「はは、俺正規の運指じゃないんだよね」
「…もうひとつの方法のやつか、珍しい」
俺はそのまま、ソロを吹き始めた。
途中のhiE♭も難なく熟す。
いふさんは心地よさそうに目を閉じ、残っていたグラスの酒をあおっていた。
「……ふぅ」
一通り吹き終え、左手でクラを持ったままどかりと椅子に座った。
「流石、慣れてるだけある」
「それはどーも。」
演奏前に出されていたカクテルと同じものが再び目の前に差し出された。
さっきと一つも変わらない色合い。どれだけ手練かが目に見えた。
「…私、このバーの中でも人気な方なんですよ」
「はぁ、」
「だから、名刺も誰にも渡したことがない。変な関係と思われるのが面倒で。」
昨日と同じように、テーブルに伏せながらぼうっと話を聞いていた。
「だから、これ」
「……え」
「次会うときは、飲み屋にでも」
「俺はいふさんのカクテルがいいけどなぁ」
「…ははっ」
いふさんはひらひらと手を振り、クラケースを掲げた。
それを右手に受け取り、左手で差し出された名刺を受け取る。
受け取った「それ」は、いふさんの「初めて」の証だった。
Fin.
コメント
4件
ディスコキッドって題名見てびびった嬉しい最高
サブからごめんなさい! 私吹部で去年の定期演奏会でディスコキッド演奏しました.ᐟ.ᐟ Cl吹いてます!楽しかったのでこれを見てまた吹きたくなりました、、
なりちゃ!宣伝ありがと!! 作品やっぱ最高すぎ👍️ めちゃ後編気になる✨️✨️ 楽しみにしとくね~!!